ほくろがかゆいのは危険?考えられる原因と治療の必要性を解説

「ほくろがかゆくて気になる」「ほくろがかゆいのは何かの病気?」
このような不安を感じたことはありませんか。

ほくろのかゆみは、一時的なものから深刻な疾患のサインまで、さまざまな原因が考えられます。生活習慣や環境が関係していることも多く、日々のケアで予防できることもあります。

この記事では、ほくろのかゆみから考えられる原因や疾患、見逃してはならない症状、日常生活でできる対策について解説します。自己判断による処置は思わぬリスクを招くこともありますので、正しい知識を身につけて正しく対処しましょう。

 

ほくろがかゆいときに考えられる原因

ほくろがかゆいときに考えられる原因は、以下のとおりです。

  • ・物理的な刺激や乾燥による一時的なかゆみ
  • ・アレルギーや皮膚炎などの皮膚トラブル
  • ・皮膚がんの初期症状の可能性

それぞれ詳しく見てみましょう。

物理的な刺激や乾燥による一時的なかゆみ

ほくろがかゆくなる原因としてまず考えられるのは、物理的な刺激や乾燥による一時的なかゆみです。

肌が乾燥しやすい冬場や、衣服やマスクなどがよく触れる部位は摩擦が起きやすくなり、ほくろ周辺が刺激されることによってかゆみを引き起こしやすくなります。特に背中や顔など、衣類や髪の毛がよくこすれやすい部位に注意が必要です。

刺激や乾燥によるかゆみは、深刻な問題に発展することはほとんどありません。保湿ケアで改善されることが多く、数日でおさまるケースが多く見られます。

アレルギーや皮膚炎などの皮膚トラブル

アレルギーや皮膚炎、虫刺されなどの皮膚トラブルが原因でほくろの周辺に炎症が生じ、かゆみを感じることがあります。ほくろそのものに問題があるのではなく、周辺の皮膚の炎症によって引き起こされるものです。

ただし、炎症が長引くと、ほくろの見た目にも変化が生じることがあります。症状が改善しない場合は、専門医の診察が必要です。

皮膚がんの初期症状の可能性

最も注意すべきなのが、皮膚がんの初期症状として現れるかゆみです。特に、長年変化のなかったほくろが急にかゆくなったり、形や色が変わったりした場合は悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性を疑う必要があります。

皮膚がんは、早期発見と早期治療が非常に重要です。気になる変化がある場合は、自己判断で様子を見るのではなく、すぐに専門医の診断を受けましょう。

 

皮膚がんの可能性があるほくろの特徴

皮膚がんの可能性があるほくろには、以下の特徴が見られます。

項目 詳細
Asymmetry(左右非対称) ほくろの形が左右対称でいびつになっている
Border(境界が不明瞭) 周囲がぼやけていたり、ギザギザしている
Color(色が不均一) 黒・茶色・赤・青など、複数の色が混在している
Diameter(直径が6mm以上) 大きさが明らかに拡大している
Evolution(進行性の変化) 短期間でかゆみ・出欠・色・形などの変化が見られる

上記の症状は、英語の頭文字を取って「ABCDEルール」と呼ばれ、医療現場でも皮膚がんを見分ける際の重要なチェックポイントとして広く使われています。これらの兆候が一つでも当てはまる場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

 

「ほくろ」がかゆい場合に考えられる主な疾患

「ほくろ」がかゆい場合に考えられる主な疾患は、以下のとおりです。

  • ・脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)
  • ・悪性黒色腫(メラノーマ)
  • ・基底細胞がん

悪性のほくろの場合は、早期発見と早期治療が重要です。それぞれの症状を詳しく見てみましょう。

脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)

脂漏性角化症は、加齢に伴いできやすくなる良性腫瘍です。表面がザラザラしていたり、かさぶたのような見た目になったります。茶色から黒色まで色の濃さはさまざまです。

見た目がほくろに似ているため間違われやすい症状ですが、かゆみを伴うことがあります。基本的には良性ですが、見た目が気になる場合や発生部位によっては除去処置を行います。

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚がんの一種です。メラニン色素をつくる細胞が「がん化」することで発生します。皮膚がんの中でも悪性度が高いため、早期に除去する必要があります。

ほくろのような見た目から始まり、急速に拡大したり、色や形が変化したりします。かゆみや出血を伴うことも少なくありません。

メラノーマはリンパや血液を通じて全身に転移する可能性があるため、発見が遅れると命に関わることがあります。早期の段階で適切な処置を行うことで予後が改善されるので、違和感がある場合はすぐに受診しましょう。

基底細胞がん

基底細胞がんは、高齢者に多く見られる皮膚がんの一種です。紫外線の影響によって、顔や首にできることが多くあります。

見た目は小さな赤黒いイボのようなもので、かゆみを伴うことがあります。ほくろとの見分けが難しいため、専門医の診察を受けることが大切です。

メラノーマよりも進行は遅く、転移のリスクも低いものの、放置すると周囲の組織を破壊する恐れがあるため早期の診断と治療が必要です。

 

ほくろのかゆみを抑える方法

日常生活で行えるかゆみ対策として、以下のようなものが挙げられます。

保湿ケアを徹底する

乾燥が原因でかゆみが発生している場合は、肌のうるおいを保つことが大切です。保湿クリームやローションなどを使用して、優しくケアしましょう。特にお風呂上がりや就寝前など、肌が乾燥しやすいタイミングでの保湿が効果的です。

保湿剤は、アルコールや香料などの刺激成分が含まれているものは極力避け、敏感肌用や低刺激性の製品を選びましょう。継続的な保湿ケアによって、皮膚のバリア機能が整います。

衣類との摩擦を減らす

ほくろに繰り返し刺激を与えるとかゆみや炎症の原因になるため、衣類との摩擦を減らすよう心がけることも大切です。タイトな服や、チクチクするウールなどの素材を避け、やわらかく通気性のよい素材を選ぶとよいでしょう。

また、下着やインナーの縫い目がほくろに当たらないように工夫することも有効です。衣類との摩擦は見落とされがちな要因の一つなので、定期的に衣類の素材やサイズを見直し、皮膚へのストレスを最小限に抑えるよう心がけましょう。

紫外線対策を行う

日常的に紫外線対策を行うことで、ほくろのかゆみ予防につながります。紫外線は肌にダメージを与えかゆみを誘発するだけでなく、皮膚がんのリスクも高めます。

外出時は、季節や天候にかかわらず、日焼け止めを使用する習慣を身につけましょう。SPFやPAの数値にも注目し、シーンに応じて適切な強さを選んでください。顔や首、腕など露出の多い部分だけでなく、耳や首の後ろ、手の甲も忘れずにケアすることが大切です。

帽子や日傘、サングラスなども併用して、紫外線をできるだけ避ける生活習慣を意識しましょう。

かかない・触らない

かゆみを感じると、つい引っ掻いたり触ったりしてしまいがちですが、かえって症状を悪化させる原因になります。かくことで皮膚が傷ついたり、炎症を引き起こしたりする可能性があります。

どうしても我慢できない場合は、保冷剤や冷たいタオルでほくろ周辺を軽く冷やすことで、かゆみを一時的に和らげられます。かゆみが続く場合は、医師の相談のうえでかゆみ止めなどの外用薬を使用するのも一つの方法です。

 

かゆいほくろを自分で除去するリスク

インターネットやSNS上では、「市販薬でほくろを取る」「自分で除去する」などの情報も散見されますが、自分で処置することはおすすめできません。

不適切な処置によって感染症を引き起こしたり、傷跡が残ったりするリスクがあるためです。また、悪性だった場合、病変の診断ができず発見が遅れるリスクもあります。

除去を検討している場合は、必ず専門医に相談のうえ、適切な処置を受けるようにしましょう。

 

少しでも気になる場合は当院へご相談ください

「ほくろがかゆい」という症状は、乾燥や摩擦といった軽微な原因から、皮膚がんなどの深刻な疾患まで多岐にわたります。特に、かゆみと同時に色・形の変化、出血や拡大が見られる場合は悪性の可能性があるため注意が必要です。

自己判断による処置や放置はリスクを伴うため、気になる症状がある場合は医師に相談することが重要です。日常生活での予防ケアも忘れず、異変に気づいたらすぐに対応しましょう。かゆみを侮らず、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

他にも多数の症例を解説しています。