大腿部の脂肪腫治療/日帰り
本日の症例は大腿部の脂肪腫です。約10㎝程の大きな腫瘍です。動画は下に載せています。
脂肪腫についてはこちらを参照して下さい。
脂肪腫が背部にあるか腹側にあるかで取りやすさが変わります。
背部か腹側の大きな差は寝るときに圧迫されているか、されていないかです。脂肪腫は背部や圧力が加わる場所にあると、長い年月を掛けて組織の破壊が起こります。
それによる修復と破壊を繰り返し、腫瘍は癒着が強くなってしまいます。そうなると、手術時に切開範囲を広げたり、癒着部を切除する際に出血があったりして、血腫の可能性も上がってしまいます。要は合併症の確率が上がり、傷も大きくなります。
同様に腫瘍をマッサージしている人も癒着が強くなります。そのため、出来る限り腫瘍をマッサージするのはやめてください。
今回の腫瘍は体の表側にあり、刺激があまり加わっていないため、癒着は少なそうな印象です。
腫瘍に切開ラインは大きくデザインしましたが、実際の切開範囲は2,5㎝程です。
癒着が少ない場合には指が入れば、容易に摘出が出来ます。
腫瘍を指で剥離するのは出来るだけ無理な切除を避け、出血を少なくするためです。
今回も容易に摘出することが出来ました。
創部は念のため血腫予防のために16Gサーフローを挿入します。
5-0吸収糸で創部を縫合して、手術を終了しています。
形成外科専門医 古林玄
首の脂肪種治療/日帰り
今日の症例は脂肪腫です。 脂肪腫の治療や検査についてはこちらに詳しく載せています。動画は下に載せています。
脂肪腫の大きさは約3㎝大で皮膚科さんで粉瘤と言われ当院へ来院された患者様です。脂肪腫によっては硬さがしっかりしている場合や膨らみがある場合には粉瘤と間違えることもあるかもしれません。
エコーを術前にすることで腫瘍の性状や血流を確認することで粉瘤などと鑑別することが出来ます。
腫瘍直上に切開ラインをデザインします。患者様の術後の傷を考慮して、出来るだけ小さい傷で切除するように試みます。
粉瘤ぼ場合には中身を抜くことで腫瘍を小さくしてから切除できるため、小さな傷で摘出することが出来ますが、脂肪腫は少しだけ切らなければなりません。
局所麻酔を行い、メスで切開を行います。
麻酔も脂肪腫の場合には切開部位をするだけで摘出することが出来ます。
ヒトは皮膚に感覚はありますが、脂肪の中は鈍感なため、あまり多く打つ必要はありません。しかし筋肉や血管には神経が通っているため、深い部位や大きな腫瘍の場合には奥に麻酔を打つことも非常に大事になります。筋肉痛はよく言いますが、『脂肪痛いわー』という人がいないのは脂肪に神経がほとんど通っていないためです。
なので大概の脂肪腫は全身麻酔ではなくても十分に摘出出来ます。
今回の症例では癒着が強い部位がありましたが問題なく摘出することができました。一部出血している部位があったため、バイポーラを使用し、止血しています。
脂肪腫は比較的、血腫ができやすいため、16Gサーフローを挿入し、血抜きの管を挿入しています。これをドレーンといいます。
創部は5-0PDSで皮下のみの縫合としました。表皮縫合は皮下縫合のみでしっかりと傷を合わせることが出来れば必要ありません。
脂肪腫は徐々に大きくなってくるため、早めに切除するのをお勧めします。脂肪腫は背部にある場合、マッサージなどを行うと癒着が強くなり、切除が困難になります。また困難になると血腫もできやすくなり、合併症の確率もあがります。出来るだけ腫瘍を見つけた場合には触らないようにする方が良いです。粉瘤も触ってしまうと袋が破れて異物反応を起こし、炎症し始めます。触らぬ神に祟りなしです。
監修:形成外科専門医 古林玄
【脂肪腫】粉瘤と間違えやすい腫瘍の症状/治療法
脂肪腫とは
軟部腫瘍の中では最も頻度の高い良性腫瘍です。主に背部、肩周囲などの上半身に発生する事が多いです。また前額部(おでこ)や頚部にも比較的多く見られます。
症状
疼痛や炎症もないため、症状は特にないことが多いです。しかし、四肢などに多発する血管脂肪腫(angiolipoma)の場合には圧痛を伴う事があります。長い経過で腫瘍が急速に増大する場合には悪性を疑う必要があります。
診断
触診では柔らかく、可動性があります。深さや場所によって変わりますが、硬い場合には脂肪肉腫(悪性)や線維腫などを疑います。
大きいサイズの脂肪腫ではCTまたはMRIによる検査を行い、腫瘍の性状、周囲組織との関係、皮膜の有無、悪性所見の有無などを調べます。筋肉内にある場合には手術は難しくなるため、全身麻酔での手術を疑う必要があります。またエコーも非常に有用な検査で、深さ、腫瘍周囲の血管の有無、腫瘍が血管豊富な腫瘍ではないかなどを調べることが出来ます。
治療
手術による腫瘍摘出術が行われます。
術前にエコーや画像検査で手術の方針を決めます。基本的には大きさが10㎝未満、筋肉より上にある場合には、外来での手術が可能になります。筋肉内または下にある場合には出血が多く、痛みを伴う場合もあるため、入院での治療が必要になる場合があります。前額部にある場合には筋肉下にある場合がほとんどですが、ほとんどが外来での治療が可能です。また関節部位かそれ以外でも対応は変わるため、一概には決まってはいません。大きな脂肪腫の場合には悪性も考慮しなければならないため、術前に生検を行う場合もあります。
摘出した組織は病理検査に摘出します。
術後は血腫予防のため、創部にドレーンを挿入し、圧迫が必要になります。また運動や飲酒などの血流がよくなることも術後のトラブルになるため、控えて頂きます。
手術が難しくなったり、術後血腫が出来る場合の多くは、皮膚との可動性が悪く、腫瘍が周囲に癒着しているケースです。原因として考えられる事は、腫瘍が潰されたり、刺激を加えられることでの癒着が考えられます。場所で言うと、後頚部や背部、肩甲骨部位が比較的切除が難しくなる印象があります。就寝の際に枕や肩甲骨に潰されることで刺激が加わります。またマッサージをよくしているヒトも同様です。組織は潰されると、組織の破壊が起こり、その後には治癒が起こります。治癒は組織を瘢痕化させ、硬くします。その際に癒着が起こってしまいます。
前胸部や刺激の少ない部位は非常に手術がしやすく、小さい切開で腫瘍の切除が可能になります。見つけた際には触ったりマッサージをせずに早めの切除を心掛けましょう。
料金
手術は保険適応になります。
料金は大きさによって上下します。3㎝未満、3㎝から6㎝未満、6㎝以上に分けられます。
初診料、検査、手術を含め、大きさが6㎝以下だと、9000円から15000円ほどになります。腫瘍が6㎝を越えるものは17000円ほどになります。
また筋肉内または筋肉下だと軟部腫瘍扱いになり、軟部腫瘍摘出術となるため、30000円から40000円になります。
詳しくはお電話でご確認ください。
形成外科専門医 古林玄
おでこの脂肪腫治療/切開
今回は前額部の脂肪腫摘出です。下に動画も貼り付けています。
粉瘤と間違えて来院する患者様もいらっしゃいますが、脂肪腫は粉瘤とは全く別の腫瘍です。
カラダのどこにでも出来ますが、前額部、肩、後頚部に出来る事が多いです。原因ははっきりとは分かりませんが、脂肪腫には血管脂肪腫(angiolipoma)の良性のものから脂肪肉腫などの悪性のものまで存在します。6cm以上のものや筋肉内にあるものは悪性を考慮して切除する必要があります。
前額部には外骨腫という腫瘍も出来やすく、小さいものでは間違える場合があります。
術前のエコー検査で診断を行い手術を行いますが、エコーに慣れていないと、開けてビックリすることもあります。外骨腫であってもノミとツチさえあれば切除出来るので特に問題はありません。
正確な検査ではCTやMRI検査があげられます。分かりにくい腫瘍の場合には術前に画像検査をする場合もあります。
症例の続きです。
手術はオデコのシワに沿って切開を加えます。
腫瘍の直上に切開を加え、アプローチします。
前額部の脂肪腫で注意することは頭の感覚を支配する神経(眼窩上神経、滑車上神経)を傷つけない事、脂肪腫が前頭筋下にあり骨上にあることです。
腫瘍が神経と絡んでいる場合には、神経を切らないと腫瘍を取れないこともあり、術前に説明が必要になります。
腫瘍は骨上にある事がほとんどなので、慣れていない場合には筋肉上の腫瘍をずっとさがしてしまい、筋肉を大きく傷つけてしまう場合があります。腫瘍が見つけられず、筋肉を切除して終わる先生もいます。
腫瘍を切除した状態です。
創部を縫合し、手術を終了しています。
今回は中縫いだけで創部を縫合しています。
この辺りは形成外科でも賛否両論ありますが、中縫いだけで創部が綺麗にあった場合には、それが一番キレイになるとも言われています。外縫いは中縫いが合わなかったときに補助的に高さを合わせるためでもあるので、創部の高さが合っている場合には必要ないこともあります。また外縫いを強く縫いすぎると糸の痕が残ってしまう場合もあります。線路のような傷跡になります。中縫いだけで創部を合わせるのは高い技術が必要になります。
また吸収糸がいいのか、ナイロンのような吸収しない糸で縫うのがいいのかも答えは出ていません。患者様は吸収糸がいいと思い込んでいる場合もありますし、先生でも吸収糸がいいと考えている先生も多いですが、一概には言えません。これについてはまたお話します。
最後に動画を貼り付けておきます。
形成外科専門医 古林玄
背部にできた脂肪腫の治療について専門医が徹底解説
本日の症例は背部の12cm大の脂肪腫です。
かなり大きな腫瘍ですがMRI撮影を行い、良性の脂肪腫と判断したため、切除を行いました。
脂肪腫は大きいもの(6cm以上)では悪性腫瘍の可能性もあるため、十分に精査をする必要があります。
出来るだけ早く切除し、精査する必要があるのでお早めにご相談ください。
今回の症例では簡単に切除することが出来ましたが、骨の下にある場合や、後頸部、マッサージをよくしている患者さんは、組織が破壊され、色々な部分と癒着します。
そのため、非常に切除が難しくなり、血腫などが出来る可能性も上がります。
見つけた際には出来るだけ触らず、受診をお願いします。
形成外科専門医 古林玄