皮膚にできたしこりは粉瘤なの? 特徴や原因について紹介

はじめに

皮膚にしこりのようなものができて不安に感じておられるかもしれません。
それは粉瘤という腫瘍の一種である可能性があります。放置すると悪化する病気でもあるので注意が必要です。
がんとは異なる病気ですが、放置しておくと大きくなって痛みや圧迫感を引き起こすこともあります。ふっくらとして見た目や臭いという表面的な症状としても現れてきます。
粉瘤かもしれないと感じている人は適切な医療機関で診察を受け、医師の決定に基づいた適切な治療が必要です。
そこでこの記事では、粉瘤の特徴や粉瘤ができてしまう原因、また正しい治療法や、完治させるために手術が必要な理由などについて解説していきます。

粉瘤とは?

粉瘤に限らず、初期症状に痛みが伴わない病気は「命の危険がないため、ある程度は放置しても良い」と思われがちです。
しかしその特徴や原因、リスクなどについてわかると、早期に治療した方が良い理由を理解できるでしょう。
そこでまずは「粉瘤とは何か」という点について、詳しく解説していきます。

粉瘤の特徴

「粉瘤」とは、皮膚の下にある袋状の組織に垢や皮脂などの老廃物が溜まることで一部の皮膚が膨れた状態になることです。
粉瘤は身体のどの部分にでもできる可能性があり、触れるとしこり・ふくらみとして目で認識できますが、小さいうちは見逃されることもあります。
しかしこぶが巨大化したり、悪臭を発したり、炎症を起こすなどの症状は特有のものであるため、そこまで進行すると粉瘤だと明確に判別できます。
粉瘤は腫瘍の一種ですが良性腫瘍であるため、それ自体が命の危険につながることはほぼありません。
しかし治療方法に関しては基本的に手術以外に方法がなく、治療を受けるタイミングを逃すとさらに巨大化して治療が困難になることもあります。
非常に少例ながら悪性化したケースもあるため、どちらにしても早期発見・早期治療が重要です。

粉瘤ができる原因

粉瘤はいわば「老廃物の塊」です。人間の皮膚組織は常に古いものから新しいものに入れ替わっています。
その過程においてめくれている皮膚から古い皮脂や角質が入り込み、入り込んだ老廃物が排出されずに袋の中で溜まってしまうことが主な原因とされています。
また、乳頭腫などのウイルスに感染することが原因で生成される場合もあります。
粉瘤自体はほとんど外的要因によりできるものですが、何度も再発する人には「汗っかきである」とか「皮脂の分泌量が多い」などの体質が共通している可能性が高いとされています。

粉瘤が炎症を起こす要因

粉瘤はただ老廃物が溜まるだけでなく炎症を伴う病気であり、炎症を起こす原因についてわかると、適切な治療を早期に行うことの必要性を理解できるでしょう。
そこで次は、粉瘤が炎症を起こす主な2つの原因について解説していきます。

医学的要因

外的要因およびウイルスによって生成されますが、炎症を伴う場合は角質が露出したことで異物反応を引き起こしていることが原因とされています。
粉瘤には一定のライフサイクルがあり、初期の炎症を伴わない粉瘤は放置していても何も問題ありませんが、何らかの原因によって炎症が生じることでこぶが成長し、赤く腫れるといった症状がみられるようになります。
さらに症状が進行すると膿が溜まってこぶが巨大化し、最後には破裂に至る、というライフサイクルになります。
最後に破裂するなら放置しても良いと思われるかもしれませんが、このライフサイクルは繰り返されます。
破裂後にはいったん症状が落ち着きますが、根本の原因を除去できていないため再発してしまいます。
だからこそ手術による「除去」が必要であり、最初から抗生剤を投与する治療法などは効果が低いとされています。

心理学要因

直接的な要因ではありませんが、ストレスなどの心理的影響により、ターンオーバー(皮膚の入れ替わり)の乱れが発生することが、粉瘤が生成される一因となっているという見方もあります。
皮膚の表皮は角層から基底層までの多層構造で成り立っており、数週間かけて基底層から徐々に新しい細胞が古い細胞を押し出すことで、肌のターンオーバーは完了します。
規則正しい生活を続けている限りターンオーバーは正常に肌の交換を行い続けます。
しかし慢性的なストレスや食生活・生活習慣が乱れたり、長時間紫外線に当たったり、肌に合わない化粧品を使うことなどでも、ターンオーバーは容易に乱れます。
粉瘤だけでなく肌のトラブルや皮膚の病気を避けるためには、肌のケアだけでなく体全体のケアが欠かせないといえます。

粉瘤と思われるしこりが出来たときの対処法

粉瘤のようなしこりができた場合、自己判断せずにすぐに医療機関を受診するべきです。粉瘤は大きさが大きければ明らかに異常なしこりだと分かりますが、初期はできもののように小さく、中には「ただ虫に刺されただけ」と勘違いする人もいるでしょう。
また「脂肪腫」と勘違いするケースもあり、初期段階ではこぶが粉瘤なのか分かりにくいことが多いため、不審なしこりを発見したらすぐに医療機関を受診するべきです。
放置すると違和感や痛みが強くなっていくだけですし、破裂が再発を招くリスクも高くなるため、放置するメリットはまったくありません。
くわえて医療機関を選ぶ際は、粉瘤治療において高い実績があるところや経験豊富な専門医がいるところを選びましょう。
また粉瘤治療の設備が整った医療機関を選ぶことで、検査や手術などがスムーズに行えるだけでなく治療後も安定します。
当院はできものを専門としたクリニックであり、粉瘤や脂肪腫、ニキビなどの治療実績が高く、多くの専門医が勤務しています。
気になるできものがあれば、是非相談してみてください。

粉瘤を除去する方法

粉瘤は外的要因やそのライフサイクルにおいて自己破裂することがあります。しかし粉瘤の破裂は病気の終わりを指しておらず、たとえ破裂した後でも適切な治療を行う必要があります。
そこで次は、粉瘤の再発を予防するために重要な、2つの除去手法について解説していきます。

くりぬき法

粉瘤の治療方法の一つである「くり抜き法(へそ抜き法)」とは、その名の通り嚢腫をくり抜くように老廃物および嚢腫を摘出する方法です。
この方法では特殊な器具を用いて皮膚の一部に穴を開け、老廃物と嚢腫を摘出したのちは開放創(自然治癒が可能な傷)にして経過を観察します。
くり抜き法は現状もっとも粉瘤に対して有効な手法で、手術跡が残りにくく再発する可能性も低いというメリットがあります。
ただし再発を重ねたことにより皮膚が瘢痕化している場合などはくり抜き法が使えないため、次に紹介する手法を用いることになります。

切開法

切開法とは、皮膚を切開して直接老廃物を掻き出したのち嚢腫を完全に除去する手法です。
この方法は主にくり抜き法が使用できない、大きなしこりや治療を何度も繰り返している場合に用いられます。
術後はなるべく傷が開かないように過ごすだけでなく、医師の診断に応じて一定期間は入浴を控える必要があります。

粉瘤は治療するのがおすすめ

粉瘤は良性腫瘍ですが放置すると悪化し、見た目にも異常が目立つ病気です。
悪化させないために、できたしこりが粉瘤かどうか分からないような場合にも、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

当院の特徴

「手術するから入院が必要なのでは?」と考える方もいますが、当院では基本的に手術したその日にお帰りいただけます。
痛みや炎症を伴う炎症性粉瘤に移行した場合でも同様です。
ただし粉瘤が大きくなりすぎた場合や炎症が強い場合、悪性化の疑いがある症例には提携している大学病院を紹介させていただくこともあります。
いずれにしても安心して適切な治療が受けられるような支援体制が整っていますので、ご安心ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。