小さい粉瘤でも放置は厳禁!早めの対策が必要な理由

はじめに

粉瘤(アテローム)とは、皮膚にできる良性腫瘍のひとつです。
「小さいから大丈夫だろう」と放置してしまうと、さまざまなリスクがあります。粉瘤は、ニキビや脂肪腫などと勘違いされやすい症状ですが、自然治癒することはありません。市販の薬では自力で治すこともできないため、早めに病院を受診することをおすすめします。粉瘤は、小さいうちに取り除くことが最適だからです。
本記事では、粉瘤ができてしまった場合の注意点や対処方法を紹介します。粉瘤ができてしまって、どのように処置すればよいのか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

粉瘤(アテローム)とは?

粉瘤とは、皮膚の角質や皮脂などの老廃物が皮膚内に袋状に溜まった「しこり」のことです。良性の腫瘍で、ドーム状に膨らみ中央に黒点が見えることもあります。老若男女問わず誰にでもでき、全身のどこにでも発症します。
老廃物が溜まることにより、独特のにおいを発するのが特徴です。
体質にもよりますが、ひとつできてしまうと他の場所にもできてしまうことはよくあります。
また、悪化すると全身に菌がまわり、発熱する可能性もあるので注意が必要です。
一番してはいけないのが、気になっていじったり自分でつぶしてしまったりすることです。細菌感染によって炎症を起こすきっかけになるので、絶対にしてはいけません。炎症を起こすと、自身が辛いだけでなく治療もしづらくなってしまいます。

粉瘤は自然治癒しない

粉瘤を根治させるためには、外科手術が必要です。
最初の段階では痛みも感じないため気づきにくいことも多いですが、放置していると徐々に大きくなり、赤く腫れあがり痛みを伴います。手術の際は、老廃物のたまった袋を完全に取り出さなければいけません。少しでも取り残してしまうと再発の可能性があり、大きくなってから治療すると痕が残りやすくなるため、小さいうちに手術で取り除くのが最善な治療方法です。

粉瘤の原因

粉瘤が炎症を起こしてしまう原因は、明確には分かっていません。症状の程度は、人によって異なります。
炎症を引き起こす原因が明確ではないため、効果的な予防方法も分からないのが現状です。
そのなかでも、考えられる原因は以下の通りです。

細菌感染による炎症

人の皮膚には、さまざまな細菌がいます。目には見えないこの菌を、「常在菌」と呼びます。
常在菌は、人の肌を守る役割があるため必要な菌です。普段は悪さをすることはありませんが、粉瘤のなかで菌が増えてしまうと、人間の体は防衛反応を示します。防衛反応が働くことによって、炎症を引き起こしてしまうのです。

異物反応による炎症

圧力を受けるなど、外部からの刺激によって炎症を起こすことを「異物反応」と呼びます。
外部からの刺激を受けることによって、粉瘤の袋が破けてしまい、結果として炎症を引き起こします。炎症を起こした粉瘤は、ぶつけたり擦れたりするなどの些細な衝撃でも破裂しやすくなります。
粉瘤が炎症を起こす原因は、異物反応による炎症のケースが多いことが分かっています。

粉瘤を放置することのリスク

粉瘤は、自然治癒することはありません。薬で治すこともできません。
何もせず、粉瘤を放置してしまうと炎症を起こし悪化してしまいます。はじめは小さな粉瘤でも、次第に大きくなり症状によっては膿んでしまい、強い痛みが生じます。痛みの程度は個人差がありますが、なかには日常生活に支障をきたすほどの痛みを感じる方もいます。繰り返し炎症を起こしていると、最悪の場合、元の状態に戻らなくなることもあります。
まれに悪性腫瘍になることもあるので、小さいからといって放置するのはおすすめできません。

また、粉瘤は小さいうちに取り除くことが良いとされています。
粉瘤が大きくなると傷跡も大きくなるためです。小さいうちに取り除けば、傷跡も小さく済みます。
粉瘤を取り除くためには、外科手術が必須です。粉瘤は、袋ごと完全に取り除かなければ完治しません。手術の際に少しでも取り残しがあったり、何もせずに放置したりすると何度でも再発してしまうのです。繰り返す痛みは辛いものです。粉瘤を放置しておくメリットはひとつもありません。

粉瘤と間違えやすい症状

粉瘤と見分けづらく、間違えやすい症状を紹介します。
自分で判断できない場合は、早めに病院を受診しましょう。

ニキビ

ニキビは、毛穴に皮脂が詰まることによって炎症を起こし赤く腫れる症状で、よく粉瘤と勘違いしやすい代表例です。
粉瘤の初期段階では見分けやすいですが、炎症を起こしてしまうと、ニキビと見分けづらくなります。ニキビの場合、市販の外用薬などで症状は改善されますが、粉瘤の場合、外用薬では効果を得られません。
また、ニキビは、炎症を起こし腫れてしまっても数ミリ程度です。粉瘤の場合は、徐々に大きくなり数センチに及ぶこともあります。
また、においも見分けるポイントです。粉瘤は、つぶれていなくても独特なにおいを発する場合があります。

脂肪腫

脂肪腫は、皮膚の下に脂肪細胞が増えて発生する良性腫瘍で、粉瘤とよく似ています。
粉瘤は、ドーム状に膨らんだ開口部の中央に黒点が見えることがありますが、脂肪腫の場合、肌の色は変わりません。
脂肪腫は触ると動き、やわらかいしこりを感じます。一般的に、かゆみや痛みを伴いません。

粉瘤の治療法

粉瘤は、サイズに関係なく薬で治すことができません。必ずしも取り除かなければいけないわけではありませんが、放置しておくと大きくなり炎症を起こしてしまう可能性があるので、小さい段階で取り除くことが望ましいとされています。
まれに粉瘤ではなく、悪性腫瘍の場合もあるため、「小さいから」といって放置しておくのはおすすめできません。
粉瘤を取り除くには外科手術が必須で、健康保険が適用されます。
粉瘤の手術方法は、以下の通りです。

くり抜き法

粉瘤のサイズが小さい場合に行われる手術方法です。
皮膚に小さな穴を開け、袋ごと取り出します。傷跡が小さく、縫合が不要なケースが多いので痕に残りづらいのが特徴です。
手術時間も短いため、患者様への負担が少なく済みます。
サイズが大きくなってしまうと、くり抜き法で行えない場合があります。

切開法

粉瘤のサイズが大きい場合に行われる手術方法です。
皮膚を切開し、粉瘤をまるごと取り出します。再発する可能性は低くなりますが、くり抜き法に比べると傷跡が目立ちます。手術の際は局所麻酔をしますが、日帰りも可能です。

粉瘤の状態にもよりますが、手術痕が全く残らないということはありません。しかし、小さいうちに手術をすれば傷跡も小さく済むのも事実です。
できるだけ早い段階での手術を推奨しています。

まとめ

粉瘤は、小さくても放置してはいけません。
放置していると赤く腫れあがり、痛みを伴った炎症を引き起こします。悪化してしまうと自身が辛いだけではなく、手術の痕も大きくなってしまうため、早めの治療に越したことはありません。
自然治癒することはないので、気になるできものができた場合は、我慢せずに早めに専門医に相談しましょう。
当院では、患者様の症状に合わせ適切な手術方法を選択しています。手術の際に、極力痛みを感じない方法もご提案しております。他の症状と見分けがつかない方も、お気軽にご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。