脂漏性角化症とメラノーマの違いと治療方法を解説
「脂漏性角化症とメラノーマ、ほくろは何が違うの?」
「自分で確認できる方法が知りたい」
「脂漏性角化症とメラノーマの治療法について知りたい」
似たような見た目で判断に困る方は多いです。
脂漏性角化症は良性の腫瘍ですが、メラノーマは皮膚がん(悪性腫瘍)です。
本記事では、脂漏性角化症とメラノーマの症状や原因、治療法の違いについて解説しています。
自分にできているものが悪性ではないかと気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。
脂漏性角化症とメラノーマ(悪性黒色腫)の症状の違い
項目 | 脂漏性角化症 | メラノーマ |
---|---|---|
形 | 乳頭状や顆粒状 | 左右非対称 |
色 | 褐色から黒色までさまざま | 褐色や黒色で色ムラがある |
大きさ | 数㎜から2cmまで | 6㎜以上になることが多い |
できる箇所 | 顔や頭部、体幹 | 足の裏や手のひら、顔、体、粘膜など様々 |
触感 | スベスベもしくはカサカサ | 硬いできもののよう |
変化 | 加齢とともに数が増える | 大きさ、色、形が変化する |
脂漏性角化症は別名「老人性イボ」とも呼ばれており、名前の通り加齢とともに増えていきます。
脂漏性角化症は良性の腫瘍のため、健康被害はありません。
しかし、患部が大きくなると、指や衣類などでこすれて炎症を起こしたり痒みを感じることがあります。
一方で、メラノーマ(悪性黒色腫)は皮膚がんです。
初期は、ほくろとの見分けがつかないこともありますので、体調に変化を感じてからはじめてメラノーマを疑う方も多いです。
ほくろとまわりの皮膚の境界線が不明瞭であったり、滲出液や出血が見られるなど、上記の表のような症状以外にも気になることがある場合は、早めの受診がおすすめです。
脂漏性角化症とメラノーマの原因の違い
脂漏性角化症の原因は、加齢、紫外線、遺伝などが考えられています。肌の新陳代謝で、シミの原因になるメラニンは体外へ排出されます。
しかし、加齢による衰えでメラニンの排出が追いつかなくなり、徐々に蓄積されていきます。
また、紫外線などによる外部からの強い刺激を受けると、メラニン色素が作られ、肌を守ろうとします。その結果、発生するのがシミ(老人性色素斑)です。シミと同じですが、メラニンが皮膚を盛り上げるほど蓄積した状態になるのが、脂漏性角化症と言われています。
メラノーマは皮膚がんの一種で、皮膚の色素に関係するメラノサイトという細胞やほくろの細胞ががん化して起こる病気です。
メラノーマの原因は、紫外線や遺伝、外的な刺激などが考えられています。紫外線の強い地域で発生率が高く、紫外線の過剰照射は重大な原因と考えられています。
しかし、足の裏や手のひら、爪の中など、紫外線が直接当たりにくい部位にも多く発生しています。そのため、摩擦や外傷など外部からの刺激も危険因子として挙げられます。
また、家族にメラノーマを発症した人がいることも、黒色腫発生のリスクを上げる要因です。
脂漏性角化症・メラノーマ・ほくろの見分け方
項目 | 脂漏性角化症 | メラノーマ | ほくろ |
---|---|---|---|
見た目 | 褐色~黒色の盛り上がったシミやイボ、表面はザラザラ | 色の濃淡がまだらな黒色や茶色の病変、形は左右非対称 | 褐色~黒色の色素斑、形は円形や楕円形 |
医療機関での診断方法やセルフチェックポイントをそれぞれ見ていきましょう。
医療機関での診断方法
脂漏性角化症は視診で診断が可能です。
また、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いた検査を行うことで、より確実にメラノーマなどの他の病変と区別できます。
それでも似た症状の皮膚疾患との区別が難しい場合は、皮膚組織を採取して生検組織診断を行うことがあります。
セルフチェックのポイントと注意点
脂漏性角化症(老人性イボ)のセルフチェックでは、以下のような点を確認します。
- ・盛り上がりの大きさは数㎜〜2cm程度か
- ・表面はざらつきがあるか
- ・色は褐色から黒色であるか
- ・凹凸があるか
メラノーマ(悪性黒色腫)のセルフチェックでは、ほくろやシミの形・色・大きさに変化がないかを確認します。
- ・形が左右非対称
- ・皮膚との境界がギザギザしている
- ・色ムラがある
- ・直径が6mm以上ある
- ・出血や滲出液がある
- ・【爪の場合】黒い線や変形がある
脂漏性角化症は良性ですが、メラノーマは命に関わるがんです。
初期はほくろとの区別がつきにくいため、少しでも気になることがある場合は、早めの受診をおすすめします。
治療方法
脂漏性角化症とメラノーマでは、治療方法が異なるため治療費にも違いがあります。まずは、脂漏性角化症の治療法から紹介します。
脂漏性角化症の治療法
脂漏性角化症(老人性イボ)の治療法には、液体窒素による凍結療法、炭酸ガスレーザー、高周波メス(ラジオ波メス)、切除手術などがあります。
液体窒素
液体窒素(-196℃)を用いた凍結療法が一般的です。綿棒や専用スプレーで病変部に液体窒素を数秒間塗布し、皮膚組織を凍結・壊死させます。このとき多少の痛みが伴うことがあります。
治療した患部は、数日~数週間でかさぶたとなり自然に剥がれ落ちます。軽度の痛みや腫れが出ることがありますが、通常は数日で改善します。数回の施術が必要になることがあります。
炭酸ガスレーザー
炭酸ガス(CO₂)レーザーは、水分を含む皮膚組織を蒸散させて除去する治療法です。局所麻酔後にレーザーを照射し、病変部のみを精密に削ります。
施術後は軽いかさぶたができ、1~2週間で自然に剥がれますが、一時的な赤みや色素沈着が残ることがあります。ダウンタイムが短く、顔など目立つ部位に適しています。
高周波メス(ラジオ波メス)
高周波メスは、電気エネルギーで皮膚組織を蒸散・切除する治療法です。局所麻酔後、専用電極で病変部を削り取ります。
出血が少なく、短時間で治療が終わるのが特徴です。
切除手術
メスで直接切除する方法です。
大きな病変や他の治療法で除去できない場合に選択されます。
傷跡が残る可能性がありますが、病理検査ができること、再発リスクが少ないことがメリットです。
メラノーマの治療法
メラノーマ(悪性黒色腫)の治療法には、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。
治療法は病状の進行度や転移の有無、健康状態などにより異なります。
基本的には外科手術による切除が第一選択です。
腫瘍の周囲に安全域を確保して切除し、深さが1mm以上の場合はセンチネルリンパ節生検で転移を調べます。
手術が難しい場合や全身転移がある場合は、薬物療法や放射線療法を併用します。
治療費の目安
疾患 | 治療法 | 費用の目安 |
---|---|---|
脂漏性角化症 | 液体窒素 | 保険適用で約700円〜 |
炭酸ガスレーザー | 自由診療、クリニックにより異なる | |
切除 | 保険適用で約7,000円〜14,000円 | |
メラノーマ | 手術 | 日帰り手術で約36,000円(3割負担) |
放射線療法 | 1部位1回 約30,000円 | |
薬物療法 | 使用薬によって異なる |
メラノーマの治療は原則保険適用ですが、放射線療法には先進医療が含まれるケースもあります。
薬物療法では高額な薬剤が使われることもあるため、詳細は医師にご確認ください。
早期発見と早期治療の重要性
メラノーマは進行が速い皮膚がんであり、放置すると全身に転移するリスクがあります。
早期に発見し、適切な治療を受ければ高い確率で完治が可能です。
脂漏性角化症とメラノーマは見た目が似ており、自己判断が難しいケースも少なくありません。
少しでも気になる変化があれば、迷わず皮膚科を受診しましょう。
まとめ
本記事では、脂漏性角化症とメラノーマ、ほくろの違いについて解説しました。
脂漏性角化症は良性腫瘍ですが、メラノーマは悪性で進行が速い皮膚がんです。
初期段階では見分けが難しいため、自己判断せず早めに専門医へ相談することが大切です。
早期発見・早期治療によって、命を守ることにもつながります。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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脂漏性角化症にイボコロリは効果がある?正しい治療方法を解説
脂漏性角化症は、イボのように見えることが多いため、イボコロリなどの市販薬で治療できるのではないかと考える方も多いのではないでしょうか。健康に害が無い症状なので、できれば安く簡単に治療したいと考える方もいます。
イボコロリなどの市販薬は、ウイルス性のイボや角質の除去には効果がありますが、脂漏性角化症は加齢や紫外線が原因のため治療することはできません。正しい治療をしなければ、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
この記事では、脂漏性角化症が市販薬で治療できない理由や正しい治療法について解説します。予防法もあわせて紹介するので、脂漏性角化症でお悩みの方は参考にしてください。
脂漏性角化症はイボコロリなどの市販薬で治療できない
脂漏性角化症は、イボコロリなどの市販薬では治療できません。市販薬は、ウイルス性のイボを改善させるための治療薬だからです。
脂漏性角化症の原因は、主に加齢や紫外線の影響です。良性の皮膚腫瘍の一種であり、ウイルス性のイボではありません。特に40代以上の方に多く見られる疾患で、顔や首・手足など日光が当たりやすい箇所に好発します。命にかかわる疾患ではないため放置していても問題ありませんが、見た目が気になる場合は治療が検討されます。
「見た目は気になるけど、健康上問題無いならとにかく安く治療したい」と考える方は多いですが、市販薬を使った自己治療はオススメしていません。
ただし、イボコロリを使用するなど誤った治療を行うと、皮膚にダメージを与えたり症状が悪化したりする可能性があるため注意が必要です。脂漏性角化症は、イボコロリだけではなく外用薬や内服薬では治療ができません。治療を希望する場合は、医師の診断を受け適切な治療を行うことが重要です。
イボコロリとは
先述したように、イボコロリとはウイルス性イボを改善する市販薬です。イボコロリの成分や効果、使用できる主な症状は以下のとおりです。
イボコロリの成分と効果
イボコロリは、サリチル酸を主成分とした外用薬です。皮膚の角質を軟化させる作用があり、主にウイルス性のイボに対して効果を発揮する市販薬です。
ウイルス性のイボやタコなどの角質が厚くなった部分に塗布し、角質を溶かして除去することを目的としています。症状のない部分や、適用外の症状の患部に塗布すると、皮膚が白くふやけて剥がれます。さらに、痛みを伴うこともあるため注意が必要です。
前述したとおり、脂漏性角化症は加齢や紫外線が原因で発生する良性腫瘍であり、ウイルスとは関係ありません。そのため、脂漏性角化症に使用すると症状が悪化するリスクがあります。
イボコロリは、適応する症状に正しく使用すれば一定の効果が期待できますが、トラブルが起きやすいことも事実です。市販薬を使う際は、事前に医薬品説明書を確認し、用法用量を守って使用しましょう。
イボコロリの効果を期待できる症状
イボコロリの効果を期待できる症状は、以下のとおりです。
症状 | 原因 | 好発部位 |
---|---|---|
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい) |
|
|
魚の目(鶏眼:けいがん) |
|
|
タコ(胼胝:べんち) |
|
|
イボコロリを使用できる症状でも、顔や粘膜・傷のある患部には塗布してはなりません。また、1ヶ月程度使用しても症状が改善しない場合や、症状が悪化した場合はただちに使用を中断し医師に相談しましょう。
脂漏性角化症は、角質が厚くなる病変ではありますが、イボコロリを使用しても症状が改善することはありません。反対に、炎症を起こし症状を悪化させる可能性があるため、使用しないようにしましょう。
脂漏性角化症の正しい治療方法
脂漏性角化症の正しい治療方法は、以下のとおりです。
レーザー治療
炭酸ガスレーザーや、Qスイッチレーザーなどを用いて治療する方法があります。レーザー治療は、患部の組織を蒸散させて除去するため出血が少なく、ダウンタイムが短いことが特徴です。傷跡も残りにくいため、顔など目立つ部位の治療に適しています。
ただし、レーザー治療は保険適用外となるため、費用が高額になりやすい治療です。料金はレーザーの種類や治療範囲によりますが、1万円から3万円程度が一般的な相場です。麻酔を使用する場合は、別途料金がかかることがあります。
治療後は、紫外線対策や適切なスキンケアを行うことで色素沈着を抑え、きれいな仕上がりになるのでアフターケアも重要です。
液体窒素
液体窒素で治療する方法もあります。-196℃の液体窒素を患部に塗布し、凍結・壊死させてイボを取り除く方法です。多くの病院で採用されており、比較的一般的な治療方法として導入されています。
ただし、治療中は強い痛みを伴い、治療後はかさぶたができます。また、色素沈着が半年から2年程度残る可能性があります。他の治療法と比べて治療費は安いものの、完全に治るまでに時間がかかります。治療費は、保険適用で700円~900円程度です。
一度の施術で済むこともありますが、取り残しなどで再発した場合は複数回の治療が必要になることもあります。
電気焼灼
電気焼灼で治療する方法もあります。電気焼灼は、電気メスを使用して患部を焼灼する方法です。病変を確実に取り除けますが、治療中は痛みや軽度の出血を伴うことがあります。また、浅く削ると再発の可能性があり、深く削りすぎると傷跡が残るリスクがあるため、医師の技術や経験が重要です。
一度の施術で確実に除去できるメリットがありますが、電気焼灼を取り入れている病院は少ないのが現状です。治療費はクリニックによって異なりますが、8,000円~2万円程度が相場とされています。
脂漏性角化症の治療方法にはさまざまな選択肢があるため、症状や希望に合った方法を選ぶことが大切です。治療を検討する際は、事前に医師と相談し、正しい方法を選択しましょう。
脂漏性角化症の予防法
脂漏性角化症の予防法は、以下のとおりです。
紫外線対策
脂漏性角化症は、紫外線が原因で発症するため日常的な紫外線対策が効果的です。具体的には、日焼け止めを塗ったり、日傘や帽子を活用するといった対策を行うとよいでしょう。
紫外線対策は、季節や天候を問わず1年を通して行うことが大切です。夏だけではなく、冬や曇りの日でも紫外線は降り注いでいるので、日常的に対策する習慣をつけましょう。
肌の保湿
肌を保湿することも、脂漏性角化症の予防に効果的です。肌の乾燥は、脂漏性角化症の発症を促進するためです。乾燥した肌は、外部からの刺激に弱くなります。具体的には、以下のようなケアを行い、肌のバリア機能を保ちましょう。
- ・洗顔後すぐに化粧水や保湿クリームで保湿する
- ・加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つ
脂漏性角化症は、加齢や紫外線などの外的要因で発生しますが、乾燥した肌も発症リスクを高めます。特に、乾燥が気になる季節はこまめに保湿を行い、肌を乾燥から守りましょう。適切なスキンケアを習慣化することで、発症リスクを減らせます。
まとめ
脂漏性角化症は、イボコロリなどの市販薬では治療できません。市販薬を自己判断で使用すると、トラブルの原因となる可能性があるため注意が必要です。
自己治療はできませんが、紫外線対策や保湿ケアをすることで発症リスクを抑えられます。外用薬や内服薬では効果が期待できないため、治療を希望する場合は医師に相談し適切な治療を受けましょう。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
関連記事
脂漏性角化症は保険適用で治療できる?適用条件や費用・治療法を解説
- 脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)とは
- 脂漏性角化症は保険適用で治療できる?
- 脂漏性角化症の治療の種類
- 脂漏性角化症を治療したほうが良いケース
- 脂漏性角化症と似た腫瘍
- 脂漏性角化症の治療はクリニックで
- まとめ
脂漏性角化症の治療について、以下のような疑問をお持ちではないでしょうか。
- 「脂漏性角化症は保険適用で治療できる?」
- 「治療方法により料金は違う?」
脂漏性角化症は健康に影響がないため、「治療費が高そうだし放置しよう」と考える方も多いでしょう。しかし、治療方法によっては保険適用で安価に治療できます。
本記事では、脂漏性角化症の保険適用や料金について解説します。似た腫瘍の保険適用についても紹介しているため、脂漏性角化症かどうか確信がない方もぜひ参考にしてください。
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)とは
脂漏性角化症とは、老人性イボとも呼ばれる良性腫瘍です。加齢とともに発生しやすくなりますが、日光をよく浴びる人は20代でも発症することがあります。
脂漏性角化症はがん化しませんが、自然に治ることもないため、見た目が気になる方は治療を検討することが多いです。
特徴 | 詳細 |
---|---|
色 | 黒色・褐色 |
大きさ | 数mm〜3mm |
外観 | 円形・楕円形・わずかに盛り上がる |
自覚症状 | なし(まれにかゆみ・痛み) |
好発部位 | 頭部・顔・首筋・四肢 |
発症年齢 | 40代以降 |
原因 | 紫外線・肌の老化・遺伝 |
特に、紫外線が大きな原因とされており、加齢とともに増える傾向があります。
脂漏性角化症は保険適用で治療できる?
脂漏性角化症の治療は、方法によって保険適用の有無が異なります。ここでは、保険適用の治療方法や料金相場を解説します。
脂漏性角化症は治療法により保険適用になる
脂漏性角化症は治療法によって保険適用となるか決まります。発生箇所や症状の現れ方による違いはありません。保険適用となる治療方法は以下の2つです。
- ・凍結療法
- ・外科手術(広範囲の症状やがんの疑いがある場合)
一方、以下の治療方法は自由診療です。レーザー治療や電気焼灼法は美容目的のため、仕上がりがきれいなのが特徴です。
- ・レーザー治療
- ・電気焼灼法
保険適用と自由診療の違い
治療法 | 保険適用 | 料金相場(税込・最小範囲) | 副作用 |
---|---|---|---|
凍結療法 | 適用 | 600円〜800円(3割負担) | 色素沈着が起きやすい |
外科手術 | 適用 | 7,000円〜14,000円(3割負担) | 線状の傷跡が残りやすい |
レーザー治療 | 適用外 | 6,000円〜11,000円 | ほとんどなし |
電気焼灼法 | 適用外 | 5,500円 | ほとんどなし |
保険適用の治療は費用を抑えられますが、副作用として傷跡が残る可能性があります。
脂漏性角化症の治療の種類
脂漏性角化症の治療方法は、以下の4種類があります。それぞれ詳しく解説します。
凍結療法
凍結療法は、−196℃の液体窒素を患部に当てて急激に冷やす治療法です。一般的なウイルス性いぼによく用いられる治療法で、脂漏性角化症でも使われます。
施術は、患部の大きさによってスプレーや綿棒などを使い、患部の凍結・解凍を3回程度繰り返します。患部は凍傷を起こして壊死し、その後かさぶたとなりますが自然に剥がれ落ちるため心配はいりません。
凍結療法の多くは一度の治療で治らないことが多く、1〜2週間おきに計2〜3回程度の治療が必要です。副作用は、痛み・血豆・水ぶくれ・色素沈着・炎症などです。凍結療法によってできた色素沈着は跡が残るおそれがあるため、目立たない箇所への治療が良いでしょう。
外科手術
脂漏性角化症の治療では、外科手術をする場合があります。メスを用いて患部を直接切除する方法です。
外科手術は診察した際に癌(がん)の疑いがあった場合に行い、切除した組織を検査します。また、他の治療法では治せないような、患部の面積が大きいケースで行います。
局所麻酔をするため、施術時の痛みはありません。外科手術は再発しにくい治療法ですが、傷跡が残ってしまうリスクがあります。
レーザー治療
脂漏性角化症の治療にはレーザー治療も有効です。レーザー治療は、患部に高出力のレーザーを照射することでシミ部分を除去します。
また、レーザー治療はモードを変えることで患部以外に、たとえば肌のくすみや細かいシミなど肌全体へのアプローチが可能です。 レーザー治療の種類は、ピコレーザーやQスイッチレーザー、炭酸ガスレーザーなどがあり、いずれも自由診療です。当院では、ピコレーザーとQスイッチレーザーを導入しています。
凍結療法や外科手術に比ベダウンタイムが短く、副作用も少ないうえ、仕上がりが最もきれいな施術です。人と会う機会が多い方や、見た目が気になる方に最適な施術といえるでしょう。
電気焼灼法
電気焼灼法は、高周波メスを用いて患部を切除・焼灼する方法です。
電気焼灼法も脂漏性角化症の治療に有効です。高周波メスを使い患部を切除、焼灼する方法で切除と同時に止血できるため、出血はほとんどありません。 また、局部麻酔するため施術中の痛みはなく、施術後のヒリヒリや赤みはすぐに落ち着くでしょう。
施術後、かさぶたができますが7〜10日程度で剥がれます。その後、2〜3か月程度で新しい皮膚ができてきれいになります。 基本的に1回の施術で終わり、再発の可能性が少ない治療法です。皮膚の盛り上がりが大きい脂漏性角化症を、きれいに治したい場合におすすめします。
脂漏性角化症を治療したほうが良いケース
脂漏性角化症の治療を推奨するケースは以下のとおりです。
- ・帽子や衣服に患部が引っ掛かる場合
- ・見た目が気になる場合
患部が擦れると炎症を起こし、出血・痛み・かゆみを伴うことがあります。また、脂漏性角化症だと思っていたものが、実は皮膚がんだったというケースもあります。少しでも不安がある場合は、診察を受けることをおすすめします。
脂漏性角化症と似た腫瘍
脂漏性角化症と見た目が似ている腫瘍には、シミやほくろなどがあります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
種類 | 症状 | 好発部位 | 保険適用 |
---|---|---|---|
シミ | ・肌が部分的に黒色・褐色になる ・患部の盛り上がりはない ・放置すると脂漏性角化症に移行することもある |
顔・首筋・腕 | 保険適用外 ※外傷性色素沈着・太田母斑・異所性蒙古斑などは適用 |
ほくろ | ・黒色・褐色・青灰色など ・平坦・盛り上がりなど様々な形態 |
全身 | ・美容目的:自由診療 ・悪性の疑い・日常生活に支障がある場合:保険適用 |
一般的なイボ | ・黄色・茶色・灰色の盛り上がり ・表面がザラザラしている ・ウイルス感染によるもの |
手足 | 凍結療法の場合のみ保険適用 |
皮膚がん | ・ほくろやシミに似るが以下の特徴がある – 形がいびつ・左右非対称 – 境界が不明瞭・色がまばら – 急に大きくなったり、潰瘍化してじゅくじゅくする |
全身 | ほとんどの場合保険適用 |
加齢によるシミなど、日常生活に支障がない場合の治療は保険適用外です。一方、悪性腫瘍や先天性の場合は保険適用になることが多いです。
脂漏性角化症の治療はクリニックで
脂漏性角化症の治療は、皮膚科や形成外科で受けられます。
市販薬では治せず、自己処理すると傷跡が残る可能性があるため、気になる場合は医療機関での治療をおすすめします。
脂漏性角化症は健康上の問題はありませんが、自然に消えることはないため、早めに治療した方が傷跡が目立ちにくいでしょう。
また、見た目が脂漏性角化症に似ていても、がんである可能性もあるため、少しでも気になる場合は診察を受けることを推奨します。
▶関連記事「脂漏性角化症は市販薬で治療できる?効果的な治療方法や注意点を解説」
まとめ
脂漏性角化症は良性腫瘍で、治療しなくても基本的に問題ありません。しかし、以下のような場合は治療を検討しましょう。当院では、傷跡がきれいに仕上がるレーザー治療を行っています。
経験豊富な専門医が診察を行いますので、シミやできものが気になる方は、ぜひ当院にご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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脂漏性角化症(老人性イボ)は顔にできる?症状・原因・治療法を解説
脂漏性角化症とは
脂漏性角化症は、皮膚にできる良性の腫瘍です。顔にできる脂漏性角化症について解説します。
顔にできる脂漏性角化症の症状
顔にできる脂漏性角化症の症状は、褐色や黒色、もしくは肌に近い色をしたシミのような腫瘍が発生します。
一般のシミと違うのは、患部が盛り上がることです。一見すると平面に見えても、拡大すると盛り上がっていることがあります。ここまで聞くと「ホクロ」と勘違いする方も多いですが、ほくろとは異なる特徴があります。
脂漏性角化症の大きさは数mm〜数cm程度です。なかには5cmくらいまで大きくなる場合があります。表面はカサカサ・ザラザラしており、凹凸になることもあります。
基本的に、痛みやかゆみなどの自覚症状はありません。ただし、まれにかゆみを感じる場合があります。
20代後半くらいから見られ、多くなってくるのは40代以降、80代でほぼ全員に発症する症状です。
脂漏性角化症は、がん化することはないものの自然に治りません。顔にできた場合、見た目が気になり治療を希望する方が多いです。
脂漏性角化症が顔にできる原因
脂漏性角化症が顔にできる原因は明確になっていません。影響しているといわれているのが、紫外線や皮膚の老化、遺伝です。
日光を浴びることで、紫外線から肌を守るためにメラニンが大量に生成され、シミ状になります。また、肌の細胞がダメージを受け表皮基底細胞と呼ばれる、表皮の一番奥にある細胞が異常に増殖することが、患部が盛り上がる原因です。
加齢に従って症例が増加することから、老化現象も原因の一つとして考えられています。肌が老化するとターンオーバーが乱れます。ターンオーバーとは、肌の新陳代謝のことです。
通常、28日周期で肌の細胞が新しく入れ替わりますが、ターンオーバーが乱れると古い皮膚が剥がれ落ちません。そのため、シミなどが肌に残りやすくなります。
一方で、紫外線や加齢の影響にかかわらず症状が出る場合があることから、遺伝の影響もあると考えられています。
脂漏性角化症と間違えやすい顔のできもの
脂漏性角化症と間違えやすい顔のできものは以下のとおりです。
-
- ・老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)
- ・色素性母斑(しきそせいぼはん)
- ・尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
- ・皮膚がん
色や大きさの比較は以下のとおりです。
種類 | 老人性色素斑 | 色素性母斑 | 尋常性疣贅 | 皮膚がん |
---|---|---|---|---|
色 | 茶褐色 | ・黒色 ・茶褐色 |
・黄色 ・褐色 ・灰黒色 |
・黒色 ・褐色 ・紅色 ・肌色 |
大きさ | 数mm〜数cm | 数mm〜1cm | 数mm〜1cm | 数mm〜2cm |
実際には、違いを見分けるのが難しい場合があり、少しでも不安があれば医師の診察を受けることをおすすめします。
【シミ】老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)
老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)は、いわゆる一般的なシミを指します。原因は脂漏性角化症と同じく紫外線や加齢、遺伝的な影響であるといわれています。
形は円形や楕円形で、患部とそうでない部分との境目は明確です。1つだけの場合もあれば複数発生することもあります。一般には、かゆみや痛みなどの症状はありません。
老人性色素斑は30代後半から見られ、多くなるのは40代以降です。ただし、外で仕事やスポーツなどをする機会が多い方は、20代でも発症します。
脂漏性角化症と違うのは、皮膚の盛り上がりがないことです。しかし、前述のとおり脂漏性角化症には、拡大しないと皮膚の盛り上がりが確認できない場合があり、注意が必要です。
また、放置していると皮膚が盛り上がってきて脂漏性角化症になるおそれがあります。
【ホクロ】色素性母斑(しきそせいぼはん)
色素性母斑(しきそせいぼはん)は、いわゆるホクロを指します。母斑細胞が集まってできる良性腫瘍です。
メラニン色素を生成する、メラノサイトと呼ばれる細胞が変化し母斑細胞になります。
形は円形や楕円形などで、腫瘍部分との境界は明確です。たいらでシミのように見えるものや、イボのように盛り上がっている場合などがあります。
生まれつきの場合や大人になってからできるなど、発症のタイミングは人により違います。また、はじめは小さくても、体の成長につれ大きくなるなどさまざまです。
1cmを超えるような場合はあざに分類され、幼児期から発生する10cmを超える母斑については、巨大色素性母斑と呼ばれます。色素性母斑は良性腫瘍ですが、顔にできて見た目が気になるため治療する方がいます。
ホクロの治療については以下の記事で詳しく解説しています。
【イボ】尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とは、一般的なイボを指します。患部は円形、もしくは不規則な形でドーム状に皮膚が盛り上がった状態です。
表面がザラザラしているのが見た目の特徴です。痛みやかゆみなどの自覚症状は基本的にありません。尋常性疣贅の主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によるものです。
そのため、複数の場所に発生することも多く、はじめは1つだけであっても気付いたら複数に増えることもあります。また、近くに複数発生したイボがくっついて1つの大きなイボになることがあります。
尋常性疣贅は、肌の直接的な接触以外に、プールや銭湯などで感染する場合があります。市販の薬で治る場合がありますが、うまくいかず悪化してしまうケースもあるため、注意が必要です。
【ガン】皮膚がん
脂漏性角化症と似た症状に皮膚がんがあります。皮膚がんは悪性腫瘍ですが、イボやシミなどと間違えて放置してしまうケースがあります。
初期の皮膚がんであれば、治療可能な場合がありますが、臓器やリンパ節などに転移してしまうと命に関わるでしょう。皮膚がんにはいくつかの種類があり、顔にできる主な皮膚がんは以下のとおりです。
- ・有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)
- ・基底細胞がん(きていさいぼうがん)
- ・悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)
- ・日光角化症(にっこうかくかしょう)
有棘細胞がんの大きさは1〜2cm程度が多く、紅色をしています。基底細胞がんは、ほくろのような腫瘍で、最も多い皮膚がんです。悪性黒色腫はメラノーマとも呼ばれます。ほくろと似ていますが、形が左右非対称のいびつであることや大きさが6mm以上などの特徴があります。
日光角化症は、紅色・褐色で患部がザラザラしている疾患です。放置していると有棘細胞がんになるおそれがあります。他に、皮膚がんには以下の症状が見られる場合があります。
- ・急に大きくなる
- ・悪臭がある
- ・膿んでいる
上記の症状が見られる場合、早めに医師の診察を受けましょう。皮膚がんについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事「皮膚がんとは?原因や種類・見分け方から治療法まで解説!」
顔にできた脂漏性角化症の治療方法
顔にできた脂漏性角化症の治療方法は、メスで患部を直接切除する方法やレーザー治療、液体窒素による凍結療法などがあります。
メスによる切除
メスによる施術は主に高周波メスを使い、患部を直接切除します。高周波メスは普通のメスと違い、切除と同時に止血作用もあるため、出血が少ないことが特徴です。
通常は一度の施術でおわり、傷跡もあまり残しません。ダウンタイムは、赤みが1ヶ月半くらい残る程度です。後述する凍結療法に比べ、色素沈着のリスクも小さい施術です。
メスによる切除は、皮膚科では行っていない場合があります。この場合、形成外科に相談すると良いでしょう。
レーザー治療
脂漏性角化症にレーザーは有効です。レーザー治療では、患部にレーザーを照射しメラニンを破壊します。
治療に使用するレーザー機器の種類には、炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザー、ピコシュアなどがあり、当院ではピコシュアを使用しています。
ピコシュアには、3つの照射モードがあり、脂漏性角化症で使うのは肌全体に照射するピコトーニングや局所に効かせるピコスポットです。
レーザー治療は、患部を切開するわけではないため、傷跡がほとんど残らずダウンタイムが短くすみます。シャワーやメイクは当日から可能で、翌日から入浴できます。
施術回数は、患部の状態によりますが、1〜3回程度です。レーザー治療は、皮膚科や形成外科で受けられますが、全てのクリニックで受けられるわけではありません。事前に、レーザー治療可能かどうか確認しておく必要があります。
ピコシュアについては以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事「ピコシュア(シミ治療)について」
液体窒素による凍結治療
凍結治療は、液体窒素をあてて、患部を凍らせる治療です。特別な設備を必要としないため、多くの皮膚科で保険治療できることがメリットです。
デメリットとしては、施術後もヒリヒリとした痛みが残りやすく、多くの場合は複数回の治療が必要となります。また、色素沈着が半年〜1年程度残るおそれがあるため、顔にできた脂漏性角化症の治療においてはよく検討しましょう。
脂漏性角化症治療にかかる料金
当院では、切除による外科手術とレーザー治療をしています。当院の施術料金は以下のとおりです。
施術の種類 | 料金(税込) |
---|---|
ピコスポット(1ショット) | 550円 |
ピコスポット(150ショット以内) | 55,000円 |
ピコトーニング(全顔) | 9,900円 |
ピコトーニング(1000ショット) | 5,500円 |
イボ焼灼・切除 3mm未満 | 5,500円 |
イボ焼灼・切除 5mm未満 | 8,800円 |
イボ焼灼・切除 7mm未満 | 12,100円 |
脂漏性角化症のレーザー及び切除治療は、全て自由診療となります。
まとめ
脂漏性角化症は、盛り上がったシミのような良性腫瘍です。放置していても健康被害はありません。しかし、顔にできた脂漏性角化症は、見た目が気になることから治療を希望する方もいます。
脂漏性角化症と似た症状に皮膚がんがあるため、少しでも不安がある場合は一度医師の診察を受けた方が良いでしょう。当院では、経験豊富な専門医が一人ひとりしっかりと診察します。シミやできものの治療はお任せください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
関連記事
脂漏性角化症(老人性イボ)が頭皮にできる原因・症状・治療法を解説
「頭皮にできものがあるけど脂漏性角化症なのか気になる」
「治療したら頭皮に傷痕が残らないか心配」
頭皮にできものができたとき、これらの疑問をもつ方もいるでしょう。脂漏性角化症は、頭皮にもできる腫瘍です。中にはホクロやニキビなど他の症状と見分けがつかないことも多いです。
本記事では、頭皮にできた脂漏性角化症の原因や似たような症状、効果的な治療法などを詳しく解説しています。
脂漏性角化症とは
脂漏性角化症は、シミのような良性の腫瘍で頭皮にもできます。脂漏性角化症の主な症状や原因についてそれぞれ解説します。
頭皮にできる脂漏性角化症の症状
頭皮にできる脂漏性角化症の症状は、円形や楕円形の腫瘍ができることです。腫瘍といっても、患部は少し盛り上がる程度であることが多いため、パッと見たところシミのように見えるでしょう。
表面はカサカサ・ザラザラしており、凸凹している場合があります。かゆみや痛みなどの自覚症状は基本的にありませんが、衣服や帽子と擦れると痒みが生じることがあります。
色は茶褐色や黒色、肌色に近い場合などさまざまです。小さなものは数mmで、大きくなると5cmくらいまでになることがあります。
発症は40代以降から多くなり、80代ではほとんどの方にみられます。脂漏性角化症は、自然治癒することはなく、「イボコロリ」といった市販の薬等では治りません。
そのため、帽子を被った際に擦れて気になる場合や、頭髪が少なく目立ってしまう場合などに治療を希望する方もいます。
また、脂漏性角化症が急激に全身に増え、かゆみを伴う場合は「Leser-Trélat(レゼルートレラ)兆候」の可能性があります。この症状がある場合は、内臓がんを発症しているおそれがあるため、油断せずに早急な診察が必要です。
脂漏性角化症が頭皮にできる原因
頭皮に脂漏性角化症ができる原因は、はっきりとわかっていません。紫外線や皮膚の老化、遺伝などによるといわれています。
頭皮は日光によくあたる箇所です。他に顔面、首筋など日光にあたる機会が多い箇所に好発することから、紫外線の影響が高いと考えられています。
紫外線の影響で、メラニンが大量に生成され皮膚の細胞が異常増殖することが、盛り上がったシミのようになる原因とされています。
また、加齢により症例が多くなることが、肌の老化現象も一つの原因であるとされる理由です。肌の老化は、肌の新陳代謝の乱れを招きます。
通常であれば、表面に押し出されるはずの古い細胞が残ったままになれば、シミも消えにくくなるでしょう。
脂漏性角化症は、胸や腹など紫外線を浴びにくい場所にも発生します。また、年齢によって必ずしも同じ症状にならないことから、遺伝の可能性もあるのではないかと考えられています。
脂漏性角化症以外の頭皮のできもの
脂漏性角化症以外で頭皮にできものが発症することがあります。尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)や悪性腫瘍、炎症(ニキビ・皮膚炎など)などです。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
種類 | 尋常性疣贅 | 皮膚がん | 炎症 |
---|---|---|---|
色 | 褐色・黄色・灰黒色 | 褐色・黒色・紅色・肌色 | 赤色 |
大きさ | 数mm〜1cm | 数mm〜数cm | 数mm〜数cm |
脂漏性角化症と皮膚がんは似ている場合があります。頭髪に隠れて確認しづらいこともあるため、心配であればクリニックでの診察をおすすめします。
【イボ】尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
尋常性疣贅は、皮膚にできる一般的なイボを指します。ヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスの感染によって引き起こされる疾患です。
患部の表面はザラザラしており、盛り上がっています。引っ掻いたりすることで広がり、はじめは1つだったのが複数に増えることがあるのが脂漏性角化症との違いです。複数に増えたイボがくっついて大きな一つのイボになることもあります。
市販の薬で治る場合がありますが、かえって悪化させてしまうことがあります。また放置した結果、広範囲にできてしまい治療が難しくなることがあるため注意が必要です。
【ガン】皮膚がん
頭皮に皮膚がんが発症している場合があります。頭皮にできる主な皮膚がんは以下のとおりです。
- ・日光角化症(にっこうかくかしょう)
- ・有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)
- ・血管肉腫(けっかんにくしゅ)
- 皮膚がんは、早期の発見により治療できる場合があります。放置しておくと進行し、リンパ節や臓器などに転移するおそれもあるため要注意です。
内臓のがんと違い、症状を見て確認できるため皮膚がんは発見しやすいといえます。しかし、ほくろやシミと見間違え放置してしまうことも多い疾患です。
皮膚がんは、形が左右非対称であることが多く、また潰瘍化してジクジクする症状があります。他に患部が急に大きくなる、悪臭がするなどの症状がある場合は、一度クリニックで診察を受けた方が良いでしょう。
皮膚がんについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事「皮膚がんとは?原因や種類・見分け方から治療法まで解説!」
【ニキビ・皮膚炎】炎症
頭皮がニキビや皮膚炎などの炎症を起こしている場合があります。頭皮にできる主な炎症は以下のとおりです。
- ・ニキビ
- ・毛嚢炎(もうのうえん)
- ・脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
- ・皮膚接触炎
脂漏性皮膚炎と違うところは、痛みやかゆみなどの自覚症状があることです。他に、腫れやフケなどの症状があるため比較的判断しやすいでしょう。
頭皮のニキビは、若者だけにできる疾患ではありません。30〜40代でもみられます。
毛根部分に膿をもったブツブツがある場合には、毛嚢炎が考えられます。炎症がひどい場合には跡が残るおそれもあるため注意が必要です。
皮膚の盛り上がりがなく、赤みやフケが出るなどの症状は、脂漏性皮膚炎の可能性があります。
頭皮の脂漏性角化症を自分で取るのは止めましょう
頭皮の脂漏性角化症を自分でとってはいけません。無理に剥がそうとして肌を傷つけてしまい、頭皮に傷跡が残ってしまうおそれがあります。
傷口から細菌が侵入し感染症を引き起こすかもしれません。さらに、腫瘍を除去したつもりでも表面部分しかとれておらず、再発してしまう可能性があります。
脂漏性角化症は、一般のイボと違い市販の薬を使っても治りません。また、自己判断で皮膚がんを見逃すおそれがあります。医師が診察すれば、悪性であるか正確に判断できるため安心です。
頭皮にできた脂漏性角化症の当院での治療方法
脂漏性角化症は、自然に治ることはありません。前述したとおり自分での治療はリスクがあり、クリニックでの治療が必要です。
当院では、メスによる切除、もしくはレーザー治療を行っています。メスでの治療は、高周波メスを用いて患部を直接切除する方法です。
切除といっても、皮膚を切り込むわけでなく患部のみを削り取る施術です。また、高周波メスは、切除と同時に止血作用があります。そのため、出血はほとんどなく大きな傷跡は残りません。高周波メスでの切除は、基本的に一度の施術で完了します。
レーザー治療では、ピコレーザーを使って治療します。レーザーは1〜3回程度の治療となりますが、メスでの治療よりダウンタイムが短いことが特徴です。
当院では、米国サイノシュア社のピコシュア(PicoSure)を使用しています。ピコシュアは、厚生労働省及び米国FDAの承認を得ている安全性の高い医療機器です。
ピコシュアについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事「ピコシュア(シミ治療)についての詳細」
頭皮治療で髪の毛が無くなるのか?
頭皮の脂漏性角化症を治療した場合、レーザー治療であれば基本的に髪の毛は生えてきます。脂漏性角化症の多くは皮膚の表面近くにできるため、毛根までダメージは届かないためです。
患部があまりに深い、もしくは広範囲に切除手術をした場合、一部において生えなくなる可能性があります。毛根が損傷を受けた場合や、やむを得ず除去しなければならないときです。その場合でも、部分的であるため周囲の毛髪でカバーできるでしょう。
脂漏性角化症治療の料金
当院では、高周波メスによる切除及びレーザー治療を行っています。当院の脂漏性角化症治療の料金は以下のとおりです。
施術の種類 | 料金(税込) |
---|---|
ピコスポット(1ショット) | 550円 |
ピコスポット(150ショット以内) | 55,000円 |
ピコスポット(300ショット以内) | 100,000円 |
イボ焼灼・切除 3mm未満 | 5,500円 |
イボ焼灼・切除 4mm未満 | 7,150円 |
イボ焼灼・切除 5mm未満 | 8,800円 |
イボ焼灼・切除 7mm未満 | 12,100円 |
脂漏性角化症治療は、全て自由診療となります。
形成外科では頭皮もきれいに治せる
形成外科は、頭皮の脂漏性角化症もきれいに治せます。形成外科は、火傷や手術痕など体の損傷について、機能と見た目の両方を修復する診療科です。
たとえば、形成外科では火傷やケロイド、手術後の傷跡の修復などを行っています。一般の診療科よりも、外観を「きれいに」治すことに特化しており、そのための必要な設備や専門技術があります。
脂漏性角化症をきれいに治したいなら形成外科にお任せください。
まとめ
脂漏性角化症は紫外線や老化、遺伝などが原因で発症するといわれている、シミに似た腫瘍です。頭皮のできものは他に、ニキビや一般のイボなどの可能性もあります。
脂漏性角化症は、良性腫瘍であるため経過観察することも多い疾患です。しかし、くしを通したときや帽子を被ったときに引っかかること、見た目が気になるなどの理由で治療する方がいます。
当院では、これまでがん研有明病院、聖路加国際病院で顔面の形態手術、全身の再建手術をしてきた院長や経験豊富な専門医による傷跡のきれいな治療が受けられます。脂漏性角化症以外のできものや、あざなどが気になる方はお気軽にご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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脂漏性角化症(老人性イボ)のレーザー治療について|効果・回数・注意点など
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は、加齢に伴い現れる良性の皮膚腫瘍で、茶色や黒っぽい色が特徴です。痛みやかゆみもなく放置されがちなイボですが、見た目が気になってレーザー治療を検討する方は少なくありません。
本記事では、脂漏性角化症(別名:老人性イボ)をレーザーで治療する方法や効果、料金などを解説します。
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)とは?
最初に、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)について「症状」「原因」に分けて解説します。
症状
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は、40歳以降の方にできやすい皮膚の良性腫瘍です。30代から出現する方もいらっしゃいますが、比較的年齢層が高い方にできやすい傾向があります。脂漏性角化症は、一般的なイボとは異なり、ウイルスが原因ではないため、人に感染することはありません。
色は茶色や黒っぽい色で、少し表面が盛り上がった形状が特徴です。通常は痛みやかゆみがなく、放置している方も多いです。しかし、見た目を気にして「目立つ場所にできた」「だんだん大きくなってきた」などお悩みを抱える方は治療を検討する方もいらっしゃいます。脂漏性角化症は、悪性化することはないですが、自然に消えることもありません。
原因
脂漏性角化症のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、メラニンの蓄積が影響していると考えられています。
特に顔や手、足のシミは、長い月日をかけて紫外線を浴びることで、皮膚の細胞に異常を引き起こすことが要因とされています。その他にも、遺伝やホルモンバランスなども原因の一つと考えられていますが、老人性イボと呼ばれるだけあって加齢が最も多い原因だとされています。
脂漏性角化症にはレーザー治療が効果的
脂漏性角化症の治療には主に、脂漏性角化症には2種類のレーザー機器が用いられています。それぞれのレーザーについては、後述します。
脂漏性角化症にはレーザー治療が効果的で、手術と比べて出血が少なく、治療後の回復が早いのが特徴の治療方法です。特に「きれいに治したい方」や「何度も通うのが難しい方」におすすめです。レーザー治療では、特定の波長を持つレーザー光を皮膚に照射し、脂漏性角化症の原因となる細胞のみを破壊します。そのため早い効果と確実な効果を得られる治療法として、幅広いシミ治療に使われてきました。レーザー治療は、脂漏性角化症だけでなく赤あざや青あざなど、他の皮膚疾患にも幅広く使用されています。
そして、治療後の回復期間が短いため、数日から数週間で日常生活に戻ることが可能です。しかし、治療後の肌は敏感な状態になっているので、日焼け止めの使用や紫外線対策を行いましょう。そうすることで、色素沈着や炎症を予防できます。このように、レーザー治療は「早い回復」かつ「きれいな仕上がり」ができるため、効果的な治療法と言えます。
炭酸ガスレーザーについて
1つ目は、レーザー治療の一つである「炭酸ガスレーザー」について紹介します。
期待できる効果と治療回数
炭酸ガスレーザーは、水分に吸収されやすい特性があり、皮膚に照射すると一瞬で熱エネルギーに変換され、組織を蒸散させます。治療ではこの特性を活かし、脂漏性角化症だけでなく、ほくろやイボの除去にも幅広く利用されてきました。施術するときは局所麻酔を使用するため痛みに弱い人も心配ありません。また、メスが必要な手術よりも傷が浅く出血量も少ないため、皮膚へのダメージが少ないことも特徴です。
基本的には1回の治療で除去が可能ですが、大きさや数に応じて2~3回の治療が必要となることもあります。その時は、施術間隔を1~1.5か月ほど空けて再度照射することが多いです。治療の回数や間隔は状態によっても異なるため、早く治したいという気持ちを抑えて、医師と相談しながら慎重に進めることが大切です。
料金
炭酸ガスレーザーの料金相場については、一般的に3,000円~10,000円程度となっており、脂漏性角化症の大きさによって異なります。そしてこの治療については、保険が適用されない自費治療となるため、クリニックによって差があります。また、イボが発生した部位や大きさによって費用も異なります。詳細な料金が気になる方は、事前にお問い合わせください。
リスクと注意点
炭酸ガスレーザー治療はメリットが多い治療法ですが、いくつかのリスクや注意点があります。まず、施術後に赤みが続くことがあります。通常3~4か月で落ち着く方が多いですが、赤い盛り上がりやくぼみなどができてしまう恐れがあります。特に、深く削りすぎると傷跡が残るリスクが高まるため、施術する部位や照射範囲によっては傷跡が目立ってしまう恐れがあります。
また、施術後は皮膚が敏感になりやすく、テーピングや紫外線対策を1~2週間程度行う必要があります。人によっては、色素沈着や傷跡が残り、複数回の治療が必要な場合もあります。そして、妊娠中や疾患のある方、ケロイド体質の方などは施術ができないケースもあるため、医師と相談することが重要です。
実績が豊富な医療機関を選び、リスクと注意点を十分に理解した上で治療を受けるようにしましょう。
Qスイッチレーザーについて
Qスイッチレーザーは特に、濃い色のシミに高い効果を発揮するレーザーです。茶色や黒っぽい脂漏性角化症の治療によく用いられるレーザー治療です。
期待できる効果と治療回数
Qスイッチレーザーはシミやそばかす、あざの治療によく用いられる治療法です。特に、Qスイッチアレキサンドライトレーザーは、皮膚表面から深層にわたるメラニンをピンポイントで改善できます。この特性により、茶色や黒色のシミ、脂漏性角化症などの治療に幅広く使われています。
治療回数は症状の深さや濃さによって異なりますが、一般的に1~3回の施術で改善する場合が多いです。複数回に渡る場合は、数か月間隔を空けて照射を繰り返すことで徐々に治療を行っていきます。
そして短時間のレーザー照射により、熱の影響を最小限に抑えられるため、周囲の正常組織へのダメージが少ないのも特徴です。しかし炭酸ガスレーザーに比べて、即効性には劣る場合があるため、治療プランについては医師と相談して決めることが大切です。
料金
Qスイッチレーザーの料金は、治療する脂漏性角化症の大きさや個数に応じて異なります。
5㎜以下などの比較的小さい場合は4,000円程度が相場です。ただし、クリニックによって大きさの範囲や個数によって料金が設定されていることがほとんどです。Qスイッチレーザーについても保険適用外となりますので、あらかじめ料金について問い合わせしましょう。
リスクと注意点
Qスイッチレーザーのリスクと注意点としては、まず赤みが2~3か月続くことがあり、体質によってはさらに長期間赤みが残る場合があります。この赤みが治まらない限り、追加照射を行うことはできませんが、経過とともに多くの方は赤みが減少してくのでご安心ください。
また、最も注意が必要なリスクとして炎症後色素沈着(PIH)が挙げられます。治療後の皮膚がレーザーの熱エネルギーによって刺激を受け、シミのように見える色素沈着を起こすことがあります。この現象は再発したように誤解される方も多く、再照射を希望されることも多いです。しかし追加照射はさらに色素沈着を悪化させる恐れがあるため、医師と相談しましょう。
さらに、治療後は肌が敏感な状態になるため、日焼け止めを使用し紫外線を避けることが重要です。かさぶたができている間は、軟膏を塗布し、保護することで早期改善が見込めます。特に紫外線を浴びるとシミが再発しやすいため、できれば日差しの弱い季節に治療を行うと安心です。
まとめ
脂漏性角化症は、皮膚の老化による良性の腫瘍で、通常は痛みや悪性の心配はほとんどありません。しかし、見た目が気になる場合には治療を検討する方も多いです。その中でも、当院が採用するQスイッチレーザー治療は、皮膚を削らずにメラニン色素にのみ反応するため、正常な皮膚へのダメージを最小限に抑えた治療が可能です。
また、跡が残りにくく短期間での回復が期待されるため、脂漏性角化症の治療に適しています。当院は、皮膚の治療を専門に扱う形成外科専門医が在籍しているクリニックです。再発や傷跡が目立ちにくい治療を提案しておりますので、ぜひご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
関連記事
脂漏性角化症を自分で取ることが可能?原因と正しい治療について解説
脂漏性角化症は(老人性イボ)は、基本的に健康面で悪影響が出ないイボなため、放置される方も多い症状です。ただし、イボの位置や大きさによっては見た目が気になってしまった際には切除も可能です。健康に害がないことから、できるだけ治療費を抑えて何とか自力で治せないか検討される方もいらっしゃいます。本記事では、脂漏性角化症を自分で取ることはできるのかどうか解説します。
脂漏性角化症(老人性イボ)について
まずは「脂漏性角化症」(老人性イボ)という症状がどんなものなのか、特徴と原因に分けて詳しく解説します。
特徴
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は別名「老人性イボ」とも呼ばれている通り、中年以降の方に発生することが多いイボの一種です。主に顔や頭部、首筋、手足など、紫外線を浴びやすい部位にできます。見た目の特徴としては、茶色や黒色など濃色であり、表面は少し盛り上がりざらざらしています。大きさや形状は様々ですが、一般的に数ミリ程度から2~3センチ程度と言われています。シミと間違えられることも多く、初期はシミだったものが徐々に盛り上がって脂漏性角化症となることがあります。
この症状は痛みやかゆみを伴わず、放置しても健康上の問題はありませんが、自然に消えることもありません。そのため、顔など目立つ部位にできた脂漏性角化症は、美容的観点から治療を希望する方が多いです。
原因
脂漏性角化症の原因は、医学的に完全には解明されていません。しかし、顔や手足など紫外線を多く浴びる部位に発生しやすいことから、紫外線が影響していると考えられています。皮膚は、紫外線を浴びることで細胞に異常が生じ、異常増殖を始めます。
この異常増殖が、濃いシミのような肌の変化の原因となっているようです。そして脂漏性角化症は、こうした皮膚の変化が加齢とともに徐々に蓄積することで発生するため、若い方より高齢の方に多く見られる症状です。
脂漏性角化症は自分で取れる?
脂漏性角化症を自分で取ることはおすすめしません。市販薬や木酢液などを使って改善を試みる方もいますが、基本的に効果がありません。自分で切ったり削ったりすると傷跡を作る危険性が高く、感染症の恐れがあるので注意しましょう。
また、「木酢液でイボを除去できた」という体験談を目にする機会が多いですが、医学的な根拠はありません。このような方法を自己判断で試すと、思わぬ肌トラブルや症状の悪化を招く危険性があります。特に、顔や目立つ部位に傷跡が残ってしまうとストレスの原因になります。脂漏性角化症の治療を希望する場合は、信頼できる医療機関での治療をおすすめします。
治療法
脂漏性角化症の治療法には、主に2種類の治療方法が採用されています。
- ・レーザー治療
- ・冷凍凝固療法
レーザー治療
脂漏性角化症の治療には、炭酸ガスを使用したレーザーが多く用いられています。この治療法は、レーザーを照射して皮膚内の水分を蒸散させることで、脂漏性角化症を除去する方法です。治療中の出血が少なく、施術時間が短いのが特徴で、特に顔や首などデリケートな部位でも安心して受けられます。
特に炭酸ガスレーザーでは、後述する液体窒素の治療より色素沈着のリスクが低く、数か月程度で色素沈着も落ち着いてきます。レーザー治療は、周囲の正常な皮膚を傷つけることなく除去できるため、初めての方でも安心して治療を行えます。しかし、この治療は保険適用外であるケースもあり、自己負担額が大きくなる可能性があるデメリットがあります。とはいえ、治療期間の早さや肌への負担を最小限に抑えられる点で、幅広い年代の方に採用されている治療法です。
冷凍凝固療法
冷凍凝固療法は、脂漏性角化症の治療で最も一般的かつ保険適用の方法です。この治療法では、マイナス196℃の液体窒素を使用して異常な表皮細胞を凍結し、壊死させることで除去します。費用が抑えられるのが大きなメリットですが、治療時や治療後に痛みを伴うことがあります。
また、適切な凍結強度の調整が重要です。冷凍が不十分だと再発しやすく、過剰に冷凍すると瘢痕(はんこん)が残るリスクがあるため、施術者の経験が重要です。さらに、治療後は半年から2年程度、炎症後の色素沈着が残ることが多く、特に顔面では美容的な課題となる場合があります。脂漏性角化症の数が少なく、見た目を大きく気にしない場合に適した治療法ですが、美容的な影響を考慮する場合は他の方法を検討することも重要です。
放置した場合のリスクと注意点
脂漏性角化症は痛みやかゆみなどの症状がなくガンなどの悪性に変異することもほぼありません。しかし放置した場合、下記3つのリスクやデメリットを伴う可能性があります。それぞれ詳しく解説します。
- ・自然治癒しない
- ・再発の可能性がある
- ・悪性腫瘍と間違われる可能性がある
自然治癒しない
脂漏性角化症は、自然に治癒することはありません。むしろ年齢を重ねるごとに数が増える傾向があります。この症状は明確な原因が判明していませんが、紫外線や皮膚の老化が主な原因とされており、一度できたものが自然に消えることはありません。しかし、日常的に肌が服などによって擦れて摩擦が起こることで、表面の角化部分が剥がれ落ちる場合があります。
一時的に色が薄く感じる方もいらっしゃいますが、根本的な改善にはなっていないため注意しましょう。そして、良性の皮膚腫瘍であるため緊急性はありませんが、顔や首など目立つ部位に発症しやすいため、見た目を気にされる方が多い症状です。
再発の可能性がある
脂漏性角化症は、治療を行っても再発する可能性があることを理解しておきましょう。治療を行っても細胞が残ってしまうケースがあり、数ヶ月〜数年後に再発する可能性があります。そして、一時的にサイズを小さくしたり、目立たなくする方法として、液体窒素を使った凍結療法やレーザー治療が有効ですが、傷跡が残るリスクがあります。
また、治療後は炎症が起こりやすく、炎症後色素沈着が生じることがあります。色素沈着では、茶色い色が残ったり、逆に色が抜けることもあります。脂漏性角化症は、一度除去しても再発することが多いため、治療方法についてよく相談することが重要です。また、新たな発生を防ぐためにも、紫外線対策などを行うことをおすすめします。
悪性腫瘍と間違われる可能性がある
脂漏性角化症は良性の皮膚腫瘍ですが、見た目が悪性腫瘍と似ている疾患もあるため、自己判断には注意しましょう。特に間違われやすい悪性腫瘍には、悪性黒子や日光角化症、有棘細胞がんなどが挙げられます。悪性黒子は悪性黒色腫(メラノーマ)の一種で、色が褐色や黒っぽいシミの様に見えるため、シミやほくろと区別がつきにくい特徴があります。
悪化すると、内臓にまで転移する可能性があるため、早期発見が重要になる疾患です。日光角化症は紫外線によって発生しやすい悪性腫瘍で、放置すると一部が有棘細胞がんに進行する場合があります。特徴としては、赤みが強く、触ると硬さを感じる人も多いです。
特に、ジュクジュクと腫瘍部分が崩れてきた場合は早急に治療を行いましょう。有棘細胞がんの初期段階では、イボと間違われやすい顔や手にできやすいです。皮膚が盛り上がり、時に表面が崩れたり悪臭を放つことがあります。
そのため脂漏性角化症と思われる症状でも、悪性腫瘍の可能性を考慮して、早めに医師に相談することが大切です。
まとめ
脂漏性角化症は、原因が明確に判明していませんが、加齢とともにできやすい良性の皮膚疾患です。悪性腫瘍であることが少なく、放置しても基本的には問題はないと言われています。しかし、目立ちやすいイボであるため、見た目が気になり治療を希望する方も少なくありません。
治療には、レーザー治療や保険適応できる冷凍凝固療法などもありますので、症状に合わせて医師と相談しましょう。当院は、形成外科の専門医が在籍しており、傷跡を最小限に抑えた治療を行っています。土日も診察していますので、脂漏性角化症などお肌のお悩みにはぜひ当院をご利用ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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脂漏性角化症は市販薬で治療できる?効果的な治療方法や注意点を解説
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は、良性腫瘍の一種のため、放置していても問題はありません。しかし、「見た目が気になる」「市販薬で治せるなら治療したい」という方も多いのではないでしょうか。しかしながら、脂漏性角化症は市販薬では治療効果を得られません。
今回は、脂漏性角化症が市販薬で治療できない理由や、治療方法、注意点について解説します。脂漏性角化症でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
脂漏性角化症(老人性イボ)とは
まず、脂漏性角化症の症状や原因について解説します。
脂漏性角化症の症状
脂漏性角化症の症状は、以下のとおりです。
特徴 | 褐色~黒色の隆起した斑点のようなものが現れる |
---|---|
部位 | 顔・首・背中・胸部など日光があたる箇所にできやすい |
大きさ | 数mm~数cm(徐々に大きくなることもある) |
痛みやかゆみ | 基本的にはないが、摩擦などの刺激でかゆみを感じる場合がある |
脂漏性角化症は良性のため、悪性の腫瘍に変化するリスクは限りなく少ないとされています。ただし、見た目が気になる場合や症状が急激に変化した場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
脂漏性角化症の原因
脂漏性角化症の原因は、主に以下のとおりです。
- ・紫外線
- ・加齢
- ・遺伝
- 脂漏性角化症は、皮膚の表皮基底細胞の遺伝子に異常が起こることで発症します。脂漏性角化症は老人性イボとも呼ばれており、40代以降で発症することが多い腫瘍です。加齢に伴い、皮膚のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)が遅くなり、脂漏性角化症のような良性腫瘍が形成されやすくなります。
脂漏性角化症に効果がある市販薬はない
脂漏性角化症に効果がある市販薬は、今のところ確認されていません。効果がない理由や治療方法については後ほど詳しく解説しますが、外用薬では治療効果がないといわれています。
また、無理に自分で処置すると悪化する可能性があるため、触ったり潰したりしてはいけません。脂漏性角化症は、市販薬や自己処置では治療が難しい疾患のため、医師に相談し正しい診断と治療を受けることが重要です。
市販薬が脂漏性角化症に効果がない理由
市販薬が脂漏性角化症に効果がない理由は、以下のとおりです。
ウイルス性イボではないため
脂漏性角化症は、ウイルス性のイボではないため、市販薬では治療効果が得られません。ウイルス性イボとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚に感染して発生する良性腫瘍です。
脂漏性角化症は、皮膚が角質化して盛り上がった良性腫瘍の一種であるため、市販薬で治療するのは難しいのです。腫瘍を柔らかくする程度の効果は得られても、根本的に症状を改善することはできません。
物理的な治療が必要なため
脂漏性角化症は、外用薬や内服薬ではなく物理的な治療が必要なため、市販薬だけでの治療ができません。皮膚が盛り上がって角質化しており、薬の成分が内部まで浸透しないため、外用薬だけで治療するのは困難なのです。
市販薬では皮膚の表面を柔らかくする程度の効果しか得られず、角質や腫瘍自体を除去することは難しいため、物理的な除去が必要になります。
脂漏性角化症に効果的な治療方法
脂漏性角化症に効果的な治療方法は、以下のとおりです。
液体窒素療法
液体窒素療法は、低温液体窒素を用いて患部を凍結し、細胞を破壊する治療方法です。保険治療が可能で、液体窒素療法を導入している病院は多くあります。
液体窒素療法はマイナス196℃の超低温の液体を患部に当てるため、強い痛みを感じることが特徴です。強く当てると治りも早くなりますが、痛みも強くなるため、基本的には数回に分けて治療を行います。
また、治療後は凍傷ややけどのような反応が起きるため、痛みを感じたり水ぶくれや血豆ができたりします。痛みは2~3日続くこともありますが、治療箇所はかさぶたとなり自然と剥がれ落ち、きれいな皮膚が再生されます。
レーザー治療
脂漏性角化症は、炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザーなどのレーザー治療も可能です。基本的に保険適用外ですが、1回の治療で済みます。
レーザー治療は再発がしにくく、色素沈着も起こりにくいことが特徴です。傷跡がほとんど残らないため、特に顔などの目立つ部分の治療に適しています。保険治療ができないケースが多いため、治療費は高くなりますが、きれいかつ早く治したい方は選択肢に入れてよいでしょう。
電気焼灼法
脂漏性角化症は、電気焼灼法でも治療可能です。電気焼灼法は保険適用外で、電気メスの高周波電流で患部の表皮を薄く削り取る治療方法です。
局所麻酔を行い、電気メスで患部を焼き切るため、比較的正確な処置ができます。施術中の痛みはほとんどなく、再発のリスクも少ない点が特徴です。治療後は、色素沈着や傷跡が残る場合があります。
市販薬で治療できないイボ
市販薬で治療できない他のイボは、以下のとおりです。
脂漏性角化症(老人性イボ)
先述したとおり、脂漏性角化症は市販薬で治療できません。良性腫瘍なので、放置していても問題ありませんが、気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
水イボ
水イボも市販薬で治療できません。水イボはウイルス性の感染症で、一般的な市販薬では治療効果がありません。反対に、市販薬を使用すると周囲の皮膚を刺激して炎症を起こし、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
水イボは1年程度で自然治癒することもありますが、接触感染するため感染が広がる場合もあります。そのため、病院を受診することが望ましい疾患です。
尖圭(せんけい)コンジローマ
尖圭コンジローマも、市販薬では治療できません。尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)による性感染症の一種で、性器周辺に先のとがったイボができます。
痛みがないため発見が遅れやすい疾患ですが、放置していると大きくなったり他の部位に広がったりするため注意が必要です。自然治癒することもありますが、感染するイボなので早めに病院を受診しましょう。
市販薬やスキンケア用品に関する注意点
市販薬や市販のスキンケア用品に関する注意点は、以下のとおりです。
用法・用量を間違えると症状が悪化する可能性がある
イボの市販薬やスキンケア用品を使用する際、用法用量を誤ると症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。指示を守らずに誤った使用をすると、症状が悪化するリスクがあります。
また、症状によっては市販薬を使用しても効果を得られないものがあります。使用中に、かゆみ・赤み・腫れ・痛みなどの異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医師に相談しましょう。
市販のスキンケアアイテムには限界がある
市販のスキンケアアイテムには限界があり、症状の改善に向けた効果を期待できる範囲が限られています。特定の症状や重度の症状の場合は、効果が期待できません。
スキンケア用品には、皮膚の保湿や基本的な保護に効果がありますが、イボそのものを除去する効果はありません。また、スキンケア製品そのものが皮膚のトラブルを招く可能性もあるため、注意しましょう。
まとめ
脂漏性角化症は、市販薬では効果が得られません。治療をする際は、液体窒素やレーザー治療など、物理的な治療が必要です。液体窒素やレーザー治療など、さまざまな治療方法があるため、自身の希望に合った治療方法を選ぶことが大切です。
脂漏性角化症は良性腫瘍なので、基本的に放置していても問題ありませんが、別の病変の可能性もゼロではないため、気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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脂漏性角化症の原因は?治療方法と予防方法も解説
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は、加齢や遺伝などさまざまな要因で発症する良性腫瘍の一つです。放置していても問題はないため、治療は必須ではありません。しかし、見た目が気になる箇所にできた場合、治療を検討する方も多いのではないでしょうか。
今回は、脂漏性角化症の詳しい原因について解説します。また、治療方法や予防方法についても紹介するので、脂漏性角化症にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
脂漏性角化症(老人性イボ)の症状
脂漏性角化症は良性腫瘍で、特に加齢とともに多く見られるため「老人性イボ」とも呼ばれます。脂漏性角化症の主な特徴は、以下のとおりです。
脂漏性角化症の症状 | |
---|---|
見た目 | ・表面が盛り上がった隆起性の病変 ・ザラザラしているものもあれば滑らかなものもある |
色 | 薄茶色・濃い茶色・黒などさまざま |
大きさ | 数mm~数cm |
かゆみ・痛み | 基本的にないが、摩擦や刺激によってかゆみや炎症を感じる場合がある |
好発部位 | 顔・首・背中・胸・腕など |
脂漏性角化症は、見た目がイボやシミと似ているため、自分で判断することが難しい症状です。良性腫瘍のため放置していても問題はありませんが、見た目が気になる場合や、かゆみや痛みを感じる場合は治療を検討するとよいでしょう。
脂漏性角化症の原因
脂漏性角化症の考えられる原因は、以下のとおりです。
皮膚の老化
皮膚の老化、つまり加齢が脂漏性角化症の原因の一つです。脂漏性角化症は皮膚の老化現象とされており、80歳以上ではほぼ全員に見られるものです。
通常40代以降に発症することが多い疾患ですが、遺伝の影響や紫外線の影響によって20代頃に発症する場合もあります。ただし、加齢によって脂漏性角化症が発症しやすくなることは事実です。予防方法は後ほど詳しく解説しますが、早期の予防が重要とされています。
紫外線
脂漏性角化症は、日光にさらされやすい部位(顔・首・手など)に好発するため、紫外線も原因の一つと考えられています。紫外線が皮膚細胞にダメージを与え、遺伝子に異常が起きることが原因です。
また、紫外線の影響でメラニンが過剰に分泌されるため、脂漏性角化症は色素沈着を伴い、濃い色になることがあります。
遺伝子変異
脂漏性角化症は、遺伝的な要因も関係していると考えられています。家族に脂漏性角化症の人がいる場合、発症するリスクが高くなるためです。
遺伝が原因の場合、完全に予防することは難しいとされています。紫外線対策をしっかり行うことや、定期的に皮膚をチェックすることが重要です。
脂漏性角化症の疑いがあるイボを見つけた際の対応方法
脂漏性角化症の疑いがあるイボを見つけた際は、皮膚科を受診しましょう。脂漏性角化症のように見えても、他の疾患の可能性も考えられます。ウイルス性のイボや皮膚がんの一部である可能性も考えられるため、自己判断で市販薬を使用するのは避けた方がよいでしょう。
また、自分で処置すると症状が悪化する可能性があります。イボを触ったり潰したりすると、感染症を引き起こすことがあるため注意しましょう。
脂漏性角化症の治療の必要性
脂漏性角化症の治療は必須ではありません。脂漏性角化症はウイルス性の疾患ではなく、感染が拡大する心配がないためです。多くの場合、痛みやかゆみを伴わないため、治療をしなくても健康面に影響はありません。
そのため、治療を行わずにそのままにしておく、もしくは定期的に様子を見て必要に応じて医師に相談するという選択肢もあります。見た目が気になる場合や、摩擦によって痛みを感じるなど日常生活に支障をきたす場合は、治療を検討するとよいでしょう。
繰り返しになりますが、自己処置すると再発や悪化する可能性があるため、自分で対策するのは避けましょう。
脂漏性角化症の治療方法
脂漏性角化症の治療方法は、以下のとおりです。
液体窒素による冷凍凝固
液体窒素による冷凍凝固が、脂漏性角化症の治療方法の一つです。低温の液体窒素を用いて患部を凍結し、細胞を破壊します。液体窒素治療のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・保険適用で治療できる ・治療中に強い痛みを伴う ・数回の治療が必要になる可能性がある |
・施術時間が短い ・治療後に赤みや腫れ、色素沈着が残る可能性がある |
電気メスでの切除・焼却
脂漏性角化症の治療は、電気メスで切除・焼却する方法もあります。電気を用いて脂漏性角化症を焼き切る治療方法ですが、局所麻酔を行い施術するため、痛みはほとんどありません。
メリット | デメリット |
---|---|
・短時間で確実に除去できる ・再発のリスクが低い |
・出血が少ない ・治療後に軽い痛みや傷跡が残る可能性がある ・保険適用外 |
IPL(光治療)
IPL治療も、脂漏性角化症の治療方法の一つで、高エネルギーの光を皮膚に照射し肌のトラブルを改善します。IPL治療のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・傷跡が目立ちにくい ・治療中の痛みが少ない |
・ダウンタイムが短い ・残存や再発のリスクがある ・保険適用外 |
レーザー治療
レーザー治療も、脂漏性角化症の治療方法の一つです。レーザー治療にはさまざまな種類があり、脂漏性角化症は炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザーなどを用いて治療します。レーザー治療のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・周囲の皮膚への影響が少ない | ・治療後の見た目がきれい ・保険適用外のため治療費が高額になる場合がある |
脂漏性角化症は再発しやすい
脂漏性角化症は、再発しやすいイボです。再発しやすい理由は、完全に脂漏性角化症を取り切れないためです。
特に、厚みのある脂漏性角化症は、基底細胞が残り数ヶ月から数年後に再発する可能性があります。反対に、完全に取り除けば再発の心配はほぼありません。ただし、新しい場所に別の脂漏性角化症が現れる可能性があります。
脂漏性角化症の予防方法
脂漏性角化症の予防方法は、原因の一つである紫外線対策を行うことです。紫外線は、メラニン生成を促進させ、シミや色素沈着の原因となります。
そのため、季節を問わず、外出時は日焼け止めを使用することが重要です。特に、顔・首・手など、日光にさらされやすい部分の対策をしっかり行いましょう。さらに、帽子や日傘、サングラスなどを使うことで、紫外線によるダメージを軽減できます。
紫外線予防をすることで、脂漏性角化症の発症リスクを減らし、皮膚の健康を守れます。
まとめ
脂漏性角化症の主な原因は、加齢・紫外線・遺伝です。特に40代以降の方に発症しやすい疾患ですが、遺伝的要素や紫外線の影響によって、若い世代に現れることもあります。
治療は必須ではありませんが、自分で処置すると症状の悪化や感染症を招く原因にもなるため注意が必要です。見た目が気になる場合や日常生活に支障をきたす場合は、医師に相談し治療を検討しましょう。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。