脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は、良性の皮膚腫瘍で、顔や体に褐色や黒色のざらざらした盛り上がりのある腫瘍です。この腫瘍は良性であるため、放置していても問題ありません。
しかし、見た目が気になることから、自宅で治療できる方法を探したり、市販のヨクイニンなどを試したりする方もいらっしゃいます。ただし、脂漏性角化症は一般的なイボとは異なるため、市販薬の効果は科学的に証明されていません。
確実に除去するには、専門医による適切な治療を受けることが大切です。本ページではヨクイニンが効果的か、また効果的な治療について詳しく解説します。
脂漏性角化症とは
脂漏性角化症は、皮膚疾患の中でも頻度の高い腫瘍の一つです。主な原因としては、明確に判明していないものの、長年にわたる紫外線の影響や加齢に伴う皮膚の変化が考えられています。
特徴
特に高齢の方に多く、顔や頭部にできやすいのが特徴です。見た目は、皮膚の表面が盛り上がり、褐色や黒っぽい色でざらついた斑点があります。
大きさは、数ミリ程度の小さなものから2~3センチほどに及ぶものまでさまざまで、形状も平らに近いものから、明らかに盛り上がったしこりのようなものまであります。初期段階ではシミと見分けがつきにくく、時間の経過とともに盛り上がりが目立ち、脂漏性角化症だと気づく方も少なくありません。
症状
通常、痛みやかゆみなどの自覚症状はありませんが、サイズが大きくなると、衣類や指などが触れることで擦れて出血したり、炎症を引き起こして赤みやかゆみを感じる場合があります。
また、脂漏性角化症は見た目がほくろや皮膚がんと似ていることがあり、肉眼だけでは正確な診断が難しいこともあります。
そのため、自己判断せずに早めに医師に相談することをおすすめします。
市販薬のヨクイニンは脂漏性角化症に効く?
脂漏性角化症は「老人性イボ」とも呼ばれますが、ウイルスが原因のイボとは異なり、皮膚の良性腫瘍の一種です。
そのため、市販のイボ治療薬やヨクイニンなどでは効果がありません。
漢方薬の「ヨクイニン」とは、ハトムギの種子から作られた生薬であり、肌荒れやウイルス性のイボの治療として使用されることがありますが、脂漏性角化症には有効性が証明されていないため注意しましょう。
他にも皮膚科などで処方されるオキサロール軟膏やトレチノインも脂漏性角化症には効果がないとされています。
そのため、脂漏性角化症が気になる場合は、市販薬を使用するのではなく、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。
脂漏性角化症の効果的な治療法
脂漏性角化症の主な治療には「レーザー治療」や「凍結療法」「外科手術」の3つが挙げられます。
それぞれの治療にはメリットやデメリットなどが異なるため、症状やライフスタイルに合わせて治療を決めることが大切です。
レーザー治療
レーザー治療は、熱エネルギーを照射して腫瘍の細胞を蒸散させて取り除く方法です。切除手術と比べると出血が少なく、施術時間が短いのが特徴となっています。
そして、正確に腫瘍部分だけにレーザーを照射できるため、まわりの健康な皮膚を傷つける心配がほとんどありません。そのため、顔や首などのデリケートな部位でも安心・安全に施術を受けることができる治療法です。
また、治療後の回復が早く、数日から数週間で普段の生活に戻れるのも大きなメリットです。特に、できるだけ通院回数を少なくしたい方や傷跡をできるだけ目立たないようにしたい方に適しています。
ただし、施術後の肌は敏感になりやすいため、日焼け止めを使用し、紫外線対策をしっかり行い、色素沈着や炎症を防ぐためのケアを行いましょう。
液体窒素を使用した凍結療法
凍結療法とは、液体窒素を腫瘍部分に当てて凍傷を起こし、組織を破壊して自然に剥がれ落ちるのを待つ治療法です。時間の経過とともに腫瘍は壊死し、かさぶたとなって取れていきます。凍結療法は、脂漏性角化症だけでなく、ウイルス性のイボや首イボなど、幅広い治療に用いられています。
治療を行っている時は、強い冷たさや痛みを感じる方が多いです。治療後には水ぶくれや血豆、痛みが続く場合がありますが、通常は2週間ほどで回復していきますので安心してください。
しかし、炎症後は色素沈着が起こる可能性があるため、特に顔など目立つ部位に凍結療法を使用する際は注意しましょう。
凍結療法は1回で完全に除去できないこともあり、再発のリスクがある点や、複数回の通院が必要な点を理解しておきましょう。
施術後は清潔に保ち、かさぶたなど腫瘍を必要以上に触らないようにすることが大切です。
外科手術
外科手術では、メスなどの特殊な器具を使用して腫瘍部分を切除する治療法です。この方法の最大のメリットは、再発のリスクが極めて低いことです。
外科手術を行うことで、目に見える腫瘍細胞だけでなく、周りに潜む組織も一緒に取り除けるため、再発を防げます。
また、外科手術は保険適用のため、自己負担額を抑えて、確実な治療を受けることができます。
手術後は、時間とともに傷跡は目立たなくなりますが、気になる場合は医師に相談すると安心です。
脂漏性角化症に類似した皮膚疾患
脂漏性角化症は、見た目が似ている様々な疾患が存在します。中には早期治療が必要なケースもあるため、自己判断による放置は避けましょう。
ここでは、よく間違われやすい2つの疾患について解説します。
脂漏性角化症 | 老人性色素斑 | ホクロ | |
---|---|---|---|
見た目の特徴 |
・数ミリから2.3センチ ・盛り上がりがある ・赤茶色や黒色 |
・数ミリ程度から数センチ ・円形 ・境界がはっきりしている |
・数ミリから1.5センチ ・境界がはっきりしている ・褐色や黒色 |
老人性色素斑
老人性色素斑は、加齢とともにできやすいシミの一種です。一般的に多くの方が「シミ」として認識しているのが老人性色素斑となります。特に顔や手の甲、前腕など、紫外線をよく浴びやすい部位にできやすいです。
このシミは、1つだけ現れることもあれば、複数できることもあります。「老人性」という名前がついていますが、早い人では30代から、一般的には40代以降に増えてくる傾向があります。
基本的に良性のシミなので、放置しても問題はありませんが、美容的な理由で気になる場合は、レーザー治療や美白剤を使ったケアを行う方が多いです。治療を行うと共に、新たなシミを防ぐことも大切になるので、紫外線対策をしっかり行うことが大切です。
ホクロ
ホクロは、皮膚にできる茶色や黒色の小さな点の総称です。多くの方の肌には、ホクロがあるため身近な存在と言えるでしょう。しかし、一見ホクロに見えても実際には別の皮膚腫瘍であることも少なくありません。
また、見た目がホクロに似ていても、皮膚がんの可能性も否定できないため注意が必要です。
特に、大きくなる、盛り上がる、色が変わる、出血する、かさぶたができるといった変化が見られた場合は、早めに病院を受診しましょう。
他にも、形が不規則なものや、足の裏・手のひら・爪の下にできたものに関しては注意が必要です。
ただし、必要以上に大きく切除すると傷跡が残る場合もあるため、切除を行う際は、専門医と相談しながら慎重に進めることをおすすめします。
まとめ
脂漏性角化症は一般的なイボとは異なるため、市販のヨクイニンなどの治療薬は効果が証明されていません。
そして自己判断での治療は難しく、確実に除去するためには、専門医による適切な治療が必要です。
治療法には、レーザー治療や凍結療法、外科手術などがあり、それぞれの特徴を理解した上で選択することが重要です。
当院では、一人ひとりの症状に合わせたオーダーメイドの治療を行っています。
土日も診察を行っておりますので、お仕事で忙しい方でも治療を行いやすい環境を整えています。
肌のできものでお悩みの方は一度ご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。