耳にできた粉瘤(アテローム)の治療 日帰り/切開法
耳裏に出来た粉瘤の摘出について解説します。最後に動画も貼り付けていますので苦手でなければ観てください。
耳は粉瘤の比較的出来やすい場所です。
耳の周りは脂腺が多く、たくさんの脂が出ます。体質にもよりますが男性に多い傾向にあります。
また耳はヒトのカラダの部位でも特に立体的な部分でもあり、老廃物が溜まりやすいことも原因になります。耳の裏面から頚部にかけてが特に粉瘤が出来やすい部位になります。
耳の皮膚は薄いため、背部のように皮膚の下でこっそりと大きくならずに、浅い皮膚の下で大きくなるため、比較的大きくなった際にすぐに見つけられます。
大きくなると皮膚を拡張してしまうため、くりぬき法で皮膚を残して摘出すると、皮膚が余り、術後に形態が悪くなってしまいます。
そのため、皮膚の浅い部位である程度大きくなってしまった粉瘤は切開により余剰皮膚を切除しながら、腫瘍の摘出をする必要があります。
そのため、余剰皮膚をある程度計算に入れながら切開ラインをデザインします。デザインを行い、消毒をした後に局所麻酔を打ちます。耳は元々鈍感な部位であるため、比較的麻酔の痛みも少なく手術ができます。
メスで切開を行い、腫瘍の周囲の剥離を行います。
今回の症例では粉瘤の開口部は表側にあったため、表の開口部を2㎜パンチでくりぬき、表側は出来るだけ傷が目立たないように処理しています。開口部は必ず切除しないと再発してしまうので、術中によく確認しなければいけません。しかし、炎症を繰り返している時には開口部が行方不明になることもあり、再発の要因になることもあります。また、元々開口部がない症例もあります。
開口部を摘出できたところで、腫瘍を摘出します。
腫瘍を摘出した後は創部の止血を確認します。術後に出血があると創部内に血腫ができるため、注意が必要になります。血腫が出来ると感染の原因になったり、傷の治りが遅れたりするため、創部に大きな空洞(死腔)が出来る場合にはドレーンという管を挿入する場合もあります。
また術後に運動をすることで血圧が上がり、血が出ることもあるので基本的には術後は安静が必要になります。心臓にステントが入っている患者様はバイアスピリンなどの抗凝固剤を飲んでいる場合があるため、血腫の可能性が上がってしまいます。小さな腫瘍を摘出する場合にはそのまま当日手術をすることが出来ますが、大きな脂肪腫を摘出する場合などにはバイアスピリンを術前に中止する必要がある場合もあります。
十分に止血を確認後に創部の縫合を行います。
術前に余剰皮膚をある程度は計算しますが最終的には微調整が必要になります。耳の裏側でも皮膚が薄い部位は術後にドッグイヤーが目立つこともあるため、皮膚を調節しながら縫合します。結果的には傷は長くなってしまいますが、腫瘍により皮膚の緩みがある部位は比較的、綺麗に治癒することができます。
基本的に抜糸は約1週間後としています。糸を長く放置してしまうと、細い糸でも糸の痕が残ってしまいます。
そして、術後は軟膏処置をしっかりして頂いています。術後に軟膏が塗れていないと糸がバイ菌の感染源になり、炎症により傷痕が残りやすくなります。術後の1週間は傷が治る上では1番大切な時期であるため、炎症を起こさずに治癒させることが非常に大事になります。
抜糸後はテープ固定とヒルドイドによる処置を1ヶ月から3ヶ月の間していただいています。
一般的な傷の治癒として術後1ヶ月は傷は硬くなり、3−6ヶ月かけて少しずつ柔らかくなります。意外に傷が治るのには時間がかかってしまいます。
また今度、傷の治癒についてもブログをアップさせてもらいますね。
形成外科専門医 古林玄