ピアスやヘッドホンが原因?耳にできた粉瘤の原因や治療について

皮膚に”しこり”や”腫れ”のようなものができる粉瘤ですが、身体のさまざまな所にできる特徴があります。そして”耳”も例外ではありません。
耳は衣服では隠れない、露出している部分であるため、衣服で隠れるところにできた粉瘤よりも特に気になりますよね。

また、『ずいぶん前に開けたピアスのせいではないか…』とか、『仕事柄、インカム(耳に装着する無線機)を使うせいかも…』『オンラインゲームにハマっていて、ヘッドホンをしているからできたのかな…』など、”日常的に使うもの”が原因で耳に粉瘤ができたのではないかと質問をいただくことがあります。

そして、もしそれが原因だとすると、『インカムを使うような仕事や、ヘッドホンを着けて行うゲームなどができなくなるんじゃないか…』と不安を抱いて来院される方もいらっしゃいます。
結論からいうと、ピアスやインカム、ヘッドホンといった、耳に直接触れるようなものであっても、粉瘤ができる直接的な原因になることはありません。
ただし、粉瘤を”悪化させる原因”にはなる可能性があるため取り扱いには十分に注意が必要です。

このページでわかること

■耳に粉瘤ができる原因
■耳に粉瘤ができた場合に気をつけること
■耳にできた粉瘤の治療方法と傷跡について

ピアスやヘッドホンが耳にできた粉瘤の直接的な原因にはならない

粉瘤の原因を特定するのは難しい

実は、粉瘤ができる原因は、はっきりとしないことがほとんどです。

ネットで『粉瘤は、お風呂に入っていなかったり、身体を洗わなかったりすることで不衛生となり発生するため、身体をよく洗うことが重要です。』という書き込みをちらほら見かけますが、不衛生が原因で粉瘤ができるという根拠はありません。

なぜなら、普通に生活をしていて一生のうちに一回もできない方もいれば、清潔保持を意識していても何回もできてしまう方がいらっしゃるからです。
そもそも粉瘤は、何らかの理由により皮膚に袋状の組織ができ、そこに皮脂などの老廃物が溜まってできる良性の腫瘍のことです。

ウイルスの感染や外傷などが原因になるという報告がありますが、多くの場合は原因を特定することができず、明らかになっていません。
そのため、ピアスやヘッドホン、インカムなど直接、耳に接するようなものであっても粉瘤ができる原因との関連性は低いといえます。

耳に粉瘤ができた場合、ピアスやヘッドホンにより悪化する可能性はある

しかし、ピアスやヘッドホンが耳に粉瘤ができる原因との関連性が低いといっても、すでにできた粉瘤を”悪化させる可能性”はあります。
ここでいう悪化とは、膿が溜まって赤く腫れ上がったり、痛みを伴ったりすることをさします。

粉瘤は通常、皮膚が盛り上がり、しこりのようなものに触れられますが、痛みやかゆみを伴うことはありません。
一方で、炎症を伴う炎症性粉瘤に移行した場合には、発赤や痛み、かゆみなどの症状が出現します。

炎症性粉瘤に移行する原因は主に2つです。

1つ目は、細菌感染によるものです。粉瘤には皮膚開口部という小さな穴が空いており、そこから細菌が侵入することで炎症が起こります。
2つ目は、異物反応によるものです。粉瘤の袋に圧力が加わり潰れることで、袋の中に溜まった皮脂などの老廃物が皮膚内部に広がってしまいます。その老廃物が皮膚に触れることで異物反応が発生し、炎症が起こります。

以上のことから、耳に粉瘤ができた場合に粉瘤の近くに新しくピアス穴を空けたり、ヘッドホンやインカムの脱着を頻繁に行ったりしていると、粉瘤が悪化する可能性があります。
耳にしこりのようなものができて、『粉瘤かな?』と思ったら、できるだけ粉瘤には触れず、早めに専門の病院を受診することをおすすめしています。

結局どっちの方法がいいの?

顔や首、腕など傷が目立ちやすいところにできた粉瘤を摘出する場合や、小さめの粉瘤を摘出する場合はくり抜き法を選択する場合がほとんどです。
しかし、背中は傷が目立ちにくく、ある程度大きくなってから治療される方が多いため、再発の可能性が低く、確実に摘出することができる切開法を選択される方もいらっしゃいます。

いずれにしても、診察の際に患者様のご希望やライフスタイルをおうかがいしながら、どちらの手術方法が適しているか見定めていきます。

耳にできた粉瘤の治療方法

根本的治療は手術法のみ(切開法とくり抜き法)

粉瘤は良性の腫瘍のため、放置していても直ちに問題が起こるわけではありません。
しかし、放置していて自然治癒することもありません。
なぜなら、袋状の組織に老廃物が溜まってできる粉瘤は、外科的治療によって粉瘤のもとである袋を取り出さない限り、再発する可能性があるからです。

手術方法は”切開法”と”くり抜き法”の2種類があります。
切開法は、粉瘤の直径と同じくらい皮膚を切開し、袋をそのまま取り出せる手術方法で、その最大のメリットは袋をそのまま取り出せるため、再発の可能性が低いことです。
一方で、傷跡が残りやすいというデメリットがあります。

その傷跡が残りやすいデメリットをカバーするのが”くり抜き法”です。
くりぬき法は、粉瘤の真ん中にある”ヘソ”と言われる部分をわずか4〜5mmほど丸く切開し、そこから粉瘤の内容物と袋を取り出す手術方法です。
切開法と比べると傷跡が小さく目立ちにくいメリットがありますが、粉瘤の内容物や袋を取り出すための穴が小さいため、場合によっては袋が残ってしまい、再発する可能性があります。

どちらの手術方法にするかは、患者様のご意向やライフスタイル、検査結果をもとに慎重に選択します。

耳にできた粉瘤の治療にかかる費用と期間

粉瘤の治療にかかる費用は、大きさと場所によって異なります。
耳にできた粉瘤の場合は”露出部”になるため”非露出部”にできた粉瘤の治療費と比べると高くなります。

的には、耳にできた粉瘤の場合は比較的小さい(4cm未満)ことが多いため、健康保険料の負担割合が1割の方であれば手術費・診察料・検査費・病理検査費あわせて9,000円程度で治療が受けられます。
また、手術は基本的に日帰り対応となっているため、手術した当日にお帰りいただけます。

ただし、粉瘤の大きさや数、炎症の強弱によっては数日に分けて治療をさせていただくことがあります。

このページのまとめ

今回の内容をまとめると、

■ピアスやヘッドホン、インカムなどが耳にできた粉瘤の直接的な原因にはならない。
■ただし、ピアスやヘッドホンなど直接耳に触れるものによって、粉瘤が悪化する可能性はある。
■粉瘤が悪化して炎症を起こすと痛みを伴うため、早めの受診がのぞましい。
■粉瘤の手術方法は2種類ある。切開法はくり抜き法より傷跡は大きくなるが、再発する可能性が低い。一方くりぬき法は、再発する可能性こそあるものの傷跡が小さいのが特徴。
■耳にできた粉瘤の治療にかかる費用の目安は、粉瘤の大きさや検査項目によってちがいはあるが、健康保険料が1割負担の方であれば約9,000円程度。
■手術は基本的に日帰り対応だが、場合によっては数日に分けて治療を行う場合もある。

耳は衣服では隠れないため、粉瘤ができるとどうしても目立ってしまいます。また、オンラインゲームの流行により、日常的にヘッドホンを使用する方も増えてきているのではないでしょうか。
耳にしこりのようなものができた場合、「まだ大丈夫」と思わず、日常生活への支障を最小限にとどめる意味でも早めの受診をおすすめいたします。気になった方は当院までお気軽にご相談ください。