粉瘤と間違えやすい腫瘍【外毛根鞘性嚢腫】症状/治療法
外毛根鞘性嚢腫とは
ほとんどが頭部にできます。粉瘤と同様に少しずつ大きくなり、被膜が破れ、内容物が皮膚の中で漏出すると異物反応が起こり、炎症が始まります。診察では粉瘤と区別することは出来ません。
病理組織は最外層壁は基底細胞様細胞が棚状配列し, 内層壁は層状構造を示し, 顆粒層がなく、角化を認める。
腫瘍自体はほとんどが良性です。女性に比較的多く、40-50歳代で多くなります。
腫瘍が大きくなると毛根に影響を与えてしまい、毛髪がチヂレたり、ハゲになったりします。炎症した場合には毛根のダメージは大きくなり、大きなハゲを作ってしまう場合もあります。
まれに、悪性腫瘍がみつかる場合もあるので注意が必要です。
原因
粉瘤同様にはっきりとは分かっていません。
診断
エコーにて診断できます。特徴は、皮下に存在する境界明瞭、辺縁整な低~無エコー腫瘤。内部に石灰化を疑う高エコースポットを認める。
炎症が起こるとエコーでの臨床像に変化が起こります。大きい場合にはCTやMRI検査を行う場合もあります。
鑑別疾患
粉瘤、外骨腫、石灰化上皮腫、脂肪腫など
治療
手術による摘出を行います。くりぬき法で摘出することが出来ます。炎症を繰り返す場合には切開による摘出を考慮します。
毛髪が失われている場合には注意が必要です。腫瘍を摘出し、約半年は毛髪の経過を診ます。腫瘍を摘出することで、毛髪が正常になる部位があるからです。それでも生えない場合には再手術を行い、ハゲの部位を切り取ります。そうすることで創部は目立たなくなります。
今回の症例ではくりぬき法で毛髪に影響を与えている部位をくり抜きました。
内容物を圧排し、腫瘍を小さくします。
外毛根鞘性嚢腫の場合には粉瘤に比べると、被膜がかなりしっかりしている場合が多いです。そのため、腫瘍がしっかりと一塊で摘出出来ます。
創部を縫合して手術を終了します。
形成外科専門医 古林玄
頭にできた粉瘤の治療 外毛根鞘性嚢腫/くり抜き法
今回は東京院の症例です。
頭部に粉瘤ができ、大きくなり過ぎて一部ハゲができてしまっています。腫瘍事態が毛根に影響を与えてしまい、毛根が死滅しています。腫瘍切除する事で一部の毛根から毛が生えることはありますが、長い期間が経ってしまうとハゲになってしまいます。
更に炎症が起こってしまうと、毛根は更に死滅してしまい、禿髪の範囲が広がります。炎症の程度や期間によって毛根が残るかは変わってきますが、炎症前の切除が非常に大事になります。
今回はハゲてしまっている部位の切除を行いました。更に小さな傷から腫瘍切除は可能でしたが、術後に毛髪のない部位が残ってしまうので、大きく切除しています。
切除した組織です。袋の中身は水分も含まれており、一部漏れ出てしまっていますが、皮膜を丸ごと摘出しています。
腫瘍は4cm大であったため、腫瘍切除部位には死腔という空洞が出来てしまいます。術後に血腫が溜まってしまう可能性もあるため、16Gサーフロー(点滴用に使用する管)を挿入し、創部は圧迫します。
基本的には毛に隠れて術後から傷はそんなにも目立ちません。
術後は1ヶ月から3ヶ月で創部周囲の毛髪も生えてくるため、更に傷は気にならなくなります。
また炎症が起こっている症例では炎症により毛根が死滅してしまっているが、手術時には毛髪だけが残っている場合もあるため、術後から毛がない部位も出てきてしまうことがあります。術後に創部がハゲてしまった場合には再度毛髪のない部位を切除することによりハゲをなくすこともできます。あまりにも毛のない範囲が広い場合には植毛になることもあります。少なくとも術後3ヶ月は様子を診てから手術を考慮するべきだと考えます。
形成外科専門医 古林玄