粉瘤(アテローム)が痛い!炎症の原因と治療法を解説

はじめに

粉瘤(アテローム)は、体のどこにでもできる袋状の良性腫瘍です。
最初は小さく、痛みも感じないため気づかないこともよくあります。粉瘤は自分で治すことができず、自然治癒もしません。放置していると悪化してしまう可能性があるので、粉瘤ができた場合は、痛みを感じていなくても早めに専門医に相談することが大切です。特に、赤く腫れていて痛みを伴う症状がある方は要注意です。
本記事では、粉瘤ができる原因や治療方法について解説します。

粉瘤(アテローム)とは?

粉瘤とは、皮膚の角質や皮脂などの老廃物が皮膚内に袋状に溜まった「しこり」のことです。良性の腫瘍なので、他の場所に転移することはありません。老若男女問わず、誰にでも起こりうる症状で、顔や首、背中など全身のどこにでもできます。
粉瘤は、初期段階ではあまり目立ちません。触れると小さなしこり程度に感じます。炎症を起こしていない場合、痛みやかゆみを感じることはありません。しかし、炎症を起こすと赤く腫れあがり、さまざまな問題を引き起こします。程度は人によってさまざまですが、日常生活に支障をきたすほどの痛みを伴うこともあります。
粉瘤は、ドーム状に膨らんでいて、開口部の中央に黒い点が見えることがあり、つぶれていなくても独特のにおいを発することもあります。

粉瘤は自然に治らない

ニキビと勘違いされやすい粉瘤ですが、ニキビと大きく異なるのは「自然治癒しない」ということです。粉瘤は、袋状の腫瘍を外科手術によって除去しなければ完治することはありません。仮に症状が落ち着いていても、老廃物が溜まることによって再発します。
また、無理につぶしたりいじったりすると症状は悪化し、まわりの皮膚との癒着も起きやすくなります。悪化してから専門医で処置をしても、痕が残ってしまうこともあります。
粉瘤は、自力で治すことはできないので早めに専門医に相談することが最適です。

粉瘤が炎症を引き起こす原因

粉瘤は、炎症を起こすと赤く腫れあがり痛みが生じます。炎症の程度は、人によって異なります。
炎症を起こしてしまう原因は明確には分かっていませんが、考えられる原因は以下の通りです。

細菌感染による炎症

人の皮膚には、目に見えないさまざまな細菌がいます。この菌を、「常在菌」と呼びます。
常在菌は人の体に必要な菌で、肌を守る役割があるため日ごろは問題を起こしません。しかし粉瘤のなかで細菌が増えると、人間の体は防衛反応を示します。防衛反応が働くことによって、炎症を引き起こしてしまうのです。

異物反応による炎症

摩擦や圧力を受けるなど、外部からの刺激によって炎症を起こすことを「異物反応」と呼びます。外部から圧力を受けることによって、粉瘤の袋が潰れてしまい、結果として炎症を引き起こします。
これまでは、粉瘤が炎症を引き起こす主な原因は細菌感染であると考えられていました。しかし最近では、異物反応によって炎症を引き起こすケースが多いと考えられています。

もしかして粉瘤?痛みを伴うしこりができたときに考えられる症状

しこりに痛みがある場合、粉瘤の可能性が考えられます。
さらに痛みを伴い赤く腫れあがってしまった場合、炎症性粉瘤の可能性があります。

炎症性粉瘤

炎症性粉瘤とは、痛みを伴い粉瘤が赤く腫れあがった状態のことです。
痛みの程度は人によってさまざまですが、日常生活に支障をきたすほどの痛みを感じることもあります。また、全身に菌がまわり発熱することもあります。
炎症性粉瘤は、炎症が進行するにつれて皮膚が柔らかくなり熱を持ってきます。そのため、些細な衝撃で破裂してしまうことが多いのです。
粉瘤ができると、気になって触ったりつぶしたりしたくなりますが、決してしてはいけません。膿が溜まり、粉瘤が破れてしまうと周りの組織にも膿が広がり、さらに症状が悪化する悪循環に陥ります。炎症が長引くと、皮膚の組織を破壊し壊死してしまうケースもあるので注意が必要です。色素沈着によって痕が残ってしまう可能性もあるので、早期の治療が最善です。
粉瘤は、自然治癒することはありません。大切なのは、「放置をしないこと」です。炎症を起こしている場合は、破裂する前に病院を受診し適切な処置をしてもらいましょう。

粉瘤の治療法

粉瘤は、自然治癒することはなく薬で治すことができません。必ずしも取り除かなければいけないわけではありませんが、放置していると大きくなってしまったり炎症を起こしてしまったりする可能性があります。そのため、小さい段階で取り除くことが望ましいとされています。
まれに粉瘤ではなく、悪性腫瘍の場合もあるため、小さいからといって放置しておくのはおすすめできません。
粉瘤を完全に取り除くには外科手術が必要で、健康保険が適用になります。
手術の際は、局所麻酔をするため痛みを感じることはほとんどありません。しかし、局所麻酔は注射で行うため、麻酔時は痛みが発生してしまいます。医療技術の進化によって、痛みを軽減する工夫をしている病院も多くあります。
粉瘤の手術方法は、以下の通りです。

くり抜き法

粉瘤のサイズが小さい場合に行われる手術方法です。
皮膚に小さな穴を開け、袋ごと吸い出します。傷跡が小さく済み、縫合が不要なケースが多いので痕が残りにくいのが特徴です。
手術時間は、5〜20分と短いため患者様への負担が少なく済みます。
サイズが大きい粉瘤や、炎症を繰り返していて癒着の強い粉瘤の場合、くり抜き法で行えない場合があります。

切開法

粉瘤のサイズが大きい場合に行われる手術方法です。
粉瘤の周辺に局所麻酔を行い、メスで皮膚を切開し、粉瘤をまるごと取り出します。再発する可能性が低い手術方法です。症状によっては、切開方法が望ましい場合があります。

手術後は、毎日ガーゼを交換し傷口を清潔に保ちます。
日帰り手術の場合でも、術後の飲酒や運動は避けましょう。
傷跡は、2〜3週間後1度硬くなりますが、その後徐々に柔らかくなっていきます。粉瘤の状態にもよりますが、手術痕が全く残らないということはありません。可能な限り目立たない方法で手術を行いますが、体質によってはケロイドや肥厚性瘢痕で傷跡が赤く盛りあがることがあります。
また、炎症の期間が長く症状が悪化している場合、1度に摘出できない場合があります。全て摘出できなかった場合、再発のリスクがあります。
そのため、できるだけ早い段階での手術を推奨しています。

また、抗生物質を使用することもあります。
炎症が軽度の場合は、炎症を治めることができますが、根本的な解決にはなりません。細菌感染が原因でなければ、治療に抗生物質を使っても効果はあまり期待できないためです。
再発の予防のためにも、外科手術での治療を推奨しています。

まとめ

粉瘤は、誰にでも起こりうる症状で顔や首、背中など全身のどこにでもできます。
赤く腫れ痛みを伴う場合は、炎症性粉瘤の可能性が考えられます。また、粉瘤は自然治癒することはありません。小さい段階で取り除くことが望ましく、外科手術が必要になります。
気になるしこりやできものができた場合は、触ったりつぶしたりせずに早めに専門医に相談しましょう。
当院では、日帰り手術が可能です。手術の際には、極力痛みを軽減する配慮を行っております。患者様に合った治療方法をご提案し、不安を解消できるようご相談を大切にしています。繰り返しになりますが、粉瘤は早めの処置が非常に大切です。24時間Web予約も承っていますので、ぜひ1度ご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。