足の付け根にしこりや痛みを感じる疾患は何?治療方法や注意点を解説

足の付け根のしこりに関連する疾患はさまざまで、良性のものもあれば命にかかわる疾患のものもあります。
そのため、放置せずに早めに医療機関を受診することが大切です。

本記事では、足の付け根にできるしこりに関連する疾患やその治療方法について解説します。

足の付け根のしこりにどのような症状があるのか知りたい方や、何科を受診すべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

足の付け根(鼠径部)にできる良性のしこり

足の付け根にできる良性のしこりは以下のとおりです。

鼠経ヘルニア(脱腸)

鼠経ヘルニアは、腸などの臓器が外に飛び出す疾患で、一般的には脱腸と呼ばれます。

鼠径部にピンポン玉程度のふくらみが現れ、立っているときや力を入れたときに大きくなります。
横になったり、手で押したりすると引っ込むのが特徴です。

鼠経ヘルニアは放置していると症状が悪化し、鼠径部の痛みも増してきます。
脱腸したまま腸が詰まると腹膜炎を起こし、命にかかわる危険性もあるため治療が必要です。

Nuck(ヌック)管水腫

ヌック管水腫は、鼠径部にあるヌック管と呼ばれる場所に液体が溜まることでできるしこりです。
ヌック管は、本来1歳ごろまでに閉鎖する組織ですが、成人しても退化せず残っているケースがあります。
ヌック管水腫は女性に多く見られる疾患で、鼠経ヘルニアの症状とよく似ています。
大きくなったり小さくなったりと、大きさに変化があり、指で押しても鼠経ヘルニアのように引っ込まないことが特徴です。

動脈瘤

動脈瘤は、動脈の一部がふくれてこぶ状になった症状です。
動脈瘤が大きくふくらむと、こぶが目立つようになり、持続的な強い痛みを感じることがあります。

無自覚・無症状のまま大きくなり破裂すると、体内で大量出血し激しい痛みに襲われ、命を落とす危険もあります。
動脈瘤が破裂することで容態が急変し、一気に危険な状態に陥ることもあるため注意が必要です。

静脈瘤

静脈瘤は、静脈が伸びて数珠玉のように腫れあがる症状です。
症状はさまざまで、無症状の場合もあれば、痛みを伴う場合もあります。

静脈瘤は、ふくらはぎに発症することが多い症状ですが、足の付け根に発症することもあります。
足のむくみや、だるさが発症のサインです。
放置していても問題はありませんが、足の血管がボコボコと浮き出るため、見た目が気になる場合があります。

脂肪腫

脂肪腫は、皮下に発生する良性の腫瘍で、体のどこにでもできるしこりです。

はっきりとした原因はわかっていませんが、内容物は脂肪の塊で、肥満者に多いといわれています。
大きさは数mm程度のものから、10cm以上になるものまであります。

かゆみや痛みはなく、触ると柔らかいことが特徴です。
放置していても問題ありませんが、だんだん大きくなるため日常生活に支障をきたす場合があります。

粉瘤(アテローム)

粉瘤は、皮膚の下に皮脂や角質などの老廃物がたまった袋状の組織で、体のどこにでもできます。

初期の段階ではあまり目立たず、痛みも感じませんが、次第に大きくなったり独特なニオイを発したりする場合があります。
炎症を起こすと痛みを感じる場合もあるため、できるだけ早めの治療が望ましい腫瘤です。

足の付け根にできる悪性の可能性があるしこり

足の付け根にできる悪性の可能性があるしこりは以下のとおりです。

鼠径部リンパ節腫大

鼠径部リンパ節腫大は、リンパ節が腫れている状態のことを指します。
リンパ節が感染すると、炎症を起こし、痛みを伴います。
リンパ節腫大の考えられる原因は以下の3つです。

足の付け根にできたしこりの治療方法

足の付け根にできたしこりの治療方法を、症状別に紹介します。

鼠経ヘルニア(脱腸)

鼠経ヘルニアは、薬や運動療法では治療効果が得られず、自然に治癒することもないため手術以外に治療方法がありません。

鼠経ヘルニアは良性の病気ですが、長年放置すると嵌頓(かんとん)を引き起こし、緊急手術が必要になる場合があります。

そのため、身体への負担が少ない初期段階で治療することが大切です。

Nuck(ヌック)管水腫

ヌック管水腫は症状が軽ければ経過観察で問題ありませんが、子宮内膜症が関連している場合は治療が必要となります。

外科手術が必要で、鼠径部切開や腹腔鏡などの術式があります。
手術をすれば再発の可能性はほとんどありません。

動脈瘤

動脈瘤は、大きくなり破裂することで命に危険が及ぶため、予防のために切除しなければいけません。
破裂する危険性が低ければ経過観察となりますが、定期的に専門医を受診する必要があります。

静脈瘤

静脈瘤は、動脈瘤と異なり命にかかわる疾患ではないため、治療をしなくても問題はありません。
痛みがある場合や、見た目の問題から治療するケースがほとんどです。

治療方法は、外科手術や硬化療法、レーザーや高周波など多岐にわたります。
身体に負担の少ない治療方法を選択することが重要です。

脂肪腫

脂肪腫は、局所麻酔を行い外科手術で切除します。
内容物が液体ではないため、注射器などで吸い出すことはできません。

手術の際に取り残しがあると、再発するリスクがあるため完全に切除する必要があります。

粉瘤

粉瘤は、自然治癒せず、外用薬でも治療できないため外科手術が必要です。局所麻酔を行い、「くり抜き法」もしくは「切開法」という手術法で摘出します。

放置していると大きくなったり炎症を起こして痛みを伴ったりするため、早めの治療が最適です。
小さいうちに切除すれば、縫合した傷口も目立たずに済みます。

鼠径部リンパ節腫大

鼠径部リンパ節腫大の治療方法は、原因によって異なります。
自然に治るケースもありますが、炎症を抑える場合は、抗生剤や抗炎症剤を使用して治療します。
悪性の場合は、原因に合わせた治療をガイドラインに沿って行うのが一般的です。

症状 治療方法
鼠経ヘルニア(脱腸) 外科手術
Nuck(ヌック)管水腫 ・軽度の場合は経過観察
・子宮内膜症が関連している場合は外科手術
動脈瘤 ・基本的に外科手術が必要
・破裂の危険性がない場合は経過観察
静脈瘤 ・未治療でも問題なし
・治療を希望する場合は外科手術やレーザー治療など治療方法は多岐にわたる
脂肪腫 局所麻酔による外科手術
粉瘤 局所麻酔による外科手術
鼠径部リンパ節腫大 ・抗生剤や抗炎症剤
・悪性の場合はガイドラインに沿って治療

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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