首にできたしこりや腫れは病気?考えられる疾患と治療法を解説

首にできたしこりは、様々な疾患が考えられます。

そして痛みを伴わないしこりこそが、放置すると危険なしこりです。痛みがなければ、問題ないと考える人も多いですが、実際にはさまざまな病気が潜んでいる可能性があります。

特に、急激にしこりが大きくなった、痛みがない、押しても動きがない場合は、悪性腫瘍の可能性も否定できません。

そのため、首にしこりや違和感がある場合は、自己判断をせずに、早めに専門医に相談することが重要です。

本記事では、首にできるしこりの原因や症状、そして正しい治療法について詳しく解説します。

首のしこりについて

首にできるしこりとは、様々な原因によって首に塊ができることです。原因となる病気によっては、一つだけの場合や複数できることもあります。大きさもバラバラで、1cmにも満たない小さいものから10cmほどに肥大する大きなしこりまであります。

しこりは、耳の下やあごの下、首の前側、横側、後ろ側、鎖骨の上など、首のあらゆる部位に発生します。そして疾患の種類によっては、痛みや発熱、色の変色などが見受けられます。

首のしこりで考えられる疾患

首にできるしこりには、様々な疾患が考えられます。ここでは、首のしこりで多い代表的な病気について解説します。

  • ・リンパ節炎
  • ・粉瘤(アテローム)
  • ・唾液腺腫瘍
  • ・甲状腺腫瘍

 

特に首のしこりで注意が必要なのは、痛みを伴わないしこりです。
痛みがないと放置されがちですが、痛みがないしこりこそ、早期の治療が重要になります。

痛みを伴う 痛みを感じない
リンパ節炎 粉瘤
唾液腺腫瘍 甲状腺腫瘍

発生しやすい場所

疾患名 発生しやすい場所
リンパ節炎 首筋
粉瘤 首全体(全身)
唾液腺腫瘍 耳の周囲、顎の下
甲状腺腫瘍 のどぼとけ下

痛みを伴う疾患

首のしこりで、痛みが発生しやすい疾患について紹介します。

リンパ節炎

リンパ節炎とは、リンパ節が炎症を起こして、しこりのように腫れた状態を指します。

リンパ節とは、全身にある器官で細菌などから守る働きをしており、特に首や脇の下、脚の付け根で腫れやすいです。1cm未満のしこりは良性であることが多く、押さえると痛みを感じることが一般的です。しかし、1cm以上になると感染が広がっている場合があり、強い痛みを伴うためリンパ節炎は基本的に痛みを伴う良性の腫瘍と言えます。

つまり、しこりが2cm以上になっても、痛みがない場合は悪性の可能性があるため、早めに精密な検査が必要です。
違和感を感じたら放置せず医療機関に相談しましょう。

痛みがない疾患

ここでは、比較的痛みを伴わない疾患について紹介します。特に、痛みがない疾患に関しては、早期に治療が必要なことが多く注意しましょう。

粉瘤(アテローム)

粉瘤は、首や背中、顔にできやすいしこりですが、全身のどこにでもできる疾患です。皮膚に袋のような膨らみができ、その中に老廃物などが溜まっています。粉瘤は、自然に放置しても消えることはほとんどありません。粉瘤の大きな特徴は、中央に黒い点があることです。

この黒い点のように見えるのは、毛穴の皮脂が酸化したことによるものです。ほとんどの場合、良性の腫瘍であり、痛みがありません。

しかし、悪化して細菌感染を起こすことがあり、しこり部分が赤く腫れて痛みを伴うことがあります。粉瘤は、自然に小さくなることはなく、悪化や悪性への変異も懸念される疾患です。

また、しこりが大きくなった場合、傷跡が残りやすくなるので、早めに治療を行うようにしましょう。

唾液腺腫瘍

唾液腺腫瘍とは、唾液腺(唾液を作る組織)にできるしこりのことです。唾液腺には、耳下腺、顎下腺、舌下腺の4つがあります。

このしこりは、8割程度は良性であり、耳の周囲や顎(アゴ)の下に発症します。

主な症状は、基本的には痛みがなく、徐々に大きくなることです。しかし、急激に大きくなった場合や、痛みや顔に麻痺が出た場合は、悪性腫瘍の可能性があります。

また、良性であった場合でも再発しやすく、放置するとがんになることもあるため、完全摘出が推奨されている疾患です。

甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍は、首ののどぼとけ下部分にできるしこりで、大きくなるまで自覚症状がほとんどありません。そして初期の段階では、甲状腺機能に異常もなく、気付きにくい疾患です。

そのため、健康診断などの超音波検査で偶然発見されるか、触ってわかるほど大きくなった段階でようやく気付く人がほとんどです。

また、痛みや体調不良など自覚症状が少ないため、放置されてしまうケースが多いです。このしこりは、9割程度が良性であるため、心配しすぎる必要はありません。

しかし、悪性腫瘍の可能性も0ではないので、早めに病院で検査することをおすすめします。しこりが大きくなると、腫れや違和感を感じることがあります。

しこりの原因

しこりの原因は、疾患によって様々ですが、明確な原因が判明していないことがほとんどです。
ここでは、上記で紹介した4つの疾患の判明している原因と推測について解説します。

疾患名 原因
リンパ節炎 病原体の感染
粉瘤(アテローム) 不明(体質の可能性あり)
唾液腺腫瘍 不明(ウィルス感染・放射線被ばくの可能性あり)
甲状腺腫瘍 不明(遺伝の可能性あり)

リンパ節炎の原因は、病原体による感染です。病原体が体内に侵入すると血液を通じて、首などにあるリンパ節で炎症が起こります。次に、粉瘤の発生原因はほとんど分かっていません。皮脂の分泌量が多い男性の方ができやすく、体質によるとも言われていますが、はっきりとした発生原因は不明です。

唾液腺腫瘍は、ウイルス感染や放射線被ばくが引き起こしている可能性があると言われています。最後に、甲状腺腫瘍は男性より女性が多い傾向があるため、女性ホルモンや生理による作用が何らかの要因になっていると示唆されています。

いずれの病気も、明確な原因が判明していない場合が多いため、未然に防ぐことは難しいでしょう。

首のしこりや腫れには何科を受診する?

首のしこりや腫れを感じた場合、どの科を受診すべきかについて説明します。下記を参考に、症状や希望する治療に合わせて選択しましょう。

疾患名 診察科
リンパ節炎 耳鼻咽喉科
粉瘤(アテローム) 内科、形成外科、皮膚科
唾液腺腫瘍 耳鼻咽喉科
甲状腺腫瘍 耳鼻咽喉科、内分泌科

首にできる病気の治療は、一般的に耳鼻咽喉科の領域になります。そのため、首にしこりを見つけた場合、まず耳鼻咽喉科を受診するといいでしょう。しかし、病気の原因によっては、他の専門科を受診する方がよいケースもあります。

例えば、リンパ節炎や唾液腺腫瘍、甲状腺腫瘍は、耳鼻咽喉科を受診する方がいいですが、粉瘤の場合は形成外科や皮膚科が専門です。特に傷跡をきれいに治したい場合は、形成外科を検討するといいでしょう。また、甲状腺腫瘍の専門としては、内分泌科が最も適しており、精密な検査が必要になった場合、専門に検査が行える科に変更することで、専門的な治療を受けることが可能です。

首のしこりや腫れは多くの場合、早期発見と適切な治療が重要です。首に違和感を感じたら、迷わずにいずれかの診察科を受診しましょう。

治療法について

首のしこりには、一般的に下記の3つの治療法があります。

  • ・手術
  • ・くりぬき法
  • ・抗生物質などの服用

ここでは、それぞれの治療について解説します。

疾患名 治療方法
リンパ節炎 抗生物質等の服用
粉瘤(アテローム) 切開法、くり抜き法(手術)
唾液腺腫瘍 手術による摘出
甲状腺腫瘍 手術による摘出

手術

粉瘤と唾液腺腫瘍、甲状腺腫瘍の治療は、手術を行うことが一般的です。粉瘤はしこり部分が自然に小さくならないので、切開法による手術で取り除きます。大きさによっても異なりますが、多くの場合、日帰りによる手術ができます。また手術時間も短く、術後の社会復帰も早くできるでしょう。

唾液腺腫瘍は良性、悪性に関わらず、薬で治療はできません。そのため、全身麻酔による手術で摘出する必要があります。特に、悪性腫瘍が疑われる場合は、早急に手術が行われます。甲状腺腫瘍は良性であれば経過観察することが多いです。しかし、見た目的に気になる場合や痛みが出た場合、悪性が疑われる時は、手術を行って治療することが多いです。

くりぬき法

顔や首、腕など傷が目立ちやすいところにできた粉瘤を摘出する場合や、小さめの粉瘤を摘出する場合は、切開法ではなく「くり抜き法」を選択します。くりぬき法では、しこりの中心部分に小さな穴をあけ、溜まった中身を押し出して取り除く方法です。

傷跡は小さな穴だけになるので、縫合をしないで自然にふさがるのを待つため抜糸が不要です。くりぬき法は、傷が目立ちにくく、体への負担が少ない治療になりますが、通常の手術に比べて再発の確率が高いです。また、粉瘤の大きさや炎症を起こしている時は、くりぬき法による治療が難しい場合もあります。

抗生物質などの服用

抗生物質の服用による治療は、リンパ節炎が疑われるときに採用されます。リンパが腫れてしこりのようになっている場合、抗生物質などの薬で様子を見ることが多いです。一般的にリンパ節炎は、病原体の感染による一時的なものなので、栄養バランスの整った食事や休息で2〜3日でよくなるでしょう。

もし、薬を服用しても回復しない、または悪化してくる場合は、他の疾患も疑われるので医師に相談してください。

まとめ

 

首にできたしこりは、放置せずに早めの診察が必要です。考えられる疾患には、リンパ節炎、粉瘤、唾液腺腫瘍、甲状腺腫瘍などがあります。

病気の種類によって診察する科や治療法が異なります。基本的に首の疾患は耳鼻咽喉科が専門分野になりますが、粉瘤の場合は形成外科に相談する方がよいでしょう。

当院は、皮膚のできものと粉瘤に精通した形成外科クリニックです。

特に傷跡を残さず、綺麗な仕上がりが期待できるので、粉瘤が疑われる場合は、ぜひ当院にご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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