10分で分かる!粉瘤とは?できやすい人の特徴や予防法、判別法は?

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自身の体やご家族の体にしこりを見つけたことはありませんか? もしかしたらそれは、粉瘤かもしれません。 「そもそも粉瘤って何?」「他のできものとどう違うの?」「放っておいても大丈夫なの?」「予防法はあるの?」などの不安や疑問を持つ方もいらっしゃると思います。

そこで本記事では、そういった気になる不安点や疑問点も含めて粉瘤について詳しく解説していきます。

粉瘤とは

まずは、粉瘤の基礎的な知識・特徴などについて紹介します。

粉瘤とは、皮膚の下に嚢胞(のうほう)と呼ばれる袋状のものができ、その中に古い角質や皮脂などの老廃物が溜まってしまった状態です。 通常であれば、体にとって不要となった垢や皮脂は、皮膚から剥がれ落ちます。しかし、粉瘤には袋状の構造物があるために、剥がれ落ちるべき老廃物が、袋の中に蓄積してしまうのです。そのため、多くの粉瘤は放っておくと徐々に大きくなっていきます。

粉瘤は半球状に盛り上がったしこりで、サイズは数mm~数cm、中には数十㎝にまで巨大化することもあります。 粉瘤では中央に小さな皮膚表面につながる出口があり、その部分が黒く点で見えることがあります。これは皮膚に開いた小さな穴で、この周囲を強く圧迫すると、臭くて白い脂様のものがでてくることがあります。 ただし、全ての粉瘤に穴が開いているわけではありません。毛根や脂腺・汗腺などにある表皮細胞が袋を作るもととなった場合は、穴はありません。 また内容物に全く臭いがない粉瘤もあります。

粉瘤ができやすい部位

粉瘤は、皮膚がある場所であれば身体中どこにでもできます。 特に顔や首、耳周り、背中などにできやすい傾向があります。

粉瘤のリスク

粉瘤は基本的には良性の腫瘍と言われており、危険性は少ないです。 しかし、粉瘤を放置していると、内容物が増えて大きく膨らみ目立ってくる、老廃物が溜まり悪臭を放つようになる、細菌が入り込んでしまい腫れて痛む・膿が出てくる、といったリスクがあります。 さらに、ごくまれなことではありますが、粉瘤が癌化したという報告もあります。癌化した粉瘤は、中高年の男性の頭部、首、お尻に生じたものが多いと言われています。

また、初期の小さな粉瘤は白色~肌色ですが、悪化して大きくなると黄色、黒色、青色などに変色することもあります。

炎症性粉瘤

粉瘤に細菌が侵入して感染すると、膿がたまって大きさを増し、赤く腫れ上がって痛みを伴います。このような状態になった粉瘤は炎症性粉瘤と呼ばれます。 粉瘤を放置していると、症状が悪化して炎症性粉瘤になってしまう恐れあります。 赤く腫れているときに膿を出そうとして無理に圧迫すると、袋が破れて脂肪織内に散らばり膿皮症という状態になる場合があり慢性化することもあります。 そのため、無理に圧迫し内容物を排出することは避けて、早めに医師に相談し処置を受ける必要があります。

粉瘤の原因

上記のように、粉瘤では皮膚の下に袋状のものができ、そこに老廃物が溜まっていきます。しかし、なぜそのような状態ができるのか、発生原因は判らない場合がほとんどです。

打撲・外傷などの痕やニキビ痕にできること、ウイルス性のイボの感染をきっかけとして足の裏のイボから粉瘤になること、ヒトパピローマ(乳頭腫)ウイルスに感染することでできることもあり、これらが原因であるとわかることもありますが、原因が分かるのは稀なケースです。

角質や皮脂溜まってできるということで不潔な体にできるものと思われがちですが、清潔にしていても体質でなりやすい人もおり、きちんと治療しても多発する場合はその人の先天的な体質によるものが大きいです。

できやすい方の特徴は?

粉瘤は男性の方ができやすいと言われています。 また、粉瘤ができやすい体質があることもわかっています。 ただ、ほとんどの粉瘤は発生原因が分からないなど未だに謎に包まれている部分も多く、どのような方ができやすいかということについてもあまり解明されていないのが現状です。

予防法はある?

粉瘤は発生原因があまり分かっていないため、予防法についても「これをすると粉瘤にならない」といった確実な予防法はありません。 しかし、肌を清潔に保つ、肌に刺激を与えないなど肌を良い状態に保っておくのに越したことはありません。 「粉瘤ができやすい」「粉瘤を繰り返してしまう」という方も、確実な予防法はありませんが、毎日のスキンケアを通して発生しにくい肌作りを目指しましょう。

また、粉瘤は気になるかもしれませんが、いじったりこすったりいると炎症を起こすきっかけとなります。炎症が起こってからでは、粉瘤が大きくなったり痛みが出たりする他、治療が長引いたり治療の傷あとが大きくなったりする恐れがあります。あまり触りすぎないようにしつつ早めに受診し治療することができれば、これらを防ぐことができます。

粉瘤に似た皮膚疾患

ここでは、粉瘤に見た目が似ている他の皮膚疾患の特徴について代表的なものを紹介します。

ニキビ

顔にできる印象の強いニキビですが、胸や背中などの場所に発生することもあります。 ニキビは、ホルモンバランスの乱れなどによる過剰な皮脂分泌の増加やアクネ菌の増殖、毛穴の詰まりなどによって発生します。 粉瘤はニキビと違い、10㎝やそれ以上に巨大化することもあります。ニキビが大きくなることはないため、ある程度大きくなった粉瘤は簡単にニキビと見分けることができます。 また、粉瘤は老廃物がたまったものであるため、圧迫されて内容物が出てくると独特の強い臭気を発することがあります。炎症を起こすと特に触れなくても悪臭を生じることもあります。この臭いはニキビでは生じませんので、見分ける大きなポイントになります。

脂肪腫

皮膚との癒着はなく、皮下で動く腫瘍です。 化膿したり痛みが出たりすることはなく、匂いも一切ありません。 サイズは数㎜から10㎝以上になることもあります。 背中や肩、首への発生が多く、次いで四肢にも多く現れます。

化膿性汗腺炎

化膿性汗腺炎とは、汗を分泌する汗腺に感染が起こり、膿が溜まってしまう疾患です。 痛みや赤い腫れを伴うおできが繰り返しできてしまい、赤いブツブツや、硬い皮膚、蜘蛛の巣のような見た目になることもあります。 太もものつけ根、ワキの下、乳首、お尻などに起こりやすく、20~40歳代を中心に発症します。

せつ(おでき)

太った人、高齢者、糖尿病患者などにできやすく、細菌の感染によってできる皮膚症状です。 治療をせずに放置していると膿ができ、痛み、赤み、発熱などが起こる可能性があります。 しこりのようなものが触れるという初期症状に関しては、おできと粉瘤が似ていると言えますが、おできの場合には痛みが早い段階で起こるため比較的区別しやすいです。

ガングリオン

ゼリー状の粘液がたまってできたしこりで、関節の周囲にできやすい傾向があります。 20歳~50歳が主に発症し、若い女性に発症が多いとされています。 ガングリオンの大きさは米粒程度からピンポン玉くらいになることもあります。 ガングリオン自体が痛みを起こすことはありませんが、神経を圧迫することで痛みやしびれといった症状を起こすことがあります。

粉瘤の治療法

ここからは、粉瘤の治療法について紹介します。

粉瘤は良性の腫瘍なので、必ず治療が必要というわけではありません。 粉瘤が小さく、ご自身で気になっていないようであれば、治療せずに様子を見るケースもあります。

粉瘤を治療する場合は、基本的に手術による治療を行います。 粉瘤は皮膚の内部にある袋がなくならない限り完治することはなく、再発する恐れがあります。 そのため自然に無くなることはまれで、塗り薬や飲み薬で完全に治すことはできません。 粉瘤を完全に治すためには、手術によって袋をキレイに取り除くことがポイントになります。

【注意!】 粉瘤は自分で潰しても治らない!

上記のように、粉瘤は皮膚の内部にある袋を取り出さない限り完治することはなく、一見落ち着いたように見えても再発します。 そのため自分で治そうと粉瘤を潰しても、治ることはありません。 また、粉瘤を潰してしまうと、細菌感染を起こし腫れて痛みが出る、刺激によって皮脂分泌が活性化し粉瘤がさらに大きくなる、といったリスクもあります。 ご自身での対処は控え、早めに皮膚科で診てもらうことが大切です。

粉瘤の治療法は、炎症が起こっていない場合と炎症が起こっている場合とで次のように分けられます。

粉瘤に炎症が起こっていない場合の治療法

10~30分ほどの簡単な手術によって、溜まった内容物を袋(嚢胞)ごと取り除きます。 できものの周りに局所麻酔を打って行うため、治療中の痛みはありません。 粉瘤を摘出する際の手術法は「切除法」と「くり抜き法」の2種類があり、腫瘍の大きさや性質、位置などによってどちらのやり方がふさわしいかを判断されます。

<切除法>
切除法では、腫瘍と同じサイズあるいはその2倍程度の長さに皮膚を切開し、粉瘤を摘出します。 その後、切開した皮膚を縫合し数日後に抜糸を行います。 切除法では腫瘍の直径とほぼ同等の傷あとが残ります。

くり抜き法>
くり抜き法では粉瘤の上の皮膚に数mm程度の穴を開け、その穴から粉瘤を摘出します。 治療後は皮膚を縫合する必要はなく、2~3週間かけて自然に穴が塞がるのを待ちます。

くり抜き法の傷あとは切除法の傷あとよりも小さく、ニキビあと程度の小さな傷あとで済むことが特徴です。 ただし、粉瘤の位置や内容物の硬さによっては内容物を押し出すことが難しく、くり抜き法が向かないことがあります。

粉瘤に炎症が起こっている場合の治療法

粉瘤が炎症を起こし、赤く腫れて痛みがあったり、押すと膿のようなものがでたりするときは、すぐに手術をすることはできません。 炎症を伴っている状態で手術を行うと、縫った場所からばい菌の感染を起こしやすくなったり、傷が開いてしまうことがあったり、傷の治りが悪くなって治ったあとがきれいにならない、といったリスクがあるためです。

そのため、まずは炎症を抑える治療を行います。 皮膚を切開して粉瘤の中のものを出し、さらに中を洗浄します。これにより炎症が鎮まり、痛みが少なくなることはもちろん、破裂する危険もなくなります。 しかし、切開をしても粉瘤の袋がなくなるわけではありません。粉瘤の袋が残っている状態だと再び炎症を起こす可能性があるので、数か月ほど期間を置いて傷が落ち着いた後、改めて摘出手術を行います。

このように、炎症がおきて大きくなったり赤く腫れたりしてからでは、炎症がない場合に比べて治療期間が長くなり、傷あとも残りやすくなります。 背中などは自分で普段見られない場所であるため、大きくなったり破裂して痛くなったりしてから受診する方も多いです。 「ん?このしこりはなんだ?」と思いましたら、早めに受診して診断や処置をすることをお勧めします。

炎症を抑える他の治療法

切開の他に炎症を抑える治療法として、受診の都合でどうしても切開が難しい場合や炎症がそれほど強くない場合に、注射器で中身を抜いたりステロイドが入った薬を袋の中に注射したりする方法を用いることがあります。 また、炎症がそれほど強くない場合に、抗生剤を内服してとりあえず様子を見ることもあります。

まとめ

粉瘤で受診する場合、皮膚科・形成外科のどちらでも治療は可能ですが、綺麗に治すという点では形成外科での治療が適しています。 その際には、日本形成外科学会が認定する「形成外科専門医」が治療を行っているかどうかを確かめておくとより安心でしょう。 「形成外科専門医」かどうかは、日本形成外科学会の専門医一覧から検索し、確認することができます。

https://jsprs.or.jp/specialist/list/

治療費はどれぐらい?

粉瘤の手術費用は、粉瘤の大きさ、粉瘤の位置が露出部か否か、保険診療における自己負担率が何割か(1~3割)、などによります。 また、それに加えて別途費用として診察料や処方料、検査費用などがかかります。 手術費用のだいたいの目安として、保険の自己負担率が3割の場合(1割の場合はこれの約1/3)、小さいものは5,000円前後、かなり大きいものだと20,000円以上することもあります。

各医院のHPで料金を公開していることが多いので、詳しい値は調べて確認しておくと良いでしょう。

よくある質問

最後に、粉瘤の気になる疑問点についてお答えします。

粉瘤は自然に治りますか?

→粉瘤は皮膚の下にある袋を取り除かない限り、完治することはありません。

自分で潰しても大丈夫ですか?

→自分で潰すと、炎症を起こすきっかけとなる可能性があります。気になっても無理に潰すのはやめて下さい。

粉瘤の手術は大変ですか?

→手術は10~30分程度で終わる簡単なものなのです。麻酔をするので痛みもありません。 手術が終わった後も、強い痛みがあるといったことはとても少ないです。

まとめ

粉瘤は、皮膚の下に袋状のものができ、その中に老廃物が溜まってしまった状態です。 粉瘤の発生原因はあまりわかっておらず、確実な予防法がないのが現状です。 できてしまった粉瘤を放っておくと炎症を起こす可能性があり、炎症を起こしてしまってからでは治療が長引き傷あとも大きくなりやすく大変です。 「ん?このしこりはなんだ?」と思いましたら、早めに受診し治療することをおすすめします。

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