ブログ

2021.02.21

炎症性の粉瘤治療について専門医が徹底解説

背部の炎症性粉瘤です。

この症例では既に皮膚の破壊が起こり中身が出てきてしまっています。

カラダは自分の中に異物があると何とかそれを除去しようと、異物反応を起こします。感染によって炎症が起こっていると考える先生が多数ですが、実は異物反応がほとんどだと言われています。

粉瘤は言い方は少し悪くなりますが、ゴミが綺麗なゴミ袋に包まれている状態です。粉瘤のある部位がどこかにぶつかったりして、ゴミ袋が破れると、カラダの中にゴミが撒き散らされます。その時にカラダは汚いもの皮膚の中にあるので、びっくりして異物を除去しようとします。それが異物反応です。その際に炎症を起こし、皮膚に穴を開け、ゴミを排除しようとします。皮膚に穴を開け、膿を出し終わると一度は炎症はおさまりますが、まだゴミ袋は残った状態なので再度大きくなってきます。炎症のせいで痛みを伴い、色素沈着を残し、傷跡も大きく残ってしまいます。

また更に問題なのは炎症で皮膚に穴が開いた場合に、粉瘤の原因となっている開口部とは全然違う部位に穴が開いてしまうという点です。ほとんどの場合でこれがズレてしまっているため、炎症のある部位からゴミ袋を除去すると原因が除去できずに再発してしまいます。

これは実は形成外科専門医でも分かっている先生が少ないために、炎症の際に手術をすると再発しやすいと言う問題が起こってしまいます。

手術の際によく確認すれば開口部が見つかるので注意深く検索する必要があります。ただそれでも開口部が見つからない場合もあります。

今回の症例では青線の部位が実は開口部になります。

富士山で例えると頂上から噴火せずに、横から噴火した状態です。

歴史的にも必ずしも頂上ばかりから噴火するわけではないみたいですね。

話はズレてしまいましたが、炎症すると痛み、再発、傷跡のリスクが上がってしまうので、炎症する前に対応することが大事です。

また炎症しても抗生剤はほとんど効かないことが多いので出来るだけ早く手術で対応する方が炎症を早く治めることができ、痛みは早く改善し、傷跡も小さくできます。

基本的には切開排膿を勧めるドクターが多いですが、中のゴミやゴミ袋が取りきれてないため、なかなか炎症は治りません。ドクターが忙しいせいもあって、切開排膿のみで済ませてしまうこともあります。そして切開排膿のみの場合は毎日、外来に通院して激痛の外来処置が待っており、地獄の日々が続きます。

当院では出来るだけ炎症が起こっている場合には当日手術で対応させて頂いています。手術した日から炎症は治り、抜糸までは特に外来通院は必要ありません。血腫などの合併症はありますがその都度対応させて頂きます。

痛くなったらお早めに相談して下さい。 

今回の症例の術後写真です。

炎症後のため、綺麗ではありませんが、中に血腫ができると感染の可能性もあるため、傷は軽く寄せておくくらいに留めています。感染が強い場合には創部を開けたままの場合もあります。

炎症している傷は炎症していない症例に比べ治癒が遅れますので、お風呂はガーゼに滲出液が付かなくなってからになります。約1週間から3週間掛かりますがシャワーは手術当日から可能です。

 

形成外科専門医 古林玄