脂肪腫ができたら何科を受診すればよい?原因と治療方法を解説

はじめに

「脂肪腫」は、できものの代表例として多くの人に知られています。しかし、実際に脂肪腫ができてしまった場合、どう対処すればよいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
痛みを感じなければ放置してよいのか、どの診療科を受診すればよいのか、脂肪腫の原因は何か、どのような治療をするのかなど、不安を感じることもあるでしょう。
本記事では、脂肪腫ができた際に受診すべき診療科と、原因や治療方法について解説します。

脂肪腫(リポーマ)とは?

「脂肪腫」とは「リポーマ」とも呼ばれる、良性の腫瘍です。軟部腫瘍のなかでも発生しやすい腫瘍なので、決して珍しい腫瘍ではありません。脂肪腫は、皮下組織にできるものと、筋肉内にできるものがあります。
皮下組織にできた脂肪腫は、触ると動き、柔らかい「しこり」のようなものを感じます。しこり自体は脂肪細胞の塊で、薄い膜で覆われています。背中や首・臀部・頸部などにできやすく、痛みや痒みを伴わないのが一般的です。サイズは1cm程度の小さいものから、大きいものだと10cmを超えるものもあります。
筋肉内脂肪腫は、筋肉組織の深い位置にできるため、触っても動かないことがあります。そのため、自分で脂肪腫と見極めるのは困難です。
脂肪腫は、しこり以外の症状が見られないことが多いものの、時間をかけて少しずつ肥大していきます。自覚症状がないため「気付いたらしこりができていた」「しこりが大きくなってから気付いた」といったケースも珍しくありません。
脂肪腫そのものに痛みは伴いませんが、肥大化することによって周りの神経を圧迫し、痛みが生じることがあります。そのため、痛みがないからといって放置することはおすすめできません。腫瘍が小さいうちに治療をすれば、身体に与えるリスクを軽減できます。そのため、できるだけ早く専門医に相談するのが最善です。

脂肪腫は何科を受診すればよい?

皮膚の下に柔らかいしこりがあり、痛みを伴わない場合は「形成外科」もしくは「皮膚科」を受診しましょう。
後ほど詳しい治療方法を解説しますが、脂肪腫を根治させるためには外科手術が必要です。形成外科は手術に特化しているので、安心して治療に臨めます。

脂肪腫ができる原因

脂肪腫ができる原因は、はっきりと解明されていません
しかし、遺伝子と関与している可能性があると考えられているため、脂肪腫の発症自体は幼少期であるといわれています。幼少期には気付かなかった小さな脂肪腫が少しずつ肥大し、大人になってから気付くといったケースも多く見られます。脂肪を蓄積しやすくなる40代以降に発症しやすいのも脂肪腫の特徴です。
また、体質や外傷がきっかけでできることもあるといわれています。

脂肪腫の治療方法

脂肪腫の疑いがある場合、まずは視診や触診で診察をします。その他の疾患が疑われる場合は、エコー検査やMRI検査が実施されます。画像検査を実施しても診断が難しいときは、腫瘍の組織を採取し、生体検査(生理機能検査)をすることもあります。
脂肪腫と診断された場合、メスによる外科手術で完全摘出するのが一般的です。内服薬や外用薬を用いた治療や、注射器で抜き取ることはできません。腫瘍そのものを完全に取り除かなければ、再発するリスクがあるためです。

当院での脂肪腫の手術の流れは以下の通りです。

1.切開箇所へマーキング
2.麻酔と切開
3.腫瘍の摘出
4.止血と縫合
5.抜糸

当院では健康保険適用内で、日帰り手術も可能です。また、術後の傷口が目立たないようにするため、切開部のデザインを入念に行っています。
縫合の際は細い糸を使い、可能な限り細かく縫合することで傷口が目立ちません。縫い合わせが表面に出ない縫合方法もあります。
また、麻酔時には痛みを軽減できるよう極細針を使用しています。
10cmを超える脂肪腫や、筋肉内脂肪腫の場合は入院が必要になることもあります。全身麻酔が必要な場合や、悪性の疑いがある場合は、当院で手術ができません。
その際は、連携している大学病院を紹介しております。

脂肪腫に似ている症状

腫瘍にはさまざまな種類があるため、脂肪腫と見分けにくいものもあります。脂肪腫に似ている症状は以下の通りです。

粉瘤(アテローム)

粉瘤は、皮脂や角質などの老廃物が溜まった、硬くて弾力のある袋状の「しこり」です。良性腫瘍ですが、脂肪腫と大きく違う点は炎症を起こしやすく、腫れや痛みを伴うということです。
ドーム状に膨らんだ開口部の中央に黒点がみえることもあり、潰れると独特のにおいを発します。根治させるためには外科手術が必要です。

ガングリオン

ガングリオンは、ゼリー状の物質の腫瘍です。関節に好発しやすく、ガングリオンは脂肪腫と比べると硬めの感触です。
痛みはなく、見た目や日常生活に支障をきたさなければ、治療をしなくても問題ありません。しかし、神経の近くにできると神経を圧迫し、痛みを伴う可能性もあります。ガングリオンは中身が液体のため、注射器で吸い出せます。

滑液包炎(かつえきほうえん)

滑液包炎は、関節と骨の間にある滑液包が炎症を起こし、腫れを伴う症状です。肩や肘・膝など関節周りにできやすく、触れるとやわらかく、弾力性があります。
痛みのない脂肪腫とは異なり、滑液包炎は押すと痛みを伴います。注射による治療で、症状が緩和されます。

脂肪肉腫

脂肪肉腫は、皮下組織や軟部組織から発生する、悪性の腫瘍(希少がん)です。脂肪腫と似ている症状のため、特に注意しなければいけません。全身のあらゆる部分に発生し、なかでも四肢に発生しやすいといわれています。

脂肪腫の見分け方

脂肪腫の特徴は以下の通りです。

・触ると柔らかい
・指で押すと動く
・炎症を起こしていない
・痛みや痒みがない

このような症状が見られる場合、脂肪腫の可能性があります。しかし、条件が当てはまるからといって、脂肪腫と決めつけてしまうのは危険です。先述した通り、脂肪腫と似ている症状のなかには、脂肪肉腫(悪性腫瘍)の可能性もあるためです。

脂肪腫を放置することのリスク

脂肪腫は良性腫瘍のため、放置していても悪性に変化したり、命に関わったりすることはありません。しかし、脂肪腫は少しずつ大きくなります。脂肪腫が大きくなってから手術をすると、傷跡が大きくなったり、全身麻酔が必要になったり、手術に対するリスクを伴います。
また、脂肪腫ではなく悪性腫瘍だった場合、発見が遅れることで取り返しのつかないことになりかねません。身体に気になる腫瘍を見つけた場合は、できるだけ早く専門医に相談しましょう。

まとめ

脂肪腫は、軟部腫瘍のなかでは最も多く見られる腫瘍なので、決して珍しい腫瘍ではありません。進行はゆっくりですが、少しずつ肥大化するため、痛みを伴わなくても早めの治療が望ましいとされています。小さいうちに治療をすることで、さまざまなリスクを回避できます。美容の的な観点からも、早めの手術がおすすめです。
当院では、脂肪腫の日帰り手術が可能です。小さなしこりや気になる腫瘍がある方は、ぜひ当院にご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。