化膿性汗腺炎の症状と原因を解説!陰部にできた場合の治療法も紹介
はじめに
陰部にできたできものが気になっている方に向けて、他の疾患との見分け方、化膿性汗腺炎の症状と原因、治療方法、予防法を解説します。
記事を読めば、化膿性汗腺炎の治療法がわかり、どのように対処すればよいかがわかります。
化膿性汗腺炎とは
汗腺(皮膚の中で汗を分泌する場所)に細菌が感染し、膿がたまる病気のことです。
陰部、わきの下、肛門の周り、乳房の下などのアポクリン腺という汗腺の多いところに起こりやすいとされています。
思春期以降に発症することが多く、20~40歳台で発症します。 男女でできやすい部位は異なり以下通りです。
男性:わきの下、お尻、股
女性:わきの下や胸(乳房の下)、お尻、足のつけ根
できる部位によって他の疾患との鑑別も可能です。
化膿性汗腺炎の症状
症状には以下の5つの症状があります。
結節(けっせつ):痛みを伴うしこりやこぶのようなもの。太ももの内側や付け根にできる。時間が経つと大きくなって、赤く腫れることもある。
濃腫(のうしゅ):皮膚の下に膿がたまったしこり。
膿瘍(のうよう):濃腫よりも膿がさらにたまって、袋が破れてぷよぷよしたもの。
瘻孔(ろうこう):痛みを伴って穴から膿が出ていく状態。皮膚の下に蟻の巣のようなトンネルができていることが多い。治るまでに時間がかかり、治癒しても跡が残ることが多い。
瘢痕(はんこん):膿瘍を繰り返すと皮膚が厚くなり、太い縄のような痕が残ることもある。
化膿性汗腺炎は処置をしないままでいると、膿がたまって病状が進行します。
悪化すると、痛みや腫れが強くなり、皮下でつながってトンネルを作ることがあります。
初期の段階で病院を受診し、早期の治療がおすすめです。
さらに進行すると患部が広がって痕が残り、あざのようになってしまったり、炎症を繰り返したりする可能性もあります。
膿や血液が外に流れ出ている状態は、悪臭を伴うこともあります。
化膿性汗腺炎の原因
化膿性汗腺炎の原因は、汗腺(毛穴)がつまって汗が上手く出せないことや、皮膚に傷がつきバリア機能が落ちることです。
毛穴のつまりが起こる原因は、加齢、ターンオーバーが乱れて角質がスムーズに排出されないこと、ホルモンバランスの乱れなどです。
また、窮屈な下着、腋の毛を剃ることなどでも起こります。
つまった毛穴に摩擦や力が加わった際に、毛を包む袋が破れて内容物が周囲に漏れ出して、周囲の組織が反応して炎症を起こしてしまうのです。 海外の報告では、喫煙や肥満が発症リスクを高める原因であるとされています。
喫煙については日本人にも当てはまりますが、肥満については日本人に当てはまるかは現時点では不明です。
海外の報告では、患者さん全体の30~40%は遺伝的要素の関連を示唆していますが、まだはっきりとしたことはわかっていません。
化膿性汗腺炎と似ている疾患
化膿性汗腺炎と似ている疾患は、以下の2つがあります。
1.粉瘤(アテローム)・炎症性粉瘤
粉瘤とは、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれる良性の腫瘍のことです。
皮膚の下にできた袋のような組織に、角質や皮脂といった老廃物がたまった状態です。
初めのうちは小さなしこりですが、徐々に大きくなり、臭いを発するようになります。 炎症性粉瘤は、粉瘤が赤く腫れあがり、炎症を起こし痛みを伴う状態のことです。
細菌感染または異物反応によって起こります。化膿性汗腺炎と粉瘤は初期の段階では似ていますが、顔や背中など体のさまざまな部分にできる点で異なります。
また、化膿性汗腺炎との違いは、粉瘤は患部に小さな穴が空いており、押すと黄色い物質が出てくる点です。抗生剤の服用で治療できるので、早期に病院を受診して鑑別診断してもらってください。
2.毛嚢炎(毛包炎)
黄色ブドウ球菌を主な原因として毛穴の奥の毛根を包んでいる部分「毛包」の浅い層の炎症です。緑膿菌やその他の菌が原因になることもあり、ニキビも毛嚢炎の一種です。
表面の傷から細菌が侵入して起こり、赤くなったり、周囲が膿を持ったりする場合があります。 化膿性汗腺炎と症状は似ていますが、発生する部位が異なります。
それぞれの発生部位は以下の通りです。
• 毛嚢炎:首の後ろ、太もも、陰部付近。
• 化膿性汗腺炎:女性ではわきの下や胸(乳房の下)、お尻、足のつけ根。男性では、わきの下、お尻、股。
毛嚢炎は、皮膚を清潔に保つことで予防につながり、軽症であれば、1週間程度清潔な状態を保てば治癒することが多いです。
化膿性汗腺炎の検査・診断
症状と見た目から診断することが多いですが、皮膚を一部採取する皮膚生検術、血液検査、膿のサンプルを採取して培養検査、肛門検査などをすることもあります。
化膿性汗腺炎の治療法
治療法には、手術による除去と投薬治療の2つがあります。
化膿性汗腺炎を悪化させるリスクが高い患者に対しては、減量や禁煙の指導も実施します。
1.手術による除去治療
手術では皮膚を一部分または全部を取り除く方法で行います。
化膿性汗腺炎が発症した部位に皮膚がんが発生する可能性もあるので、炎症部分をすべて取り除くことが重要です。
切除した部分に「植皮」(健康な皮膚を移植する)をする場合もあります。 膿瘍を切開したり、筒状のメスでくり抜いたりして、膿を外に排出させる方法もあります。
ただし、排出するだけでは再発することも多いので、切開する方が多いです。 また、外科的な手術をするよりも負担が少ないレーザー療法が用いられる場合もあります。
術後1~3日間はガーゼに血がつくことが多く、ガーゼを毎日交換する必要があります。シャワーで傷を洗い流しても良いですが、新しいガーゼに貼りかえるようにしましょう。入浴は感染の可能性が高いため、抜糸までは避けます。
また、手術当日・翌日は出血のリスクがあるので、飲酒や過度な運動は避ける必要があります。 除去手術後に化膿したり、体質や環境によっては瘢痕化したりする場合もあるので、不安な人は担当医師に手術方法について相談してください。
2.薬による治療
除去手術で症状が改善しなかった場合には投薬治療をします。注射薬、飲み薬、塗り薬などによって治療が可能です。
一般的には、ヒュミラという治療薬を服用することが多く、患部のできものを減少させられます。
ただし、効果が出るまでに3か月ほど要します。 ヒュミラは、太ももやお腹、二の腕の後ろ側に注射を打つことでも治療可能です。
注射によって全身に効果を認め、自分でも注射可能なので、通院する手間を省けます。
化膿性汗腺炎の予後と予防法
適切な治療をすることにより、症状を改善できます。しかし、症状が消失しても、再度炎症を起こして、症状を繰り返す場合があります。
また、化膿性汗腺炎と診断されるまでに時間がかかる場合もあるでしょう。デリケートな部分に症状が出ることから受診をためらってしまう人も多いですが、できる限り早めに受診することが重要です。
原因は明確になっていませんが、肥満や喫煙との関連が認められているので、肥満傾向の人は減量、喫煙の頻度が高い人は禁煙が予防になります。
摩擦による刺激が関係していることも考えられるため、締め付けの少ない衣服を着用することもおすすめです。
仕事中に長時間椅子に座りっぱなしの人や運転手の人は適宜休憩を入れて、摩擦や力が加わり続けるのを避けるようにしましょう。
まとめ
痛みを伴うできものはそのままにしておかずに、他の疾患との鑑別診断が必要です。
ただし、化膿性汗腺炎に似ている疾患もあるので、自分で鑑別するのは難しい場合が多いでしょう。
できものができた場合には、早めに受診をして診断してもらい、治療を開始するのがおすすめです。できもの全般の治療ならふるばやし形成外科を受診してください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
脂肪腫ができたら何科を受診すればよい?原因と治療方法を解説
はじめに
「脂肪腫」は、できものの代表例として多くの人に知られています。しかし、実際に脂肪腫ができてしまった場合、どう対処すればよいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
痛みを感じなければ放置してよいのか、どの診療科を受診すればよいのか、脂肪腫の原因は何か、どのような治療をするのかなど、不安を感じることもあるでしょう。
本記事では、脂肪腫ができた際に受診すべき診療科と、原因や治療方法について解説します。
脂肪腫(リポーマ)とは?
「脂肪腫」とは「リポーマ」とも呼ばれる、良性の腫瘍です。軟部腫瘍のなかでも発生しやすい腫瘍なので、決して珍しい腫瘍ではありません。脂肪腫は、皮下組織にできるものと、筋肉内にできるものがあります。
皮下組織にできた脂肪腫は、触ると動き、柔らかい「しこり」のようなものを感じます。しこり自体は脂肪細胞の塊で、薄い膜で覆われています。背中や首・臀部・頸部などにできやすく、痛みや痒みを伴わないのが一般的です。サイズは1cm程度の小さいものから、大きいものだと10cmを超えるものもあります。
筋肉内脂肪腫は、筋肉組織の深い位置にできるため、触っても動かないことがあります。そのため、自分で脂肪腫と見極めるのは困難です。
脂肪腫は、しこり以外の症状が見られないことが多いものの、時間をかけて少しずつ肥大していきます。自覚症状がないため「気付いたらしこりができていた」「しこりが大きくなってから気付いた」といったケースも珍しくありません。
脂肪腫そのものに痛みは伴いませんが、肥大化することによって周りの神経を圧迫し、痛みが生じることがあります。そのため、痛みがないからといって放置することはおすすめできません。腫瘍が小さいうちに治療をすれば、身体に与えるリスクを軽減できます。そのため、できるだけ早く専門医に相談するのが最善です。
脂肪腫は何科を受診すればよい?
皮膚の下に柔らかいしこりがあり、痛みを伴わない場合は「形成外科」もしくは「皮膚科」を受診しましょう。
後ほど詳しい治療方法を解説しますが、脂肪腫を根治させるためには外科手術が必要です。形成外科は手術に特化しているので、安心して治療に臨めます。
脂肪腫ができる原因
脂肪腫ができる原因は、はっきりと解明されていません。
しかし、遺伝子と関与している可能性があると考えられているため、脂肪腫の発症自体は幼少期であるといわれています。幼少期には気付かなかった小さな脂肪腫が少しずつ肥大し、大人になってから気付くといったケースも多く見られます。脂肪を蓄積しやすくなる40代以降に発症しやすいのも脂肪腫の特徴です。
また、体質や外傷がきっかけでできることもあるといわれています。
脂肪腫の治療方法
脂肪腫の疑いがある場合、まずは視診や触診で診察をします。その他の疾患が疑われる場合は、エコー検査やMRI検査が実施されます。画像検査を実施しても診断が難しいときは、腫瘍の組織を採取し、生体検査(生理機能検査)をすることもあります。
脂肪腫と診断された場合、メスによる外科手術で完全摘出するのが一般的です。内服薬や外用薬を用いた治療や、注射器で抜き取ることはできません。腫瘍そのものを完全に取り除かなければ、再発するリスクがあるためです。
当院での脂肪腫の手術の流れは以下の通りです。
1.切開箇所へマーキング
2.麻酔と切開
3.腫瘍の摘出
4.止血と縫合
5.抜糸
当院では健康保険適用内で、日帰り手術も可能です。また、術後の傷口が目立たないようにするため、切開部のデザインを入念に行っています。
縫合の際は細い糸を使い、可能な限り細かく縫合することで傷口が目立ちません。縫い合わせが表面に出ない縫合方法もあります。
また、麻酔時には痛みを軽減できるよう極細針を使用しています。
10cmを超える脂肪腫や、筋肉内脂肪腫の場合は入院が必要になることもあります。全身麻酔が必要な場合や、悪性の疑いがある場合は、当院で手術ができません。
その際は、連携している大学病院を紹介しております。
脂肪腫に似ている症状
腫瘍にはさまざまな種類があるため、脂肪腫と見分けにくいものもあります。脂肪腫に似ている症状は以下の通りです。
粉瘤(アテローム)
粉瘤は、皮脂や角質などの老廃物が溜まった、硬くて弾力のある袋状の「しこり」です。良性腫瘍ですが、脂肪腫と大きく違う点は炎症を起こしやすく、腫れや痛みを伴うということです。
ドーム状に膨らんだ開口部の中央に黒点がみえることもあり、潰れると独特のにおいを発します。根治させるためには外科手術が必要です。
ガングリオン
ガングリオンは、ゼリー状の物質の腫瘍です。関節に好発しやすく、ガングリオンは脂肪腫と比べると硬めの感触です。
痛みはなく、見た目や日常生活に支障をきたさなければ、治療をしなくても問題ありません。しかし、神経の近くにできると神経を圧迫し、痛みを伴う可能性もあります。ガングリオンは中身が液体のため、注射器で吸い出せます。
滑液包炎(かつえきほうえん)
滑液包炎は、関節と骨の間にある滑液包が炎症を起こし、腫れを伴う症状です。肩や肘・膝など関節周りにできやすく、触れるとやわらかく、弾力性があります。
痛みのない脂肪腫とは異なり、滑液包炎は押すと痛みを伴います。注射による治療で、症状が緩和されます。
脂肪肉腫
脂肪肉腫は、皮下組織や軟部組織から発生する、悪性の腫瘍(希少がん)です。脂肪腫と似ている症状のため、特に注意しなければいけません。全身のあらゆる部分に発生し、なかでも四肢に発生しやすいといわれています。
脂肪腫の見分け方
脂肪腫の特徴は以下の通りです。
・触ると柔らかい
・指で押すと動く
・炎症を起こしていない
・痛みや痒みがない
このような症状が見られる場合、脂肪腫の可能性があります。しかし、条件が当てはまるからといって、脂肪腫と決めつけてしまうのは危険です。先述した通り、脂肪腫と似ている症状のなかには、脂肪肉腫(悪性腫瘍)の可能性もあるためです。
脂肪腫を放置することのリスク
脂肪腫は良性腫瘍のため、放置していても悪性に変化したり、命に関わったりすることはありません。しかし、脂肪腫は少しずつ大きくなります。脂肪腫が大きくなってから手術をすると、傷跡が大きくなったり、全身麻酔が必要になったり、手術に対するリスクを伴います。
また、脂肪腫ではなく悪性腫瘍だった場合、発見が遅れることで取り返しのつかないことになりかねません。身体に気になる腫瘍を見つけた場合は、できるだけ早く専門医に相談しましょう。
まとめ
脂肪腫は、軟部腫瘍のなかでは最も多く見られる腫瘍なので、決して珍しい腫瘍ではありません。進行はゆっくりですが、少しずつ肥大化するため、痛みを伴わなくても早めの治療が望ましいとされています。小さいうちに治療をすることで、さまざまなリスクを回避できます。美容の的な観点からも、早めの手術がおすすめです。
当院では、脂肪腫の日帰り手術が可能です。小さなしこりや気になる腫瘍がある方は、ぜひ当院にご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
脂肪腫ができやすい人とは?腫瘍の原因と治療方法を解説
はじめに
脂肪腫ができやすい人は、比較的肥満な人に多く、女性の割合が高いとされています。脂肪腫は体のどの部分にも発生する腫瘍であり、原因は明確に判明していません。
日常生活に支障がなければ、すぐに治療の必要はありませんが、脂肪腫は他の腫瘍とよく間違われやすく注意が必要です。
また大きくなれば、直径10センチ以上にまで成長することもあります。脂肪腫は自然に小さくならないため、気になる症状がある時は早めに検査を行い、適切な治療を行いましょう。
脂肪腫とは?
脂肪種とは柔らかい腫瘍であり、良性腫瘍であることが多いと言われています。皮膚にできる腫瘍の中では発生頻度が高く、脂肪細胞がある部分であれば、体のどこにでも発生します。
脂肪腫は良性の腫瘍ですが、稀に悪性へと変異する可能性もあるため注意が必要です。非常にゆっくりと肥大化していくため、脂肪腫ができていることに気付かない人も多くいます。
必ずしも摘出が必要ではありませんが、脂肪腫と見た目が似ている悪性腫瘍も存在しているため、自己判断による放置は避けるようにしましょう。
脂肪腫ができやすい人の特徴
脂肪腫ができやすい人の特徴は、肥満の方や糖尿病、高脂血症を患う方に多いとされています。高カロリーで栄養バランスが悪い食事や、加工食品の頻繁な摂取などは、脂肪腫のリスクを高めます。食生活や生活の乱れは、脂肪腫ができやすい原因に繋がるため、バランスの良い食事や規則正しい生活を心がけましょう。
また年齢を重ねるごと脂肪腫を患うリスクは増し、40代から60代の方に多い疾患です。また男性よりも女性の方がわずかに多く、遺伝性もあると考えられています。
ご家族の中に脂肪腫を患っている方は、発生リスクは高まるでしょう。遺伝や性別により、なりやすい人には傾向がありますが、ご自身で改善できる点もあります。
最も大切なことは、規則正しい生活や食生活です。これは脂肪腫だけでなく、他の健康状態にも影響を及ぼす可能性があるため、改善を心がけてみましょう。
脂肪腫を放置すると起こるリスク
脂肪腫を治療せずに放置した場合、下記のようなリスクがあります。
●腫瘍が肥大化する
●発生場所によっては痛みを伴う
腫瘍が肥大化する
脂肪腫は自然に小さくなることはなく、ゆっくりではあるが徐々に大きくなっていきます。肥大化した脂肪腫は、周囲の細胞や臓器を圧迫する可能性があります。
これにより痛みや不快感、身体機能に障害が生じる場合があるでしょう。さらに非常に稀なケースで、脂肪腫は悪性に変異することもあるため、注意が必要です。
一般的には良性腫瘍ですが、早期治療を行い肥大化や悪性への変異、悪化を予防することが重要になります。
手術の危険性が高まる
肥大化した脂肪腫の摘出は、手術の危険性が高まります。大きな脂肪腫は、手術した際に出血の恐れや周囲組織の損傷リスクがあると言えます。
また脂肪腫が深部にまで肥大化したり、周囲に重要な血管や神経が近接していると、さらに手術のリスクが高くなりかねません。
そのため脂肪腫は、大きくなる前に適切な手術を受けるようにしましょう。
傷跡が大きく残る
脂肪腫を手術した際、傷跡が大きく残るリスクがあります。手術の時は、脂肪腫の大きさや深さに応じて切開が必要になります。
そのため大きく切開すればするほど、傷跡が残るリスクが高まるでしょう。
傷跡の目立ち方は、体質や手術方法によって異なりますが、傷跡が心配な方は、脂肪腫が小さい間に手術を行うことが推奨されます。
発生場所によっては痛みを伴う
腫瘍ができる場所によっては、痛みを伴うケースがあります。一般的に、脂肪腫は痛みやかゆみなどの症状を感じる人は少ないと言われています。しかし圧迫や刺激によって痛みを引き起こす可能性があるでしょう。
特に神経や筋肉、骨などの近くに脂肪腫が発生すると、他の組織を圧迫することで痛みが生じるケースがあります。
ほかにも動きや摩擦によっても痛みを伴う場合があるため、痛みが強くなる前に適切な治療を行いましょう。
脂肪腫の治療方法
脂肪腫の治療方法は、手術による摘出になります。脂肪腫の中身は液体ではないため、注射器などによる吸引も不可能です。
そのため皮膚を切開して行う、外科手術が必要になります。手術は、局所麻酔や全身麻酔の下で行われ、日帰りによる手術が可能な場合もあります。
脂肪腫は自然治癒しない腫瘍ですが、手術を行えば再発リスクが低い疾患です。脂肪腫に疑いがある時は、早めに診察を受けることで、体への負担を軽減し、不安も解消できるでしょう。
診察から手術の流れ
- ここでは、脂肪腫の診察から手術までの流れを紹介します。
●疾患を鑑別し検査を行う
●治療方法や手術内容の説明
日帰りによる摘出手術 初めての病院で診察や手術は、不安な点も多いですが、下記を参考に流れについて知識を深めてください。
疾患を鑑別し検査を行う
脂肪腫の疾患を鑑別するために、問診と視診、触診を行います。まずは問診で、症状や腫瘍の発生経緯について話していきます。
そして視診で腫瘍の形状や皮膚の変化などを観察し、最後に触診で腫瘍の硬さや痛みの有無、周囲の組織との関係性について診察が行われるのが一般的です。
医師は、この診察を元に脂肪腫であるか鑑別していきます。ただし診察結果だけでは確定診断が難しいため、必要に応じて画像検査やエコー検査、CT検査などが追加される時もあります。
治療方法や手術内容の説明
脂肪腫であると判断された場合、治療方法や手術の説明を受けます。脂肪腫の治療方法は、麻酔を使用した外科手術です。
そのためここで詳しく手術内容や麻酔、注意事項などの説明があります。不安や心配なことがある場合、遠慮せずに伝えておきましょう。
安心して治療を始めるためには、非常に重要なことなので、できる限り事前に不安を解消しておくと安心です。
日帰りによる摘出手術
手術の説明を終えれば、実際に手術を行います。脂肪腫の手術は、一般的に日帰りで受けることが可能です。
しかし腫瘍の大きさや悪性の疑いがある場合は、日帰り手術ができないケースもあるため、事前の説明で確認しておきましょう。
日帰りによる手術が不可能な場合は、提携している病院への紹介を受け、最適な手術を受けられるようにサポートしてくれます。
手術後の注意点
傷が早く綺麗に治るために術後は、飲酒や運動を避けるようにしましょう。特にアルコールの摂取は傷の治りに悪影響を及ぼすため、術後最低でも3日間は控える必要があります。
医師によるアルコール摂取の自粛推奨期間は、1週間程度とされており、可能であれば1週間程度控えると安心です。
また入浴については、当日は細菌の感染リスクがあるため、不可能な場合が多いですが、術後翌日からシャワーが可能になります。
しかし切開を行った大きさや部位によっても異なるため、医師の指示を確認しましょう。
まとめ
脂肪腫ができやすい人は、肥満の方や糖尿病、高脂血症の方に多い傾向です。また遺伝性もあるとされています。
しかし明確な原因は判明しておらず、誰もがなり得る疾患と言えるでしょう。
脂肪腫は良性腫瘍である場合が多いが、腫瘍は自然に小さくならず、時間の経過とともに大きく変化していきます。また脂肪腫は稀に悪性腫瘍に変異する可能性や痛みを伴うケースもあり、自己判断による放置は避けるようにしましょう。
脂肪腫のようなできもの全般の治療は、形成外科専門医である当院にお任せください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
脂肪腫は小さい間は放置して大丈夫?症状や治療法を詳しく解説
脂肪腫とは皮下にできる良性腫瘍
脂肪腫とは皮下にできる良性腫瘍のことをいいます。軟部組織の腫瘍の中で、最も多くみられます。基本的には痛みなどの症状は無く、皮膚がドーム状にふくらみ、柔らかいしこりのように触ることが可能です。脂肪腫は薄い膜に覆われていて、皮下脂肪と同じような黄色い色をしています。
原因
現在のところ発生原因はわかっていません。ただ、服が擦れるなどの外部刺激を受けやすい場所にできる傾向があることはわかっています。
また、およそ80%の脂肪腫が染色体に異常を起こしていることはわかっており、毛細血管周辺の未分化の細胞が遺伝子の異常を起こし、脂肪細胞に分化し増殖して発生したものと考えられています。
種類
脂肪腫には主に7つの種類があり、以下の通りです。
1.線維脂肪腫(fibrolipoma)
脂肪腫の中で最も多くみられ、脂肪細胞の中に膠原線維があり、被膜を有していることが多い良性の腫瘍です。痛みはなく、柔らかいしこりであり、首の後ろや背中などの圧や刺激がかかりやすい部位にできます。
放置すると徐々にサイズが大きく成長することが多い腫瘍ですが、小さい切開でつるっと取れます。
2.血管脂肪腫(angiolipoma)
一般的に脂肪腫は首や体幹にできることが多いですが、血管脂肪腫は腕にも発生し、背部、腹部、上下肢に好発します。大きさは、1㎝ほどの直径であり、脂肪細胞の隙間に毛細血管を認めます。
硬さはやや硬く、触らなくても痛かったり、押すと痛かったりするのが特徴であり、小さな切開で取れます。
3.筋脂肪腫(myolipoma)
皮膚の深部に発生し、筋肉内にもできる場合があります。後頚部(首の後ろ)に好発し、被膜が不明瞭な場合もあり、やや取りにくい腫瘍です。
完全に除去するためには、筋肉の切除もする必要があり、ある程度の切開をしないと完全に摘出できません。
4.びまん性脂肪腫
2歳以下の乳幼児に発生しますが、頻度は低い疾患です。びまん性とは全体に広がるという意味であり、体幹や上肢、下肢などの全身に広がり、皮下だけではなく内臓や筋肉にも見られます。
5.良性対側性脂肪腫
肩、上腕、胸部、腹部、太ももなどに左右対称に多発するまれな脂肪腫です。飲酒の量が多い方によく見られるといわれています。
6.脂肪腫様母斑
淡黄色に皮膚が盛り上がり、お尻や太ももに多く発生する脂肪腫です。孤発性と多発性のタイプがあり、孤発性は成人に多く、多発性は10歳以下に多いと言われています。
孤発性はドーム状に皮膚が盛り上がることが多く、多発性は腫瘍が連なって島のように盛り上がることが多いといわれています。
7.脊髄脂肪腫
胎児期に皮下の脂肪組織が脊髄に入りこむことで生じ、腰や仙骨部に好発します。脊髄神経が引っ張られるため、神経障害を起こします。神経障害の症状は、足の変形(尖足)、運動機能の障害(転びやすい、歩きづらさ)、下肢のしびれなどです。
また、尿もれや頻尿、尿路感染、便秘、腎機能障害などの症状も出現します。
発生時期
発生するのは幼少期と言われていますが、初めのうちは小さく発見されず、20歳以下での発見は少ないと言われています。
そのため、発見されるのは40~50歳代、男性よりも女性に多く、肥満者に多いとされています。
発生部位
背中、肩、首に多く、次に腕、お尻、太ももなどの体幹に近い四肢に見られます。顔、頭、ふくらはぎ、足などにできることはまれです。
大きさ
数ミリから直径が10㎝以上になるものもあります。比較的サイズが大きい場合(5cm以上)や数ヶ月で大きく成長する場合には、悪性腫瘍である脂肪肉腫との鑑別を目的に組織を採取して診断する必要があります。
脂肪腫の診断方法
多くのものは外来で診察可能ですが、正確な診断をするためには、エコー検査、CT検査、MRI検査などで画像診断をする必要があります。
また、以下のようなものは手術前に腫瘍の一部を取って調べます。
- サイズが大きい物(5~10㎝以上)
- 硬いもの
- 急速にサイズが大きくなったもの
- 痛みがあるもの
- 下層の組織にくっついているもの
- 深部組織のもの
- 大腿にあるもの
形成外科を受診して、診断してもらうようにしましょう。
粉瘤との見分け方
粉瘤は、皮下にできた袋状の組織に皮脂や垢がたまった状態のものをいいます。脂肪腫も粉瘤も、ドーム状に盛り上がったしこりができます。
ただ、粉瘤は中心部に小さな黒い穴があり、悪臭がすることが多いです。ともに、形成外科での除去治療が必要であるため、形成外科を受診する必要があります。
脂肪腫と脂肪肉腫の違い
脂肪肉腫は、悪性腫瘍(がん)であり、中年以降に発生します。でき始めには、脂肪腫と同じように痛みはありません。しかし、大きく成長する期間が脂肪腫と脂肪肉腫は異なります。
脂肪腫のしこりは、徐々に大きくなりますが、脂肪肉腫は数ヶ月で急速にしこりのサイズが大きくなる場合があります。
皮膚にできたものは痛みがない場合も多く、見た目では良性か悪性かを見分けることはできません。すみやかに形成外科の診察を受けることが重要です。
脂肪腫の治療法
脂肪腫の治療法は小さい場合には経過観察すればよいとされていますが、ただ放置しておくだけで、自然には治りません。大きくなってから治療すると、手術の傷痕が目立ち、手術に伴うリスクが高くなる可能性があります。ある程度の大きさに達したものは手術した方がよいでしょう。
以下のような状態になった場合には手術が必要です。
- サイズが大きくなった場合
- 見た目が気になる
- 痛みがある
- 服にひっかかる
脂肪腫の手術方法、手術後の注意点、治療費について解説します。
手術方法
摘出手術を実施する必要があり、日帰り手術に対応しています。ただ、腫瘍に悪性の疑いがある場合や全身麻酔が必要な場合などでは提携している大学病院などの大きい病院で治療する場合もあるでしょう。
脂肪腫の直上を腫瘍の直径に一致するように切開し、被膜を破らないように周囲の組織からはがして、摘出します。
手術後の注意点
手術翌日までは痛み止めを服用する必要があります。血行を促進してしまうと出血のリスクが高まるため、飲酒や運動は控えるようにしましょう。シャワーは傷の大きさや部位によるので主治医に相談する必要があります。
治療費
手術には保険が適用されるため、治療にかかる費用は、診察する回数にもよりますが、トータルで1〜2万円程度です。
まとめ
脂肪腫は、小さくて痛みがなければ経過観察でよいですが、放置しておいてもなくなりません。また、粉瘤や脂肪肉腫との鑑別も必要です。脂肪腫が小さい段階で他の皮膚疾患と鑑別するために早めに形成外科を受診するようにしましょう。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
脂肪腫(リポーマ)の治療費用/健康保険適用
料金
平日:18:00以降、土曜:12:00以降、日曜・祝日:終日 の診療では下記の追加料金が発生致します。
3割負担の場合 | 1割負担の場合 |
---|---|
150円 | 50円 |
露出部(顔、首、肘から指先まで、膝から足先まで)の場合、切除した脂肪腫の直径の合計
3割負担の場合 | 1割負担の場合 | 別途費用 | |
---|---|---|---|
2cm未満 |
5,000~6,000円程度 |
2,000円程度 |
診察料・処方料 1,000円程度 検査費用 1,000円程度 病理検査費用 3,000円程 |
2cm〜4cm未満 |
11,000~12,000円程度 |
4,000円程度 |
|
4cm以上 |
13,000~14,000円程度 |
4,500円程度 |
※お支払いは現金のみとなります。
非露出部の場合(露出部以外)切除した脂肪腫の直径の合計
3割負担の場合 | 1割負担の場合 | 別途費用 | |
---|---|---|---|
3cm未満 |
4,000〜5,000円程度 |
1,500円程度 | 診察料・処方料 1,000円程度 検査費用 1,000円程度 病理検査費用 3,000円程 |
3cm〜6cm未満 | 10,000〜11,000円程度 |
3,500円程度 |
|
6〜12cm未満 | 12,000〜14,000円程度 |
4,500円程度 |
|
12cm以上 | 25,000円程度 |
8,000円程度 |
※お支払いは現金のみとなります。
脂肪腫についてこちらの動画でも詳しく解説しております。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
脂肪腫(リポーマ)の手術
脂肪腫(リポーマ)手術の前に
他の疾患と鑑別するために、診察を行います。問診と併せて視診や触診を行います。腫瘍のある部位や深さ、腫瘍の大きさによってはエコー検査、CT検査、MRI検査といった画像検査が必要になります。
検査の結果と患者様の状態に合わせた適切な治療方法について詳しくご説明します。基本的に脂肪腫の治療は外科手術による摘出です。
麻酔を含む手術の内容や術後の経過、注意事項などについても分かりやすくお伝えします。
最善の選択をしていただき、患者様に納得していただくために、当院ではこうしたインフォームドコンセントを重視しています。
脂肪腫についてこちらの動画でも詳しく解説しております。
日帰り手術に対応
当院では、脂肪腫の手術が日帰りで受けることができます。ただし、腫瘍に悪性の疑いがある場合や全身麻酔が必要な場合などでは提携している大学病院などをご紹介致します。その場合もスムーズに治療を受けていただけるよう最大限配慮致します。
手術時の痛みを大幅に軽減
当院では少しでも患者様の痛みを軽減するために様々な工夫をしています。局所麻酔に関しても、極細の針を使用したり薬剤の配分を工夫するなどきめ細かく配慮し可能な限り痛みを軽減致します。
また、痛みが苦手な方は、個別の対応も可能です。ご安心いただくため、お気軽にご相談ください。
保険適用による手術
当院では、脂肪腫の治療(検査、診断、手術、病理検査など)の全てを健康保険適用で行っています。
手術後の傷跡を目立ちにくくするように心がけています
形成外科は手術による傷痕を目立ちにくく綺麗に仕上げる手術を得意とする診療科です。当院では、形成外科専門医※が、患者様の状態に合わせて最適な手法を選択し、細やかな配慮をしながら丁寧に手術を行っています。
手術だけでなく診察においても専門医が詳しく丁寧にご説明します。
日帰りと言っても手術となると不安や疑問をお感じになると思います。少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
※一般社団法人日本形成外科学会認定専門医
手術後の注意点
手術後、翌日くらいまでは痛みが残る可能性があるため、痛み止めの内服薬を処方します。ただし、当院では手術の際、できるだけ小さく切開するよう心がけています。1㎝以下の小さな傷で済めばほとんど痛みが出ないよう努めています。
なるべく早く、綺麗に傷が治るよう、手術後の生活にも注意が必要です。血行を促進してしまうと出血のリスクが高まります。飲酒や運動は控えましょう。
アルコールを摂取すると明らかに傷の治りが悪くなります。最低手術後3日間、可能ならば1週間は飲酒を控えてください。
運動は、手術当日と翌日は行わないでください。また、運動を控える期間を更に長く取る方が望ましい場合もありますので、ご相談ください。
入浴については手術の翌日からのシャワーが可能な場合があります。
いずれにしても、部位や傷・腫瘍の大きさなどによりこれらの制限の内容や期間は変わってきます。患者様の状態を見ながら医師がしっかりご説明しますので、不安や疑問などありましたら、お気軽にご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
脂肪腫(リポーマ)の治療の流れ/当院での工夫について解説
脂肪腫(リポーマ)の治療法
脂肪腫は自然治癒することはありません。内容物が液体ではないため、注射器などで吸い出すこともできません。そのため、外科手術による摘出をするしかありません。腫瘍の一部が体内に残ると再発リスクを高めるため、手術により薄い膜に包まれた脂肪腫をかたまりごと全て切除します。脂肪腫自体は良性腫瘍でゆっくりと成長します。しかし、大きな脂肪腫の中には稀に悪性のものがあるため、必要に応じ切除後に病理検査を行います。
手術の流れ
インターネットから予約いただき、来院後エコー検査を行います。稀にエコー検査で診断がつかない場合があり、特に大きい腫瘍の場合は他院でMRI検査を行っていただく場合があります。日帰り手術も可能ですが、エコーによる診断が難しい場合は検査後に再度来院していただき、手術を行います。
Step1該当箇所へのマーキング
イメージ画像では肩に大きな脂肪腫(リポーマ)があることが分かります。手術の前に、該当箇所に印(マーキング)を施します。
Step2麻酔注射と切開
局所麻酔を施し、脂肪腫直上の皮膚を切開します。注射が苦手な方のために、極細の針や薬剤の工夫をすることで痛みを軽減しています。当院では、形成外科専門医が皮膚切開部のデザインを行い、できるだけ小さくすることで傷痕を目立ちにくくなるようこだわっています。
Step3腫瘍の摘出
脂肪腫をかたまりごと全て摘出します。指とピンセットを用い、丁寧に行います。
Step4止血と縫合
脂肪腫を取り除いた部分は空洞になり血が溜まりやすいため、しっかりと止血し、縫合を行います。場合によっては「ドレーン」と呼ばれる管を用い、溜った血を排出します。その後ガーゼと伸縮テープで圧迫固定をして手術終了となります。
Step5抜糸
手術後約1~2週間で抜糸を行います。縫い合わせが露出しない縫合方法もあります。術後の治りを早め、傷痕を目立ちにくくするために細い糸を使い的確に縫い合わせることを心がけています。
Step6肌の再生
抜糸から1週間ほど経てば赤みが引き、肌が正常な状態に再生していきます。
当院での工夫
Point.1 できるだけ小さい傷で腫瘍を摘出
Point.2 局所麻酔時に極細針を使用することで痛みを軽減
局所麻酔には1%もしくは0.5%のエピネフリンを入れたキシロカインが用いられ、これらは酸性(pH3.5~5)に偏っていますが、注入する薬剤が中性に近いほど痛みが軽減できます。
当院では7%メイロンを混ぜることで中性(pH7)に近づけ、麻酔注入時の痛みを軽減しています。
脂肪腫についてこちらの動画でも詳しく解説しております。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
脂肪腫(リポーマ)の症状/原因/治療について専門医が徹底解説
脂肪腫(リポーマ)とは
脂肪腫は、皮下に発生する良性腫瘍で、軟部組織の腫瘍の中では最も多くみられるものの一つです。
繊維質の袋状の組織の中に脂肪が蓄えられていき、徐々に大きくなっていきます。現在のところはっきりとした原因は分かっていません。
一般的に単発性の腫瘍ですが、稀に複数発生する場合があります。
脂肪腫は幼少時に発生していると考えられていますが、非常にゆっくりと大きくなるため20歳以下で発見されることは稀で、40~50歳代に見つかることが多いです。女性に多いとされますが報告によってまちまちで一定しません。一般的に肥満者に多いとも言われています。
身体中どこでも発生の可能性がありますが、背部、肩、頸部、臀部、上腕、大腿など体の中心に近い場所に多くみられます。顔、頭皮、膝下などに見られることは稀です。大きさは直径数㎜程度のものから、10センチ以上になるものまで様々です。一般的にかゆみや痛みといった症状はなく、皮膚が盛り上がり、触ると柔らかなしこりを感じることができます。
脂肪腫自体は良性腫瘍ですが、よく似た症状や見た目の悪性腫瘍もあるため、医師の診察を受け可能な限り早く手術で取り除き、病理検査を行うことをおすすめします。放置しているとどんどん大きくなるため美容的な観点でも早めの手術をおすすめします。
関連記事:できもの(おでき)について徹底解説
脂肪腫についてこちらの動画でも詳しく解説しております。
脂肪腫(リポーマ)の原因
脂肪腫とは脂肪細胞が薄い袋状の組織の中で増殖したものです。原因は現時点で分かっていませんが、服が擦れるといった外部からの刺激を受けやすい場所にできる傾向があります。脂肪細胞は成熟すると増殖することはありませんが、およそ80%の脂肪腫が染色体に異常をきたしており、毛細血管周辺の未分化の細胞が遺伝子異常を起こし脂肪細胞に分化・増殖したものと考えられています。誰しも成人後も未分化の細胞を持っています。
脂肪腫(リポーマ)の症状
皮膚を触ると皮膚の直下に柔らかい感触のしこりを感じ、進行すると皮膚が隆起してきます。痛みやかゆみを伴うことはほとんどなく、赤くなるなどの色の変化もほとんどありませんが、神経を圧迫するような場所にできた場合は違和感や痛みを起こすことがあります。大きさは様々ですが、1cm程度のものから大きいものだと10cmを超えるものもあります。
そのほとんどは表皮や皮下脂肪組織にでき、基本的には単発性ですが、稀に複数発生することがあります。
画像検査・診断
問診や触診といった臨床症状とエコーなどを使った画像検査を行います。画像検査にはエコー検査の他にCT検査やMRI検査がありますが、当院では主にエコー検査を行っています。進行し大きくなった腫瘍に対してはCT検査、MRI検査を他院で行っていただきます。
脂肪腫(リポーマ)を放置していると
脂肪腫の進行は非常にゆっくりですが、脂肪細胞の増殖と共に着実に大きくなっていきます。自然治癒することはなく、内容物が液状体ではないため、注射器を使って吸い出すことも困難なため、根治には手術が必要になります。目立つほど大きくなってしまってから手術しては患者様の負担が大きくなります。大きくなる前に一度専門の医師に診てもらうことをおすすめします。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。