化膿性汗腺炎が脇にできた場合の対処方法|見分け方や症状も解説!

「脇が赤く腫れているが化膿性汗腺炎ではないか」
「化膿性汗腺炎にはどのような症状があるのか」

脇のできものが、化膿性汗腺炎ではないかと上記のような疑問をもたれている方がいらっしゃるのではないでしょうか。化膿性汗腺炎は放っておくと進行し、範囲が拡大することがあります。そのため早めの治療が大切です。
本記事では、化膿性汗腺炎の特徴や見分け方などを解説しています。脇のできものが気になっている方は是非ご参考にしてください。

化膿性汗腺炎の主な特長

化膿性汗腺炎は、成長の終わった毛の毛包と呼ばれる、毛根を包む皮下組織が炎症を起こす疾患です。感染症ではありません。
男女比は2〜3:1で男性が多いです。ただし、欧米では1:3で女性が多いデータがあるなど地域によって違いがあります。
化膿性汗腺炎は、20〜40歳に多く発症する疾患です。臀部(お尻)や脇、陰部や足の付け根などに多く発症し、女性では、乳房の下にできることもあります。

化膿性汗腺炎ができる原因は、はっきりとわかっていません。化膿性汗腺炎の発症者の30%〜40%が家族に同じ疾患を持つことから、遺伝の関連性があるともいわれています。また肥満や喫煙、衣服の摩擦による影響があるなど、考えられる原因はさまざまです。

化膿性汗腺炎は、動くたびに患部が擦れて痛いため、動きづらい場合があります。また膿が臭ったり、衣服を汚したりしないか心配になるなど生活の質に影響するおそれがあります。

化膿性汗腺炎の4つの段階ごとの症状

化膿性汗腺炎は、大きくわけて4つの段階で症状が進行します。

結節

初期段階は結節(けっせつ)と呼ばれ、毛穴周辺が小さく腫れてふくらむ症状です。患部は赤く、痛みを伴います。

膿腫・膿瘍

炎症を起こした結節の内部に膿がたまった状態が膿腫(のうしゅ)です。また、皮膚内部で膿のたまった袋が破れて膿があふれ出た症状は、膿瘍(のうよう)と呼び、ぷよぷよした状態となります。

瘻孔

3段階目は、膿瘍から膿が出てくる状態の瘻孔(ろうこう)です。皮膚表面に膿が出てくる場合や、皮膚内部で複数の膿瘍がトンネル状につながる場合があります。

瘢痕

上記の症状を再発し、炎症を繰り返すことで患部の皮膚が厚くなり、縄状の傷跡が残った状態が瘢痕(はんこん)です。

脇にできる化膿性汗腺炎以外のできもの

脇にできる主なできものは、化膿性汗腺炎以外に粉瘤や毛嚢炎などがあります。

粉瘤

粉瘤は、通常は数mm〜数cmほどの半球状に盛り上がったしこりです。初期状態では痛みはありませんが、炎症を起こすと痛む場合があります。
色は肌色もしくは白色で、しこりの中央部に黒い穴があいていることが多いです。粉瘤は、本来であれば外に剥がれ落ちる角質や皮脂が皮膚内に形成された袋に溜まることが原因となります。中に溜まったものはドロドロの粥状で、臭気があるのが特徴です。

粉瘤は良性腫瘍ですが、放っておいても自然に治ることはほとんどありません。むしろ大きくなる場合があります。
見た目の問題や、今後炎症を起こす可能性があることなどから治療した方が良いでしょう。粉瘤は、皮膚内部の袋を取り出さない限り再発することがあるため、手術で袋を取り出す治療をします。

毛嚢炎

毛嚢炎は、毛穴から細菌が入り込み毛嚢(毛包)で炎症が起きた状態をいいます。毛穴の周辺が盛り上がり、赤く腫れ膿が溜まる症状です。

軽い痛みや痒みを伴うことがあります。毛嚢炎は通常、数日〜1週間程度で自然に治ることがほとんどです。
まれに悪化することもあるため、なかなか治らない場合は、医師の診察を受けましょう。

毛嚢炎の原因となる細菌は、常在菌である黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌です。通常は皮膚の上にいて、肌のバリア機能により皮膚内部に入らないようになっています。
しかし、ムダ毛処理などの肌へのダメージや肌の免疫力低下などから細菌が入り込み、毛嚢炎を引き起こすことがあります。

化膿性汗腺炎の見分け方

脇のできものが化膿性汗腺炎かどうかの見分け方は、まず、患部が前述の通り結節や膿腫・膿瘍、瘻孔などの症状があるかです。炎症を起こし、膿が溜まっている場合などは化膿性汗腺炎かもしれません。できものができたり膿が出たりを繰り返す場合は特に注意が必要です。
目安は、半年に2回以上繰り返すなど頻繁な場合は、化膿性汗腺炎の可能性があります。

化膿性汗腺炎が多く発生するのは、脇や臀部(お尻)足の付け根や陰部です。そのため脇のできものは、化膿性汗腺炎の場合があります。
上記は判断の目安となりますが、化膿性汗腺炎かを個人で断定することは難しいです。そのため、少しでも不安があれば医師の診察を受けましょう。

化膿性汗腺炎を自分で治すことは難しい

化膿性汗腺炎を自分で治すことは難しいでしょう。現在、化膿性汗腺炎を治す市販薬は無いためです。
また、自然治癒したかのように見えても再発することが多く、繰り返すことで重症化していきます。そのため、完治を目指すならクリニックでの治療が望ましいでしょう。

しかし、調査によると発症してから病院で化膿性汗腺炎と診断されるまでに平均7年かかっているとの報告があります。
参照:日本皮膚科学会「化膿性汗腺炎診療の手引き 2020」

クリニックでの治療の必要性を感じていても、診察をためらうことも多く重症化するケースがあります。
ごくまれに、有棘細胞癌を併発する例があることからも、化膿性汗腺炎の疑いがあれば早めに診察を受けた方が良いでしょう。

化膿性汗腺炎はどの診療科に行けば良いのか

化膿性汗腺炎の診察は、皮膚科または形成外科で診察できます。皮膚科は、全身の皮膚や爪、毛髪など肉眼で見える範囲の疾患に対応可能な診療科です。

外科治療する皮膚科や、塗り薬などの投薬治療をメインとした皮膚科などさまざまです。
形成外科では、体の表面の異常や変形の修復をおこなっています。例えば火傷や事故で損傷した皮膚の再生などです。また、腫瘍の摘出や手術痕の修復なども可能です。
そのため、手術による傷跡が気になる場合は、形成外科で診察を受けると良いでしょう。

化膿性汗腺炎の治療方法

化膿性汗腺炎の治療法は、外科的治療と内科的治療があります。医師と相談の上、最適な方法を選びましょう。

外科的治療

一つ目は手術による外科的治療です。外科的治療では、患部を切開し中の膿を排出する方法や患部を皮膚ごと切り取る方法があります。
再発を繰り返し重症化した場合には、広い範囲の皮膚を切り取る必要があり、皮膚移植が必要です。早めに診察を受けることで処置の範囲が小さくすみます。

内科的治療

手術による治療が難しい場合には、抗菌薬の内服や軟膏を塗るなど内科的治療で改善する場合があります。ヒュミラなどの皮下注射による治療も可能です。
外科的治療の際にもいえることですが、常に患部の清潔を保ちましょう。また、化膿性汗腺炎の原因ともいわれている喫煙や肥満の解消も重要です。

きれいな傷跡に特化した形成外科

形成外科は、傷口をきれいに治すことに特化しています。形成外科は、生まれつきもしくは怪我などによってできた異常や欠損などを修復する診療科であるためです。
機能面はもちろん、見た目の修復も重要視しています。例えば顔面の骨折や火傷によるケロイドの修復です。また、過去の治療でできた傷跡の修復もおこなっています。そのため、化膿性汗腺炎の治療においても見た目を重要視する方には形成外科が良いでしょう。
当医院では、形成外科の専門医が特殊器具を使用しきれいな傷口に特化した治療をおこなっています。

まとめ

化膿性汗腺炎は、毛穴内部が炎症を起こすことで発症します。遺伝や肥満、喫煙などが影響しているといわれていますが、はっきりとわかっていません。化膿性汗腺炎は、一度できると自然に完治することはほとんどなく、再発を繰り返すうちに重症化します。ごくまれに悪性になることもあるため、早めの治療が大切です。
当医院では、きれいな傷口に特化した治療が可能であり、日帰り手術にも対応しています。できもの全般に関して是非お任せください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。