粉瘤は悪性腫瘍に変異する?悪性のリスクと適切な治療方法を解説

はじめに

基本的に粉瘤は良性腫瘍ですが、悪性に変異するケースもあります。
しかし粉瘤が悪性になった場合、激しい痛みや破裂の恐れなど様々なリスクを伴うため、注意が必要です。
適切な治療を行えば比較的簡単な手術で済む場合が多く、粉瘤に気づいた時には早めの治療をおすすめします。
本記事では粉瘤の悪性変異について解説するとともに、粉瘤の手術や流れについて紹介します。

粉瘤は悪性に変化する可能性がある

粉瘤は良性腫瘍の可能性が高い疾患ですが、ごく稀に悪性へと変化する恐れがあります。悪性に変異した腫瘍とは、「ガン」のことです。はっきりとした原因は判明していませんが、長期間の放置や炎症を繰り返すことで悪性化すると言われています。粉瘤が悪性化した場合は、有棘細胞がんであることが多く、稀に基底細胞がんを発生しているケースもあります。有棘細胞がんは、腫瘍部分が赤っぽい色をしており出血しやすく、悪臭を放つこともあります。一方基底細胞がんは、黒っぽくほくろのような腫瘍です。病状が進行すると、潰瘍化する危険性もあるため注意しましょう。粉瘤は放置しても自然に治癒しないと言われており、早めの治療が重要です。

粉瘤が悪性に変化した場合のリスク

粉瘤が悪性化すると下記のようなリスクがあります。
● 潰瘍化する恐れがある
● 激しい痛みを伴うケースがある
● 腫瘍が急速に肥大化し、破裂の危険性がある

潰瘍化する恐れがある

粉瘤が悪性に変化すると、皮膚が炎症を起こし潰瘍化する恐れがあります。潰瘍化とは皮膚の一部が炎症を起こし、皮下組織が露出しえぐれたような状態になることです。潰瘍化すると、激しい痛みや出血を伴うことがあります。他にも潰瘍化により感染リスクが高まり、さらに悪化する恐れもあるため注意が必要です。粉瘤は悪性化した時だけでなく、良性腫瘍の場合でも潰瘍化することもあるため、粉瘤の放置には気を付けるようにしましょう。粉瘤に気付いた際は、早めに専門医に相談し、適切な治療を行うことが大切です。

激しい痛みを伴うケースがある

粉瘤が悪性化すると炎症や化膿する恐れが高まり、激しい痛みに襲われることがあります。粉瘤は、通常、粉瘤は痛みを伴わないことが多いとされていますが、悪性化や長期間の放置によって痛みが強く現れることもあるため、注意が必要です。炎症が起きると、患部は赤く腫れあがったり、触れたりしただけで痛みを感じることがあります。粉瘤に痛みが出現すると炎症している可能性が高く、迅速なケアが必要です。しかし粉瘤の切除は、炎症が収まってから行われることが一般的で、完治までに時間がかかってしまいます。痛みや炎症が出ている場合は、粉瘤が悪化している恐れもあるため早めに診察を受けることが重要です。

腫瘍が急速に肥大化し、破裂の危険性がある

粉瘤は時間の経過とともにゆっくり大きくなりますが、悪性に変異した場合急速に肥大化することがあります。肥大化した腫瘍は、破裂の危険性が高く注意が必要です。もし破裂してしまった場合、炎症や感染を引き起こす可能性があります。他にも破裂した際に膿が溜まり、悪臭を放つケースも多数報告されています。粉瘤は悪性になると破裂の恐れだけでなく、発熱や倦怠感など体全体に様々な症状が現れるため、早めのケアが肝心です。

粉瘤は再発率が高く適切な処置が必要

粉瘤は適切な処置を行わなければ、再発の危険性が高い疾患です。手術を行った場合でも、腫瘍の袋が残ったままの状態になり、再び粉瘤ができてしまうことも少なくありません。粉瘤の手術は奥が深く、病院によって治療内容や手術内容が異なるため、病院選びは慎重に行いましょう。また粉瘤の治療には手術を伴うケースが多く、傷跡がどうしても残ってしまいます。そのため治療には、粉瘤を専門に扱う病院での治療をおすすめします。

粉瘤は日帰り手術が可能!2つの治療方法

粉瘤の治療には、2種類の手術法があります。
● くりぬき法
● 切開法
それぞれの特徴とともに、手術内容を紹介します。

くりぬき法

くりぬき法は、内部に蓄積した老廃物を押し出し、残った組織を引き抜いて取り除く手法です。手術時間は5分から20分と短く、体への負担も少ない手術方法と言えます。皮膚に穴を空ける際は、特殊な器具を使用しています。そのため小さな穴から老廃物を摘出が可能になり、傷が小さく、術後の回復が早いことが特徴です。しかし切開法と比べ、組織が残ってしまうリスクがあり再発のリスクも高まります。再発を繰り返している方や大きな腫瘍の場合、くりぬき法を採用しないケースが多いです。

切開法

切開法は、皮膚を切り開き、粉瘤の部分を完全に切り取る手法です。くり抜き法では摘出できない大きな腫瘍や炎症を繰り返した粉瘤には、切開法を採用するケースが多くあります。切開法では、腫瘍部分を完全に摘出できるため、再発の可能性が低いことが特徴です。しかし皮膚を切開するため、くりぬき法と比べると、傷跡が大きく残るリスクがあります。

診察から手術・術後の流れ

ここでは、粉瘤の手術を受ける時の流れについて紹介します。手術と聞くと不安に思う方も多いですが、早めのケアが体の負担軽減に繋がるでしょう。

診察で治療法を決定

まずは実際に診察を行い、疾患を確認します。腫瘍が粉瘤であると診断されれば、患者と相談した上で適切な治療方法について決めます。そして治療内容や手術のリスクについて説明を受けますが、心配なことがあれば伝えておくようにしましょう。安心して治療を受けるためにも、事前に不安を解消し、早めに粉瘤治療を始めることをおすすめします。

手術で根本的な治療

基本的には日帰りで手術を行い、粉瘤を根本的に摘出します。しかし粉瘤の大きさや状態によっては日帰りでの手術が不可能なケースもあるため、事前に確認しておきましょう。手術には局所麻酔を使用し、痛みや恐怖を最小限に抑えられているため、初めて手術を受ける方でも安心できます。摘出後は傷跡が残りにくいように、切開部分を丁寧にデザインしていきます。縫合後、しっかり止血が確認できれば、手術は完了です。

術後は経過観察

手術が終われば患部をガーゼで保護をし、帰宅します。手術後は経過観察を行い、数日間は毎日ガーゼの交換が必要です。また手術後は感染の可能性があるため、抜糸までは入浴ができません。傷跡は2~3週間程度で硬くなり、1ヶ月程度経てば傷跡は目立たなくなっていきます。しかし体質によっては、傷跡がケロイドになることもあり、不安な方は主治医に相談するようにしましょう。

まとめ

粉瘤は良性腫瘍である場合が多いですが、ごく稀に悪性へと変化する疾患です。悪性に変異すれば、激しい痛みや化膿、潰瘍する恐れがあるため、注意しましょう。そして粉瘤は自然治癒しないため、適切な治療を行う必要があります。初期の段階であれば日帰りによる処置が可能となるため、粉瘤に気づいた際は早めの受診をおすすめします。そして摘出手術をした際、細胞が残ってしまうと再発の危険性が高い疾患です。良性腫瘍・悪性腫瘍問わず、粉瘤の治療には、専門医である当院にお任せください。専門医が丁寧に診断し、皮膚腫瘍(良性・悪性)に対して適切な治療をご提供します。

良性のイボ・腫瘍・粉瘤でも放置せず早めの対応で健康を維持しましょう。さらに、皮膚の健康は全身の健康に直結しています。悪性腫瘍の可能性がある場合は特に注意が必要です。
当院では最新の医療技術を駆使し、悪性かどうかの判断を迅速に行います。また、患者様の負担を最小限に抑えた治療方法を提案いたします。疑わしい皮膚の変化が見られたら、自己判断せずに専門医の診断を受けることが重要です。ぜひご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。