耳の下のしこりは放置していても問題ない?しこりの種類や治療方法について解説

耳の下にできるしこりには、さまざまな種類があります。痛みを伴わないケースもあるため、放置している方も少なくないのではないでしょうか。

しかし、耳の下にできるしこりは悪性の可能性も考えられるため、できるだけ早めに医療機関を受診することが望ましいとされています。

本記事では、耳の下にできるしこりの種類や治療方法について解説します。注意点や、何科を受診すべきかも紹介しているので、ぜひ病院選びの参考にしてください。

耳の下にできる良性のしこり

耳の下にできる良性のしこりの代表例は以下のとおりです。

頸部嚢胞(けいぶのうほう)

頸部嚢胞とは、皮膚内に袋状の組織ができ、その中に液体がたまったしこりです。触ると柔らかいしこりがあり、炎症が起きると痛みを伴います。
悪性腫瘍ではありませんが、大きくなったり痛みを伴ったりする可能性があるため早めに治療をすることが望ましいしこりです。

粉瘤(アテローム)

粉瘤(アテローム)は、角質や皮脂などが溜まってできる袋状の組織です。
良性の腫瘍で、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれます。サイズは数mmのものから、10cm程度に大きくなるものまであります。

悪性ではありませんが、自然に治癒しないできものです。

初期の段階では特に問題はありませんが、細菌感染などで炎症を起こしたり化膿したりすると痛みを伴い、破裂すると独特のニオイを発します。
炎症がおさまって治ったように見えても、袋状の組織を取り除かない限り再発するため、早めに治療した方がよいできものです。

耳の下にできる悪性・悪性の可能性があるしこり

耳の下にできる悪性のしこり、もしくは悪性のしこりに病変する可能性のある症状は以下のとおりです。

リンパ節炎

リンパ節炎は、リンパ節がウイルスや細菌に感染し炎症を起こし、腫れと圧痛が起こる症状です。

耳の下(首の付近)にしこりができ、のどの痛みや鼻水・発熱を伴う場合もあります。
リンパ節炎そのものは悪性ではありません。
ただし、しこりが硬く2cm以上の大きさの場合は、がんの可能性もあるため注意が必要です。

耳下腺腫瘍

耳下腺腫瘍は、唾液腺にできる腫瘍です。唾液腺は、左右の顎の下にあります。
触るとしこりのような腫瘤がありますが、痛みがないケースがほとんどです。
耳下腺腫瘍は増殖が遅く、急激に大きくなることはありません。
良性であることが多い症状ですが、悪性(がん)に病変することもあるため注意が必要です。

耳下腺がん

耳下腺がんは、はじめにしこりのような腫瘤ができ次第に大きくなります。
症状が進行し、腫瘤が周りの組織に癒着すると、神経が圧迫され顔面神経麻痺を引き起こす場合があります。

以下のような症状が現れた場合は要注意です。

  •  ■顔の左右どちらかがうまく動かせない
  •  ■目をしっかり閉じられない
  •  ■口元から水がこぼれる
  • 通常、顔面神経麻痺は耳下腺がん以外の原因によるものですが、しこりがあり痛みを伴う場合は耳下腺がんの可能性も考えられます。

 

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耳の下にできるしこりの治療方法

耳の下にできるしこりの治療方法は以下のとおりです。

リンパ節炎

細菌感染の場合、抗生剤と抗炎症剤の内服、もしくは点滴で治療します。
通常は、1~2週間程度で回復します。

耳下腺腫瘍

耳下腺腫瘍は、薬で治療できないため外科手術が必要になります。
良性の場合でも徐々に大きくなり、悪性に病変する可能性もあるため、摘出するのが一般的です。

耳の前方から耳の後ろ、首の横のしわに沿ってS字に切開し、顔面神経を確認しながら、腫瘍を取り除きます。全身麻酔での手術が基本です。

頸部嚢胞

頸部嚢胞は、外科手術による嚢胞の摘出が一般的です。
炎症がある場合は、抗生剤などで腫れを抑えます。

嚢胞壁が薄いリンパ管腫の場合は、薬剤を注入する硬化療法を行う場合もあります。

粉瘤

粉瘤は薬で治療できないため、外科治療が行われます。

「くり抜き法」もしくは「切開法」という手術法で、組織をきれいに取り除きます。

耳下腺がん

耳下腺がんは、腫瘍と腺の部分切除、もしくは全摘出を行います。
顔面神経に転移している場合は、神経も切除し、神経移植を行うこともあります。
経過を見て、手術後に放射線治療や化学療法を行うケースもあります。

がんが転移している場合は、拡大手術が必要です。
耳下腺がんは、転移の仕方や再発のしやすさ、症状が進行するスピードが異なるため、症状にあわせた治療が行われます。

病名 治療方法
リンパ節炎 ・抗生剤と抗炎症剤の内服
・点滴
耳下腺腫瘍 ・全身麻酔による外科手術
頸部嚢胞 ・抗生剤などで炎症を抑えた後、全身麻酔による外科手術
粉瘤 ・局部麻酔による外科手術
・くり抜き法もしくは切開法で摘出する
耳下腺がん ・全身麻酔による部分切除、もしくは全摘出
・術後の経過次第で放射線治療や化学療法

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耳の下にしこりができたら何科を受診する?

しこりに痛みがあるのかないのかによって、適切な治療方法があります。症状に合わせて受診する病院を検討してください。

耳の下のしこりが痛い場合

耳の下のしこりが痛みを伴う場合は「耳鼻咽喉科」を受診しましょう。
耳の下が腫れる原因の多くは、耳下腺の病気です。

早い段階で適切な治療を行えば、重症化するリスクを抑えられます。
悪性の可能性もあるため、放置はしないようにしましょう。

耳の下しこりが痛くない場合

しこりに痛みがない場合は、「形成外科」を受診しましょう。
痛みがない場合は、粉瘤など良性のしこりであることが多いためです。

しこりを摘出するためには、外科手術が必須となります。
形成外科は外科手術を得意としているため、治療後の傷跡をできるだけ目立たなく縫合できます。

少しでも傷口を目立たなくするために、できるだけしこりが小さいうちに受診することをおすすめします。
当院では、悪性腫瘍が疑われる場合や全身麻酔が必要な場合は、提携している大学病院などを紹介しています。

耳の下にしこりができた際の注意点

耳の下にしこりができた際の注意点は以下のとおりです。

放置していても治らないケースが多い

耳の下のしこりは、放置していても自然に治らない症状が多いため、できるだけ早めに病院を受診しましょう。

本記事で紹介した症状のように、しこりの種類によっては大きくなったり、炎症を起こして痛みを伴ったりする場合もあります。

症状が軽い段階で治療を行えば、患者様の身体にかかる負担も少なく、完治も早くなります。

痛みがなくても悪性腫瘍の可能性もある

しこりに痛みを感じなくても、悪性腫瘍の可能性もあるため放置はしないようにしてください。

もともと良性のしこりの場合でも、悪性に転化する症状もあるため早めに医療機関を受診しましょう。

なかには、がんなどの大きな疾患の可能性もあります。
そのため、しこりに気づいたにもかかわらず、放置することはおすすめできません。

まとめ

耳の下に気になるしこりができた場合、できるだけ早めに耳鼻咽喉科もしくは形成外科を受診しましょう。

大きな病気が潜んでいる可能性もあるため、絶対に放置してはいけません。
当院では、患者様の容態をしっかり伺い、検査の結果と症状に合わせた治療を行います。

早めに治療をすることで患者様の負担も軽くなるため、気になるしこりやできものができた方は、当院へご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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