化膿性汗腺炎の症状と原因を解説!陰部にできた場合の治療法も紹介

はじめに

陰部にできたできものが気になっている方に向けて、他の疾患との見分け方、化膿性汗腺炎の症状と原因、治療方法、予防法を解説します。
記事を読めば、化膿性汗腺炎の治療法がわかり、どのように対処すればよいかがわかります。

化膿性汗腺炎とは

汗腺(皮膚の中で汗を分泌する場所)に細菌が感染し、膿がたまる病気のことです。
陰部、わきの下、肛門の周り、乳房の下などのアポクリン腺という汗腺の多いところに起こりやすいとされています。
思春期以降に発症することが多く、20~40歳台で発症します。 男女でできやすい部位は異なり以下通りです。

男性わきの下、お尻、股
女性わきの下や胸(乳房の下)、お尻、足のつけ根

できる部位によって他の疾患との鑑別も可能です。

化膿性汗腺炎の症状

症状には以下の5つの症状があります。

結節(けっせつ):痛みを伴うしこりやこぶのようなもの。太ももの内側や付け根にできる。時間が経つと大きくなって、赤く腫れることもある。
濃腫(のうしゅ):皮膚の下に膿がたまったしこり。
膿瘍(のうよう:濃腫よりも膿がさらにたまって、袋が破れてぷよぷよしたもの。
瘻孔(ろうこう):痛みを伴って穴から膿が出ていく状態。皮膚の下に蟻の巣のようなトンネルができていることが多い。治るまでに時間がかかり、治癒しても跡が残ることが多い。
瘢痕(はんこん):膿瘍を繰り返すと皮膚が厚くなり、太い縄のような痕が残ることもある。

化膿性汗腺炎は処置をしないままでいると、膿がたまって病状が進行します。
悪化すると、痛みや腫れが強くなり、皮下でつながってトンネルを作ることがあります。
期の段階で病院を受診し、早期の治療がおすすめです。
さらに進行すると患部が広がって痕が残り、あざのようになってしまったり、炎症を繰り返したりする可能性もあります。
膿や血液が外に流れ出ている状態は、悪臭を伴うこともあります。

化膿性汗腺炎の原因

化膿性汗腺炎の原因は、汗腺(毛穴)がつまって汗が上手く出せないことや、皮膚に傷がつきバリア機能が落ちることです。
毛穴のつまりが起こる原因は、加齢、ターンオーバーが乱れて角質がスムーズに排出されないこと、ホルモンバランスの乱れなどです。
また、窮屈な下着、腋の毛を剃ることなどでも起こります。
つまった毛穴に摩擦や力が加わった際に、毛を包む袋が破れて内容物が周囲に漏れ出して、周囲の組織が反応して炎症を起こしてしまうのです。 海外の報告では、喫煙や肥満が発症リスクを高める原因であるとされています。
喫煙については日本人にも当てはまりますが、肥満については日本人に当てはまるかは現時点では不明です。
海外の報告では、患者さん全体の30~40%は遺伝的要素の関連を示唆していますが、まだはっきりとしたことはわかっていません。

化膿性汗腺炎と似ている疾患

化膿性汗腺炎と似ている疾患は、以下の2つがあります。

1.粉瘤(アテローム)・炎症性粉瘤

粉瘤とは、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれる良性の腫瘍のことです。
皮膚の下にできた袋のような組織に、角質や皮脂といった老廃物がたまった状態です。
初めのうちは小さなしこりですが、徐々に大きくなり、臭いを発するようになります。 炎症性粉瘤は、粉瘤が赤く腫れあがり、炎症を起こし痛みを伴う状態のことです。
細菌感染または異物反応によって起こります。化膿性汗腺炎と粉瘤は初期の段階では似ていますが、顔や背中など体のさまざまな部分にできる点で異なります。
また、化膿性汗腺炎との違いは、粉瘤は患部に小さな穴が空いており、押すと黄色い物質が出てくる点です。抗生剤の服用で治療できるので、早期に病院を受診して鑑別診断してもらってください。

2.毛嚢炎(毛包炎)

黄色ブドウ球菌を主な原因として毛穴の奥の毛根を包んでいる部分「毛包」の浅い層の炎症です。緑膿菌やその他の菌が原因になることもあり、ニキビも毛嚢炎の一種です。
表面の傷から細菌が侵入して起こり、赤くなったり、周囲が膿を持ったりする場合があります。 化膿性汗腺炎と症状は似ていますが、発生する部位が異なります。
それぞれの発生部位は以下の通りです。

• 毛嚢炎:首の後ろ、太もも、陰部付近。
• 化膿性汗腺炎:女性ではわきの下や胸(乳房の下)、お尻、足のつけ根。男性では、わきの下、お尻、股。

毛嚢炎は、皮膚を清潔に保つことで予防につながり、軽症であれば、1週間程度清潔な状態を保てば治癒することが多いです。

化膿性汗腺炎の検査・診断

症状と見た目から診断することが多いですが、皮膚を一部採取する皮膚生検術、血液検査、膿のサンプルを採取して培養検査、肛門検査などをすることもあります。

化膿性汗腺炎の治療法

治療法には、手術による除去と投薬治療の2つがあります。
化膿性汗腺炎を悪化させるリスクが高い患者に対しては、減量や禁煙の指導も実施します。

1.手術による除去治療

手術では皮膚を一部分または全部を取り除く方法で行います。
化膿性汗腺炎が発症した部位に皮膚がんが発生する可能性もあるので、炎症部分をすべて取り除くことが重要です。
切除した部分に「植皮」(健康な皮膚を移植する)をする場合もあります。 膿瘍を切開したり、筒状のメスでくり抜いたりして、膿を外に排出させる方法もあります。
ただし、排出するだけでは再発することも多いので、切開する方が多いです。 また、外科的な手術をするよりも負担が少ないレーザー療法が用いられる場合もあります。
術後1~3日間はガーゼに血がつくことが多く、ガーゼを毎日交換する必要があります。シャワーで傷を洗い流しても良いですが、新しいガーゼに貼りかえるようにしましょう。入浴は感染の可能性が高いため、抜糸までは避けます。
また、手術当日・翌日は出血のリスクがあるので、飲酒や過度な運動は避ける必要があります。 除去手術後に化膿したり、体質や環境によっては瘢痕化したりする場合もあるので、不安な人は担当医師に手術方法について相談してください。

2.薬による治療

除去手術で症状が改善しなかった場合には投薬治療をします。注射薬、飲み薬、塗り薬などによって治療が可能です。
一般的には、ヒュミラという治療薬を服用することが多く、患部のできものを減少させられます。
ただし、効果が出るまでに3か月ほど要します。 ヒュミラは、太ももやお腹、二の腕の後ろ側に注射を打つことでも治療可能です。
注射によって全身に効果を認め、自分でも注射可能なので、通院する手間を省けます。

化膿性汗腺炎の予後と予防法

適切な治療をすることにより、症状を改善できます。しかし、症状が消失しても、再度炎症を起こして、症状を繰り返す場合があります。
また、化膿性汗腺炎と診断されるまでに時間がかかる場合もあるでしょう。デリケートな部分に症状が出ることから受診をためらってしまう人も多いですが、できる限り早めに受診することが重要です。
原因は明確になっていませんが、肥満や喫煙との関連が認められているので、肥満傾向の人は減量、喫煙の頻度が高い人は禁煙が予防になります。
摩擦による刺激が関係していることも考えられるため、締め付けの少ない衣服を着用することもおすすめです。
仕事中に長時間椅子に座りっぱなしの人や運転手の人は適宜休憩を入れて、摩擦や力が加わり続けるのを避けるようにしましょう。

まとめ

痛みを伴うできものはそのままにしておかずに、他の疾患との鑑別診断が必要です。
ただし、化膿性汗腺炎に似ている疾患もあるので、自分で鑑別するのは難しい場合が多いでしょう。
できものができた場合には、早めに受診をして診断してもらい、治療を開始するのがおすすめです。できもの全般の治療ならふるばやし形成外科を受診してください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。