皮膚がんとは?原因や種類・見分け方から治療法まで解説!

「最近ホクロが大きくなってきた」
「以前はなかったシミが広がってきた」

上記の症状で、自分が皮膚がんではないかと、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。他の疾患と症状が似ていることから、見分けがつきにくいのが皮膚がんです。

本記事では、皮膚がんの種類や見分け方を解説しています。ぜひお役立てください。

 

皮膚がんとは

皮膚がんとは、皮膚の細胞が傷ついて変異することで、細胞が無秩序かつ無制限に増殖する状態のことです。

増殖にともなって、周辺の正常な皮膚組織を破壊していきます。皮膚がんは、皮膚に症状が出るため、臓器にできるがんより見た目で発見しやすいといえるでしょう。ただ、やっかいなのは、痛みなどの自覚症状がないため、ついつい放置してしまうことです。

皮膚がんの初期症状は小さなホクロや湿疹、できものと似ています。一般の軟膏を塗っても全然治らない、急激に大きくなるなどで、がんとわかる場合があります。

皮膚がんは放置していると、他の箇所に転移することがあるため注意が必要です。最初に発症した患部より離れた箇所に転移してしまうこともあり、内臓に転移した場合、最終的に死にいたるケースがあります。

皮膚がんの主な原因

皮膚がんの原因はさまざまですが、主に紫外線の影響によるものが大きいとされています。他には、衣服による皮膚への摩擦などの慢性的な刺激や、ヒトパピローマウイルスなどの皮膚のウイルス感染によるものです。

ヒトパピローマウイルスは、主に性交渉によって感染するウイルスです。

また、火傷や外傷などの過去の傷跡から発生するケースや、皮膚がんではない皮膚疾患が変異し、がんになることがあります。

他には、放射線による影響やヒ素などの化学物質による影響、遺伝的に皮膚がんの発生率が高くなる色素性乾皮症による場合です。わきの下に多く存在するアポクリン汗腺の細胞ががん化する場合もあります。

このように皮膚がんの原因は、いろいろなケースが考えられます。

皮膚がんの主な種類

皮膚がんの主な種類は以下のとおりです。

  •  ・基底細胞がん
  •  ・悪性黒色腫
  •  ・有棘細胞がん
  •  ・ボーエン病
  •  ・パジェット病
  •  ・血管肉腫

 

それぞれの特徴を解説していきます。

基底細胞がん(きていさいぼうがん)

特徴 内容
肌の色など見た目 ・黒色か黒褐色
・平面であるが、盛り上がっている場合もある
・潰瘍化することがある
主な原因 ・紫外線
・放射線
好発部位 ・上口唇部
・外鼻部
・頬部
・下眼瞼部
好発年齢 70代以上
自覚症状 ほとんどなし

基底細胞がんは、表皮の一番下にある基底細胞から発症するがんで、皮膚がんの中では最も多いとされています。転移することは少ないですが、再発しやすい特徴があります。

好発年齢は70代以上ですが、40〜60代にも多い疾患です。

悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)

特徴 内容
肌の色など見た目 ホクロと似ているが、以下の違いがある。
・形がいびつ
・境目が明確でない
・色がまばら
主な原因 明確になっていないが、以下が原因といわれている
・紫外線
・加齢
好発部位 ・手のひら
・足の裏
・爪
・陰部
・口腔部
・鼻腔部
好発年齢 60〜70代
自覚症状 ほとんどなし

悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラノサイトと呼ばれるメラミン色素を作る細胞が、がんになったものです。日本での発症は、10万人に1〜2人程度と少なめです。

症状が早く進むため、治療しても転移するなど再発するケースがあります。発症年齢は幅広く、若い年代においても発症します。

有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)

特徴 内容
肌の色など見た目 ・赤みを帯びている
・わずかに盛り上がる
・潰瘍化してじゅくじゅくする
主な原因 ・紫外線
・皮膚摩擦
・やけどの跡
・放射線
好発部位 ・顔
・首
好発年齢 70歳以上
自覚症状 ・ほとんどなし
・まれに臭気を発する

有棘細胞がんは、表皮に存在する有棘細胞が、がんになったものです。転移していなければ、切除によって治療でき、再発することもほとんどないでしょう。

潰瘍化してじゅくじゅくするため、湿疹と勘違いする人も少なくありません。

ボーエン病

特徴 内容
肌の色など見た目 ・円形もしくは楕円形
・赤色もしくは茶色
・患部の境界は明確
・かさぶたができることはある
・患部が盛り上がることがある
主な原因 ・紫外線
・ヒトパピローマウイルス
・ヒ素
好発部位 ・体幹部
・四肢
・陰部
好発年齢 60歳以上
自覚症状 ほとんどなし

ボーエン病は、有棘細胞がんと同じく、表皮の奥にある有棘層で発生するがんですが、表皮にとどまった状態を指しています。進行は遅く、真皮に届いていなければ転移しません。

パジェット病

特徴 内容
肌の色など見た目 ・湿疹のようにみえる
・赤色(他に、茶色や白色)
・進行するとしこり、潰瘍化
主な原因 明確にはなっていないが、以下が考えられる
・皮膚への刺激
・遺伝
・女性ホルモンの影響
好発部位 乳房外パジェット病
・陰部
・肛門の周辺
・脇の下
乳房パジェット病
・乳房
好発年齢 ・乳房外パジェット病は70〜80代
・乳房パジェット病は特になし
自覚症状 ・ほとんどなし
・かゆみを感じることがある

パジェット病は、アポクリン腺と呼ばれる、汗器官に関する細胞が、がんになったものです。転移していなければ、表皮の切除で治療できます。

血管肉腫(けっかんにくしゅ)

特徴 内容
肌の色など見た目 ・初期においては内出血やあざのように見える
・進行すると次第に潰瘍になる場合や、出血をともなうことがある
主な原因 明確になっていないが、以下が考えられる
・外傷
・放射線
・紫外線
好発部位 ・頭部
・顔
好発年齢 特になし、高齢者に多い傾向
自覚症状 ・ほとんどなし
・進行すると痛みを感じることがある

血管肉腫は、血管の内側にある細胞が、がんになったものです。発症するのは少数ですが、進行が早いため注意が必要です。

臓器など含め全身にでき、発症全体のうち半数は皮膚での発症です。

皮膚がんと間違えやすい他の疾患

皮膚がんは特に初期のうちは、ほくろや湿疹などと区別がつきにくいことがあります。ホクロや湿疹など、他の疾患に間違えやすいがんは、以下のとおりです。

間違えやすい症状の種類 がんの種類
ホクロと間違えやすい ・悪性黒色腫(メラノーマ)
・基底細胞がん
湿疹と間違えやすい ・ボーエン病
・パジェット病
・有棘細胞がん
内出血やあざと間違えやすい 血管肉腫

症状により、イボやシミに見える場合もあります。

皮膚がんは、目で確認できるため、他のがんより見つけやすいです。しかし、他の疾患と思い込み放置することで進行し、臓器などに転移してしまうケースがあります。

皮膚がんセルフチェック

皮膚がんのセルフチェック方法を解説します。当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。

  • ほくろのような状態の場合
    •  ・形が左右対称でない
    •  ・患部の境界がぼやけている
    •  ・色が均等でなくまばらである
    •  ・表面が凸凹している
    •  ・潰瘍化している
    •  ・患部が盛り上がってきた
    •  ・急に大きくなってきた

     

  • 湿疹のような状態の場合
    •  ・やけど跡や傷跡に湿疹ができた
    •  ・赤い斑点状もしくは一部白っぽく色が抜けた状態である
    •  ・湿疹用の塗り薬を塗っても2週間以上経っても治らない
    •  ・だんだん範囲が広がってきた
    •  ・表面がかさかさで固い
    •  ・あざや内出血のような状態がいつまでも治らない
    •  ・悪臭がある

     

    がん以外の疾患でも、上記症状に当てはまることはあります。しかし、がんの可能性もあるため、該当する項目があった場合は、一度診察を受けることをおすすめします。

    皮膚がんを放置するとどうなる?

    皮膚がんを放置すると進行し、転移するおそれがあります。皮膚がんも他のがんと同じように、進行によってステージ1〜4があります。

    ステージ1〜4における分類は以下のとおりです。

    段階 状態 治療法 5年以内生存率(参考値)
    ステージ1 ・皮膚に止まっている状態
    ・大きさ2cm以下
    ・手術による切除 95〜100%
    ステージ2 ・転移なし
    ・大きさは2cm以上
    ・手術による切除
    ・場合により放射線療法
    70〜80%
    ステージ3 ・リンパ節に転移がある
    ・大きさは4cm以上もしくは深部
    ・手術による切除
    ・放射線治療
    ・場合により化学療法
    50〜60%
    ステージ4 ・臓器に転移、患部より遠い箇所にも転移 ・手術による切除
    ・放射線治療
    ・化学療法
    ・免疫療法
    10%前後

    生存率は、あくまで一つの参考としてください。症状やがんの種類により生存率は異なります。

    治療法における化学療法とは、主に抗がん剤治療です。内服と点滴があります。

    免疫療法とは、患者から取り出した免疫細胞を増殖させ、再度体に戻すことで免疫力を高める方法です。放射線療法は、放射線を照射し、がん細胞を死滅させる治療法です。

    少しでも不安を感じたら早めに診察を

    がんは進行するに従い、対処が難しくなります。皮膚から内臓へ転移した場合、最終的に死に至るおそれがある疾患です。少しでも不安を感じたなら、早めに診察を受けたほうが良いでしょう。

    皮膚がんの治療は、皮膚科で行うのが一般的ですが、他の選択肢として形成外科もあります。形成外科では、見た目や機能面などの、がん手術後の再建手術もしています。

    当院では、形成外科と皮膚科の専門医による、きれいな仕上がりの治療が可能です。皮膚がんは、顔など目立つ箇所にできることも多いため、症状に不安があるときは、遠慮なく相談してください。

    院長紹介

    日本形成外科学会 専門医 古林 玄

    東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

    私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

    がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

    この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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