皮膚がんとは?原因や種類・見分け方から治療法まで解説!
「最近ホクロが大きくなってきた」
「以前はなかったシミが広がってきた」
上記の症状で、自分が皮膚がんではないかと、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。他の疾患と症状が似ていることから、見分けがつきにくいのが皮膚がんです。
本記事では、皮膚がんの種類や見分け方を解説しています。ぜひお役立てください。
皮膚がんとは
皮膚がんとは、皮膚の細胞が傷ついて変異することで、細胞が無秩序かつ無制限に増殖する状態のことです。
増殖にともなって、周辺の正常な皮膚組織を破壊していきます。皮膚がんは、皮膚に症状が出るため、臓器にできるがんより見た目で発見しやすいといえるでしょう。ただ、やっかいなのは、痛みなどの自覚症状がないため、ついつい放置してしまうことです。
皮膚がんの初期症状は小さなホクロや湿疹、できものと似ています。一般の軟膏を塗っても全然治らない、急激に大きくなるなどで、がんとわかる場合があります。
皮膚がんは放置していると、他の箇所に転移することがあるため注意が必要です。最初に発症した患部より離れた箇所に転移してしまうこともあり、内臓に転移した場合、最終的に死にいたるケースがあります。
皮膚がんの主な原因
皮膚がんの原因はさまざまですが、主に紫外線の影響によるものが大きいとされています。他には、衣服による皮膚への摩擦などの慢性的な刺激や、ヒトパピローマウイルスなどの皮膚のウイルス感染によるものです。
ヒトパピローマウイルスは、主に性交渉によって感染するウイルスです。
また、火傷や外傷などの過去の傷跡から発生するケースや、皮膚がんではない皮膚疾患が変異し、がんになることがあります。
他には、放射線による影響やヒ素などの化学物質による影響、遺伝的に皮膚がんの発生率が高くなる色素性乾皮症による場合です。わきの下に多く存在するアポクリン汗腺の細胞ががん化する場合もあります。
このように皮膚がんの原因は、いろいろなケースが考えられます。
皮膚がんの主な種類
皮膚がんの主な種類は以下のとおりです。
- ・基底細胞がん
- ・悪性黒色腫
- ・有棘細胞がん
- ・ボーエン病
- ・パジェット病
- ・血管肉腫
それぞれの特徴を解説していきます。
基底細胞がん(きていさいぼうがん)
特徴 | 内容 |
---|---|
肌の色など見た目 | ・黒色か黒褐色 ・平面であるが、盛り上がっている場合もある ・潰瘍化することがある |
主な原因 | ・紫外線 ・放射線 |
好発部位 | ・上口唇部 ・外鼻部 ・頬部 ・下眼瞼部 |
好発年齢 | 70代以上 |
自覚症状 | ほとんどなし |
基底細胞がんは、表皮の一番下にある基底細胞から発症するがんで、皮膚がんの中では最も多いとされています。転移することは少ないですが、再発しやすい特徴があります。
好発年齢は70代以上ですが、40〜60代にも多い疾患です。
悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)
特徴 | 内容 |
---|---|
肌の色など見た目 | ホクロと似ているが、以下の違いがある。 ・形がいびつ ・境目が明確でない ・色がまばら |
主な原因 | 明確になっていないが、以下が原因といわれている ・紫外線 ・加齢 |
好発部位 | ・手のひら ・足の裏 ・爪 ・陰部 ・口腔部 ・鼻腔部 |
好発年齢 | 60〜70代 |
自覚症状 | ほとんどなし |
悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラノサイトと呼ばれるメラミン色素を作る細胞が、がんになったものです。日本での発症は、10万人に1〜2人程度と少なめです。
症状が早く進むため、治療しても転移するなど再発するケースがあります。発症年齢は幅広く、若い年代においても発症します。
有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)
特徴 | 内容 |
---|---|
肌の色など見た目 | ・赤みを帯びている ・わずかに盛り上がる ・潰瘍化してじゅくじゅくする |
主な原因 | ・紫外線 ・皮膚摩擦 ・やけどの跡 ・放射線 |
好発部位 | ・顔 ・首 |
好発年齢 | 70歳以上 |
自覚症状 | ・ほとんどなし ・まれに臭気を発する |
有棘細胞がんは、表皮に存在する有棘細胞が、がんになったものです。転移していなければ、切除によって治療でき、再発することもほとんどないでしょう。
潰瘍化してじゅくじゅくするため、湿疹と勘違いする人も少なくありません。
ボーエン病
特徴 | 内容 |
---|---|
肌の色など見た目 | ・円形もしくは楕円形 ・赤色もしくは茶色 ・患部の境界は明確 ・かさぶたができることはある ・患部が盛り上がることがある |
主な原因 | ・紫外線 ・ヒトパピローマウイルス ・ヒ素 |
好発部位 | ・体幹部 ・四肢 ・陰部 |
好発年齢 | 60歳以上 |
自覚症状 | ほとんどなし |
ボーエン病は、有棘細胞がんと同じく、表皮の奥にある有棘層で発生するがんですが、表皮にとどまった状態を指しています。進行は遅く、真皮に届いていなければ転移しません。
パジェット病
特徴 | 内容 |
---|---|
肌の色など見た目 | ・湿疹のようにみえる ・赤色(他に、茶色や白色) ・進行するとしこり、潰瘍化 |
主な原因 | 明確にはなっていないが、以下が考えられる ・皮膚への刺激 ・遺伝 ・女性ホルモンの影響 |
好発部位 | 乳房外パジェット病 ・陰部 ・肛門の周辺 ・脇の下 乳房パジェット病 ・乳房 |
好発年齢 | ・乳房外パジェット病は70〜80代 ・乳房パジェット病は特になし |
自覚症状 | ・ほとんどなし ・かゆみを感じることがある |
パジェット病は、アポクリン腺と呼ばれる、汗器官に関する細胞が、がんになったものです。転移していなければ、表皮の切除で治療できます。
血管肉腫(けっかんにくしゅ)
特徴 | 内容 |
---|---|
肌の色など見た目 | ・初期においては内出血やあざのように見える ・進行すると次第に潰瘍になる場合や、出血をともなうことがある |
主な原因 | 明確になっていないが、以下が考えられる ・外傷 ・放射線 ・紫外線 |
好発部位 | ・頭部 ・顔 |
好発年齢 | 特になし、高齢者に多い傾向 |
自覚症状 | ・ほとんどなし ・進行すると痛みを感じることがある |
血管肉腫は、血管の内側にある細胞が、がんになったものです。発症するのは少数ですが、進行が早いため注意が必要です。
臓器など含め全身にでき、発症全体のうち半数は皮膚での発症です。
皮膚がんと間違えやすい他の疾患
皮膚がんは特に初期のうちは、ほくろや湿疹などと区別がつきにくいことがあります。ホクロや湿疹など、他の疾患に間違えやすいがんは、以下のとおりです。
間違えやすい症状の種類 | がんの種類 |
---|---|
ホクロと間違えやすい | ・悪性黒色腫(メラノーマ) ・基底細胞がん |
湿疹と間違えやすい | ・ボーエン病 ・パジェット病 ・有棘細胞がん |
内出血やあざと間違えやすい | 血管肉腫 |
症状により、イボやシミに見える場合もあります。
皮膚がんは、目で確認できるため、他のがんより見つけやすいです。しかし、他の疾患と思い込み放置することで進行し、臓器などに転移してしまうケースがあります。
皮膚がんセルフチェック
皮膚がんのセルフチェック方法を解説します。当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。
- ほくろのような状態の場合
- ・形が左右対称でない
- ・患部の境界がぼやけている
- ・色が均等でなくまばらである
- ・表面が凸凹している
- ・潰瘍化している
- ・患部が盛り上がってきた
- ・急に大きくなってきた
- 湿疹のような状態の場合
- ・やけど跡や傷跡に湿疹ができた
- ・赤い斑点状もしくは一部白っぽく色が抜けた状態である
- ・湿疹用の塗り薬を塗っても2週間以上経っても治らない
- ・だんだん範囲が広がってきた
- ・表面がかさかさで固い
- ・あざや内出血のような状態がいつまでも治らない
- ・悪臭がある
がん以外の疾患でも、上記症状に当てはまることはあります。しかし、がんの可能性もあるため、該当する項目があった場合は、一度診察を受けることをおすすめします。
皮膚がんを放置するとどうなる?
皮膚がんを放置すると進行し、転移するおそれがあります。皮膚がんも他のがんと同じように、進行によってステージ1〜4があります。
ステージ1〜4における分類は以下のとおりです。
段階 状態 治療法 5年以内生存率(参考値) ステージ1 ・皮膚に止まっている状態
・大きさ2cm以下・手術による切除 95〜100% ステージ2 ・転移なし
・大きさは2cm以上・手術による切除
・場合により放射線療法70〜80% ステージ3 ・リンパ節に転移がある
・大きさは4cm以上もしくは深部・手術による切除
・放射線治療
・場合により化学療法50〜60% ステージ4 ・臓器に転移、患部より遠い箇所にも転移 ・手術による切除
・放射線治療
・化学療法
・免疫療法10%前後 生存率は、あくまで一つの参考としてください。症状やがんの種類により生存率は異なります。
治療法における化学療法とは、主に抗がん剤治療です。内服と点滴があります。
免疫療法とは、患者から取り出した免疫細胞を増殖させ、再度体に戻すことで免疫力を高める方法です。放射線療法は、放射線を照射し、がん細胞を死滅させる治療法です。
少しでも不安を感じたら早めに診察を
がんは進行するに従い、対処が難しくなります。皮膚から内臓へ転移した場合、最終的に死に至るおそれがある疾患です。少しでも不安を感じたなら、早めに診察を受けたほうが良いでしょう。
皮膚がんの治療は、皮膚科で行うのが一般的ですが、他の選択肢として形成外科もあります。形成外科では、見た目や機能面などの、がん手術後の再建手術もしています。
当院では、形成外科と皮膚科の専門医による、きれいな仕上がりの治療が可能です。皮膚がんは、顔など目立つ箇所にできることも多いため、症状に不安があるときは、遠慮なく相談してください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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皮膚腫瘍の基本知識
皮膚腫瘍とは何か
皮膚腫瘍は、皮膚の細胞が異常に増殖することで生じる病変です。皮膚のあらゆる部位に発生する可能性があり、その形状や大きさ、色調はさまざまです。
皮膚腫瘍は、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されます。
- 表皮系腫瘍
- 真皮系腫瘍
- 付属器系腫瘍
これらの腫瘍は、皮膚のどの層や構造から発生したかによって分類されます。例えば、表皮系腫瘍は皮膚の最も外側の層である表皮から発生し、真皮系腫瘍は皮膚の中間層である真皮から発生します。
皮膚腫瘍の中には、良性のものと悪性のものがあります。良性腫瘍は通常、周囲の組織に浸潤したり転移したりすることはありませんが、悪性腫瘍(皮膚がん)は周囲の組織に浸潤し、さらに他の臓器に転移する可能性があります。
皮膚腫瘍の発生原因はさまざまですが、主な要因として以下が挙げられます。
- 紫外線への過度の曝露
- 遺伝的要因
- 免疫機能の低下
- 化学物質への曝露
- 慢性的な炎症や傷
皮膚腫瘍は、早期発見と適切な治療が重要です。特に悪性腫瘍の場合、早期に発見して治療を開始することで、予後が大きく改善する可能性があります。
そのため、定期的な自己チェックや皮膚科での検診を行い、皮膚に異常な変化を感じた場合は速やかに医療機関を受診することが推奨されます。
良性腫瘍と悪性腫瘍の違い
皮膚腫瘍には、良性と悪性の2種類があります。これらは見た目だけでは判断が難しいため、専門医による診断が重要です。ここでは、良性腫瘍と悪性腫瘍の主な違いについて解説します。
まず、成長の速さに違いがあります。良性腫瘍はゆっくりと成長し、ある程度の大きさで止まることが多いです。一方、悪性腫瘍は急速に成長し、短期間で大きくなる傾向があります。
次に、周囲への広がり方が異なります。良性腫瘍は周囲の組織を押しのけるように成長しますが、悪性腫瘍は周囲の組織に浸潤し、破壊しながら広がっていきます。
形状にも特徴があります。良性腫瘍は比較的形が整っていることが多いですが、悪性腫瘍は不規則な形状を示すことが多いです。
色調も重要な違いの一つです。良性腫瘍は均一な色調であることが多いのに対し、悪性腫瘍では複数の色が混在していたり、色むらがあったりすることがあります。
痛みや出血の有無も見分けるポイントです。良性腫瘍では通常、痛みや出血はありませんが、悪性腫瘍では痛みを伴ったり、容易に出血したりすることがあります。
最後に、転移の有無が大きな違いです。良性腫瘍は転移しませんが、悪性腫瘍は他の臓器に転移する可能性があります。
少しでも気になる変化があれば、早めに専門医を受診することが大切です。
発生頻度と年齢別の特徴
皮膚腫瘍は、比較的頻度の高い腫瘍の一つです。2019年の統計によると、日本では年間約25,000例の新規皮膚腫瘍が診断されています。これは人口10万人あたり20例程度の発生率に相当します。
性別で見ると、男性が12,815例、女性が12,432例とほぼ同程度の発生数となっています。人口10万人あたりの罹患率では、男性が20.9例、女性が19.2例と、わずかに男性の方が高い傾向にあります。
年齢別の特徴を見ると、皮膚腫瘍は高齢になるほど発生リスクが高まる傾向があります。特に70歳以上の年齢層で急激に罹患率が上昇します。具体的には以下のような傾向が見られます。
- 50歳未満:比較的低い罹患率
- 50〜69歳:徐々に罹患率が上昇
- 70歳以上:急激な罹患率の上昇
例えば、80〜84歳の年齢層では、人口10万人あたりの罹患率が200を超えており、若年層と比べて10倍以上の発生リスクがあることがわかります。
この年齢による発生リスクの違いは、長年の紫外線暴露や加齢に伴う免疫機能の低下などが影響していると考えられています。そのため、若い頃からの日光対策や定期的な皮膚チェックが重要となります。
代表的な皮膚腫瘍の種類
表皮系腫瘍(基底細胞癌、扁平上皮癌など)
表皮系腫瘍は、皮膚の最外層である表皮から発生する腫瘍のことを指します。代表的なものとして、基底細胞癌と扁平上皮癌があります。これらは皮膚がんの中でも比較的頻度が高く、早期発見と適切な治療が重要です。
基底細胞癌は、表皮の最下層にある基底細胞から発生する悪性腫瘍です。以下のような特徴があります。
- 好発部位:顔面(特に鼻や頬)、頭部、首筋など日光暴露部位
- 外観:真珠様の光沢を持つ隆起性病変や潰瘍を伴うことも
- 性質:転移はまれですが、局所破壊性が強い
一方、扁平上皮癌は表皮のケラチノサイトから発生し、以下のような特徴を持ちます。
- 好発部位:顔面、耳介、手背など慢性的な日光暴露部位
- 外観:鱗屑を伴う紅斑や潰瘍を形成することも
- 性質:転移の可能性があり、進行すると生命に関わる
これらの腫瘍は、長年の紫外線暴露や慢性的な炎症、免疫抑制状態などが発生リスクを高めます。早期発見のためには、定期的な自己チェックと皮膚科専門医による診察が重要です。
治療法としては、外科的切除が第一選択となりますが、腫瘍の大きさや部位、患者さんの全身状態などに応じて、放射線療法や光線力学療法などが選択されることもあります。
皮膚がんの予防には、日常的な紫外線対策が欠かせません。日焼け止めの使用や帽子の着用、日中の外出を控えるなどの対策を心がけましょう。また、気になる皮膚の変化があれば、早めに専門医を受診することをおすすめします。
真皮系腫瘍(メラノーマ、脂肪腫など)
真皮系腫瘍は、皮膚の真皮層から発生する腫瘍の総称です。この種類の腫瘍には、悪性のメラノーマや良性の脂肪腫などが含まれます。
メラノーマは、メラニン細胞から発生する悪性腫瘍で、皮膚がんの中でも特に注意が必要です。日本人には比較的まれですが、近年増加傾向にあります。特徴として以下が挙げられます。
- 色調の変化(黒色や茶色、時に赤や青など)
- 形の非対称性
- 境界線の不規則さ
- 大きさの変化(6mm以上に拡大)
早期発見が重要で、上記の特徴がある場合は速やかに皮膚科専門医の診察を受けることをおすすめします。
一方、脂肪腫は良性の腫瘍で、皮下脂肪組織から発生します。特徴は以下の通りです。
- 柔らかい触感
- 可動性がある
- 痛みを伴わないことが多い
- ゆっくりと成長する
脂肪腫は通常悪性化することはありませんが、美容上の問題や大きくなることによる不快感がある場合は、外科的に切除することができます。
その他の真皮系腫瘍として、血管腫や神経線維腫なども挙げられます。これらの腫瘍は、それぞれ血管や神経組織から発生し、良性のものが多いですが、まれに悪性化することもあります。
真皮系腫瘍の診断には、視診や触診に加えて、ダーモスコピー検査や皮膚生検が有用です。治療法は腫瘍の種類や悪性度によって異なりますが、外科的切除が基本となることが多いです。
付属器系腫瘍(汗腺腫瘍、毛包腫瘍など)
皮膚には様々な付属器が存在し、それらから発生する腫瘍を付属器系腫瘍と呼びます。代表的なものには汗腺腫瘍と毛包腫瘍があります。
汗腺腫瘍には、エクリン汗腺由来とアポクリン汗腺由来のものがあります。エクリン汗腺腫瘍の代表例としては、エクリン汗孔腫があります。これは主に手掌や足底に発生する良性腫瘍で、小さな半透明のドーム状隆起として現れます。一方、アポクリン汗腺由来の腫瘍には、乳房外パジェット病があります。これは主に高齢者の外陰部や肛門周囲に発生し、湿疹様の症状を呈します。
毛包腫瘍には、毛包上皮由来のものと毛包間質由来のものがあります。前者の例として毛包腫があり、顔面や頭部に好発する良性腫瘍です。後者には毛包性線維腫があり、主に顔面に発生する良性腫瘍です。
これらの付属器系腫瘍の多くは良性ですが、まれに悪性化することがあります。例えば、汗腺がんや毛包がんなどが挙げられます。これらは非常にまれで、診断や治療に専門的な知識が必要となります。
付属器系腫瘍の治療は、良性の場合は経過観察や外科的切除が主となります。悪性の場合は、腫瘍の大きさや浸潤の程度に応じて、広範囲切除やリンパ節郭清が必要となることがあります。また、進行例では放射線療法や化学療法が検討されますが、希少がんであるため標準的な治療法が確立されていない場合もあります。
早期発見・早期治療が重要であるため、皮膚の異常を感じたら速やかに皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。
皮膚腫瘍の予防と日常のケア
日光対策の重要性
皮膚腫瘍の予防において、日光対策は極めて重要です。太陽光に含まれる紫外線は、皮膚に深刻なダメージを与え、皮膚がんのリスクを高める主な要因となります。特に幼少期からの対策が重要で、子供の頃の過度の日光曝露は、将来の皮膚がん発症リスクを大きく増加させます。
効果的な日光対策には、以下のような方法があります。
日焼け止めの使用
- SPF30以上の製品を選ぶ
- 外出20分前に塗布
- 2時間おきに塗り直す
- 水泳後やタオルで体を拭いた後も再塗布
適切な服装
- 帽子の着用で顔や首を保護
- 長袖シャツや長ズボンで肌の露出を減らす
- UVカット機能付きの衣類を選ぶ
日光の強い時間帯を避ける
- 10時〜14時頃は特に注意
- 日陰を利用する
- 屋内で過ごす時間を増やす
- サンベッドの使用を避ける
- 人工的な紫外線も危険
- 皮膚がんリスクを高める
これらの対策を日常的に実践することで、皮膚へのダメージを最小限に抑えることができます。また、定期的な自己チェックも重要です。肌の変化に気づいたら、すぐに専門医に相談しましょう。
日光対策は、皮膚の健康を守るだけでなく、早期老化の予防にも効果があります。美しく健康な肌を保つためにも、日々の日光対策を習慣化することが大切です。
定期的な自己チェックの方法
皮膚腫瘍の早期発見には、定期的な自己チェックが非常に重要です。月に1回程度、全身の皮膚を丁寧に観察する習慣をつけましょう。以下に効果的な自己チェックの方法をご紹介します。
明るい場所で全身を確認
十分な明るさのある場所で、全身の皮膚を観察します。特に日光の当たりやすい部位は注意深くチェックしましょう。
鏡を活用した観察
大きな鏡を使って、正面だけでなく背中や側面も確認します。手鏡を併用すると、より細かな部分まで観察できます。
体の部位別チェックポイント
- 顔:額、鼻、頬、耳の周り
- 頭皮:髪の分け目や生え際
- 首周り:前面、側面、後ろ
- 上半身:胸、腹部、背中、わきの下
- 腕:上腕、前腕、手の甲と手のひら
- 下半身:お尻、太もも、ふくらはぎ
- 足:足の甲、足裏、指の間
触診によるチェック
皮膚の変化を目で見るだけでなく、指で軽く触れて硬さや凹凸を確認します。特にリンパ節のある部位(わきの下や太ももの付け根など)は注意深く触診しましょう。
記録をつける
気になる部位は写真を撮るなどして記録し、経過を追えるようにします。変化が見られた場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
定期的な自己チェックを習慣化することで、皮膚の変化に早く気づくことができます。少しでも気になる点があれば、躊躇せずに医療機関を受診することが大切です。
生活習慣の改善
皮膚がんの予防や再発防止のために、日々の生活習慣を見直すことが大切です。以下に、皮膚の健康を維持するための重要なポイントをご紹介します。
紫外線対策の徹底
外線は皮膚にダメージを与える要因の一つです。外出時は以下の対策を心がけましょう。
- 日焼け止めを適切に使用する(SPF30以上、PA+++以上を推奨)
- 帽子や日傘を活用し、直射日光を避ける
- 長袖や長ズボンを着用し、肌の露出を減らす
バランスの取れた食事
抗酸化作用のある食品を積極的に摂取しましょう。
- ビタミンC:柑橘類、キウイ、ブロッコリーなど
- ベータカロテン:にんじん、かぼちゃ、ほうれん草など
- リコピン:トマト、スイカ、ピンクグレープフルーツなど
適度な運動
適度な運動は免疫力を高め、皮膚の健康維持に役立ちます。
- ウォーキングや軽いジョギングを週3回程度
- ストレッチや軽い筋トレを毎日10分程度
十分な睡眠とストレス管理
質の良い睡眠とストレス軽減は、皮膚の回復と健康維持に不可欠です。
- 7-8時間の睡眠を心がける
- 瞑想やヨガなどのリラックス法を取り入れる
定期的な自己チェックと検診
早期発見・早期治療のために、自己チェックと定期検診を習慣づけましょう。
- 毎月1回の自己チェック
- 年1回以上の皮膚科検診
これらの生活習慣の改善を継続することで、皮膚の健康維持に寄与する可能性があります。
まとめ:早期発見・早期治療の重要性
皮膚腫瘍、特に皮膚がんにおいては、早期発見・早期治療が非常に重要です。皮膚は外から見える臓器であるため、自分で異変に気づきやすいという特徴があります。しかし、一見して良性に見える皮膚の変化が、実は悪性腫瘍である可能性もあります。
例えば、以下のような症状が長期間続く場合は要注意です。
- 治りにくい「いんきんたむし」のような症状
- なかなか消えない「内出血」のような跡
- 改善しない「アトピー性皮膚炎」様の湿疹
これらの症状は、それぞれ以下のような悪性腫瘍の可能性があります。
- 乳房外パジェット病
- 皮膚血管肉腫
- 菌状息肉症
これらの皮膚がんは、早期発見と治療が推奨されます。一方で、発見が遅れると、リンパ節や内臓への転移リスクが高まり、生命に関わる危険性も出てきます。
皮膚の変化に気づいたら、以下の対応を心がけましょう。
- 自己判断せず、速やかに皮膚科を受診する
- 症状が1ヶ月以上改善しない場合は再度受診する
- 定期的に全身の皮膚をチェックする習慣をつける
また、皮膚がんの予防として、日々の紫外線対策や生活習慣の改善も重要です。早期発見・早期治療は、皮膚がんと向き合う上で最も効果的な方法です。自分の身体に関心を持ち、些細な変化も見逃さない意識を持つことが大切です。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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皮膚の腫瘍をチェック!ほくろの種類と注意したい変化・皮膚の健康管理
皮膚の表面に見られるほくろは、多くの人にとっては日常的な存在です。
しかし、ほくろは単なる小さな皮膚のマークでなく、時に健康に関する大切な情報を教えてくれることもあります。
こちらでは、ほくろの種類と注意したい変化やサインについて、またほくろがある皮膚の健康管理について解説します。
ほくろの種類と注意したい変化・サイン
ほくろの主な種類
Miescher(ミーシャー)母斑(Miescher nevus)
皮膚に現れる一種の良性のほくろで、通常は皮膚の表面にある直径1センチ程度の小さな丸い斑点です。
黒色または茶色をしており、皮膚の表面に平坦に存在します。
単一の斑点として現れますが、場合によっては複数の小さな斑点としても現れることがあります。
顔や首、胸、背中などの体の様々な部位に現れます。
Unna(ウンナ)母斑(Unna nevus)
でこぼこした形が特徴的な良性ほくろの一種で、比較的一般的です。
皮膚の表面に現れ、色は褐色または黒色で、直径が1センチ前後の小さなほくろです。
特に顔や首の周りに現れることが多く、上腕や太ももにも見られます。柔らかくふくらんでいるのが特徴です。
Clark(クラーク)母斑(Clark nevus)
皮膚の表面に存在する一般的な良性ほくろで、茶色または黒色をしており、直径は1センチ以下であることが多く、色が均一、または中心が濃く外側に向かって徐々に薄くなるのが特徴です。
手のひらや足の裏を含め、全身に見られます。
Spitz(スピッツ)母斑(Spitz nevus)
子供や若者に多く見られ、60歳以上の高齢者では稀です。
早期のメラノーマとの判別が困難な場合があり、以前は若年性メラノーマとも言われていました。
顔や四肢をはじめ全身どこにでもでき、色は黒褐色や赤褐色、淡褐色など様々です。
通常良性ですが、急に大きくなるなど変化がある場合は、メラノーマと見分けるためにクリニックで診断・生検を行うことが大切です。
皮膚の悪性腫瘍「メラノーマ」について
メラノーマは皮膚がんの一種で、悪性黒色腫と言われます。
ほくろのように見えますが、良性の一般的なほくろとは異なり、非常に不規則な形状、異常な色、不均一な境界線を持ち、急速に変化することがあります。
メラノーマは早期発見・適切な治療が重要です。
【メラノーマの自己チェック方法】
メラノーマは自己チェックや予防策を通じて、早期に発見が可能です。
メラノーマの早期発見につながる自己チェックの方法を簡単に紹介します。
ABCDEルール
このルールは下記の頭文字を表しています。
- Asymmetry(非対称性)
- Border(境界)
- Color(色)
- Diameter(直径)
- Evolution(変化)
自己チェック時にこれらの要素を確認しましょう。
形が対称でなくいびつ、境界が不規則で輪郭がぼけている、色の濃淡が不均一、直径が6mm以上、急に変化(拡大)している場合は注意が必要です。
全身チェック
手鏡を使って全身を慎重にチェックし、特に日光にさらされる部位やほくろの多い部分に注意を払いましょう。
ほくろと皮膚腫瘍の関連性
ほくろがある場所や変化には注意が必要です。
悪性ほくろであるメラノーマは、ほくろから発生することがあり、早期発見が重要です。
急激な変化、非対称性、不均一な色、直径が6mm以上のほくろは、病院で診察を受けるべき兆候です。
注意したいほくろの変化
ほくろは時間の経過とともに変化することがあります。
変化に気をつけることは、皮膚の健康を保つために極めて重要です。
以下はほくろの変化に注意すべきサインです。
確認項目 | 注意したい変化 |
---|---|
サイズ | ほくろが急激に大きくなる場合・直径が6mm以上になる場合 |
形状 | ほくろの形状が不規則に変わる場合・特に凹凸や境界線の乱れが見られる場合 |
色 | ほくろが異常な色(特に黒や深紅色)を呈する場合・色が均一でない場合 |
境界線 | ほくろの境界線が不均一でぼんやりとした場合・特にほくろの周囲に色素の広がりが見られる場合 |
痛みやかゆみ | ほくろが痛む、かゆい、出血する場合 |
ほくろの変化に気付いた場合、専門医の診断が不可欠です。
早期の診断と治療は、悪性ほくろや皮膚がんのリスクを軽減するために極めて重要です。
ほくろがある皮膚の健康管理について
ほくろがある皮膚の健康管理は、早期発見と予防を強化し、皮膚がんなど悪性腫瘍のリスクを低減するのに役立ちます。
自己チェックと専門医のアドバイスを組み合わせ、皮膚の健康を守りましょう。
定期的なほくろの自己チェック
自分自身で定期的なほくろの自己チェックを行いましょう。
ほくろの変化や異常を見つけるのに役立ちます。
注意すべき変化には、ほくろの形状、色、大きさ、境界の不規則性、かゆみ、出血、痛みなどが含まれます。
日光からの保護
ほくろは紫外線からのダメージを受けやすいため、日焼けから皮膚を保護することが重要です。
帽子、肌の露出が少ない衣服、日焼け止めなどで紫外線対策をしましょう。
物理的な刺激を減らす
洗顔やスキンケア、メイクなど、皮膚やほくろを強くこすったり引っ張ったり刺激を与えると、メラニン色素が多く分泌されるため、刺激を与えないようにやさしく丁寧にお手入れすることが大切です。
食事と健康的な生活習慣
バランスの取れた食事、十分な水分摂取、適度な運動など、健康的な生活習慣を維持しましょう。
これはほくろの有無にかかわらず、健やかな肌の基本です。
家族歴の確認
家族にほくろが多い方や皮膚がんの方がいる場合、遺伝的な要因が関与している可能性があるため、確認しておくことをおすすめします。
医師の診察
不安定なほくろ、変化があるほくろ、または新しく現れたほくろがある場合、医師に相談しましょう。
診察を行い、必要に応じて生検を行うことがあります。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
ほくろの診察/治療について専門医が徹底解説
ほくろについて
色や形、膨らみの有無など見た目が様々なほくろですが、稀に悪性のものが含まれるため注意が必要です。特に「急にできた」「大きくなった」「色や形が変わっている」場合は、皮膚がんの可能性を疑います。こういった特徴がある場合は、お早めにご相談ください。もちろん見た目が気になる方も一度受診してみることをおすすめします。
こんな症状はありませんか?
- 急にシミやほくろができた
- シミやほくろのサイズが急に大きくなった
- シミやほくろの色や形が変わった
- ほくろの色が変だったり濃い色をしている
- ほくろの形状が丸くなく歪な形をしている
- ほくろと皮膚の境目がにじんでいて色が染み出している
これらは皮膚がんに多く見られる特徴です。気付いたら、なるべく早めに受診してください。
ほくろの診療
ほくろの診療で何より大切なことは患者様からお伺いする症状や状況です。そのため、当院ではじっくりと患者様からお話をお伺いするようにしています。問診後に検査を行います。ほくろが悪性であるという疑いが強い、リスクが高いと判断した場合には、手術で切除し病理検査を行うことで診断が確定します。ほくろが悪性だった場合には、健康保険が適用されます。
ほくろの治療
ほくろの治療では綺麗な仕上がりを心がけています。そのため、患者様の症状や状況に合わせた適切な治療法をご提案します。 ほくろは、そのほとんどが皮膚の深い部分にあるメラニン色素でできています。盛り上がったほくろを含め、ほとんどのケースではレーザー治療が有効です。
ただし、レーザー治療は、数ヶ月おきに複数回受ける必要があるため、時間がかかります。さらにほくろが悪性だった場合はレーザーは有効ではありません。
重要なのは、客観的な情報だけでなく、患者様のご希望をしっかり伺った上で、最適な治療を行うことだと当院では考えています。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。