腕にできた膨らみの正体は?粉瘤の原因と治療方法について徹底解説

はじめに

粉瘤とは、角質や皮脂などの老廃物が袋状に溜まってできた腫瘍のことです。
良性の腫瘍であることが多いが、溜まってしまった腫瘍は自然に排出されることはありません。
時間の経過とともに大きくなり、炎症や痛みを伴う場合があります。また粉瘤は再発率が高く、治療には摘出手術を行う必要があります。
本記事では粉瘤の注意点と適切な治療方法について紹介します。

粉瘤の主な症状

粉瘤は、しこりのような膨らみが腕や体の皮膚にできる疾患です。角質や皮脂などの老廃物からできており、時間の経過とともに大きく変化していきます。初期の段階では、白色や肌色で痛みを感じることは少なく、粉瘤に気づかずに放置してしまう人も多く存在しています。悪化が進むと、黒色や黄色に変化し、痛みを伴う場合もあります。注意すべきポイントとして粉瘤は、自然に治癒することがない点です。早めに治療を行うことで悪化を防ぎ、手術をする場合にも体への負担を減らすことが可能です。粉瘤に気付いた時には、早めに診察することをおすすめします。

粉瘤ができる原因

粉瘤ができる原因は、明確には判明していません。考えられる原因として、粉瘤は老廃物からできていることもあり、不衛生な状態であることが挙げられます。しかし清潔を保っていても粉瘤ができる人もおり、一概に衛生面だけが原因ではないとされています。他にも外傷により粉瘤ができるケースも稀にありますが、はっきりとした原因がわかっていないため、未然に防ぐことが困難な疾患です。

粉瘤かも?と思ったら注意すべき3つのポイント

粉瘤に気付いた時は、下記の3つに注意しましょう。
● 自分で腫瘍を潰さない
● 放置は危険!炎症を引き起こす原因に
● 悪化する前に早めの病院受診

自分で腫瘍を潰さない

粉瘤を自分で潰してしまうと、細菌の感染のリスクがあります。初期の小さな粉瘤は、できものやニキビと間違いやすく、自分で潰してしまう人もいるでしょう。しかし粉瘤はできものやニキビと違い、潰すと細菌に感染してしまう恐れがあります。細菌に感染してしまうと、化膿したり腫れたり、痛みの原因に繋がりかねません。自己判断で潰すことはしないようにしましょう。

放置は危険!炎症を引き起こす原因に

粉瘤を放置すると炎症し、悪化の原因に繋がります。粉瘤は自然治癒しないと言われており、時間とともに腫瘍は大きくなっていきます。そして肥大化した腫瘍は破裂する可能性が高く、破裂すると炎症を起こす危険性があるため注意が必要です。炎症をおこすと大きく腫れたり激しい痛みを伴ったりする場合もあります。また炎症した粉瘤は跡が残りやすく、早めのケアが重要です。

悪化する前に早めの病院受診

「腕に膨らみがある」「徐々に膨らみが大きくなった」と違和感がある場合、自己解決せずに病院の受診をおすすめします。初期の段階では膨らみは小さく、痛みを感じない方も多くいため、粉瘤ができているとは気付きにくいでしょう。しかし悪化してから病院を受診すると、完治までに時間がかかったり治療による体への負担も大きくなったります。少しでも違和感がある際は、早めに病院で相談すると安心です。

粉瘤の治療方法!手術するケースも?

粉瘤の治療は、2種類の手術法を用いて腫瘍を摘出します。
● くりぬき法
● 切開法
ここではそれぞれの手術内容を詳しく紹介します。

くりぬき法

くりぬき法は、皮膚に小さな穴をあけて中の老廃物を絞り出し、残りの組織を引き抜いて摘出する方法です。メリットとしては、キズが小さく手術痕が目立ちにくい手術法と言えます。くりぬき法の手術時間は5分~20分と短く、日帰りによる手術が可能です。しかし炎症を起こしている場合や大きい腫瘍には、くりぬき法の手術ができない場合があります。また切開法と比べると、皮膚に組織が残ってしまうリスクがあるため、デメリットとして再発率が高いことが挙げられます。

切開法

切開法は、皮膚を切開し、粉瘤部分を全て切り取って摘出する方法です。くりぬき法で摘出手術が難しいと判断した場合に、切開法を採用しています。他にも切開法は再発率が低いため、再発を繰り返している方にも切開法で手術を行うケースもあります。切開した部分は、傷跡が残りにくいように丁寧に縫合を行うため、女性の方でも安心です。術後1ヶ月程度で傷が目立たなくなり、半年後には更に目立たない程度に落ち着いていきます。

粉瘤と間違いやすい疾患

粉瘤は見た目で判断しづらいため、他の疾患と間違われやすくなっています。ここでは4種類の類似疾患を解説します。
● 脂肪腫
● 外毛根鞘のう腫
● 石灰化上皮腫
● ガングリオン

脂肪腫

脂肪腫は、皮下に脂肪の塊が溜まる疾患です。腫瘍の大きさは様々で、数mmから10㎝以上に及ぶこともあります。特に肌の色に変化はなく、触るとブヨブヨしているのが特徴です。脂肪腫は体のどの部分にもできる疾患ですが、背中や肩、頸部にできるとこが多いとされています。見た目では良性と悪性の判断が難しく、精密検査が必要な場合があります。

外毛根鞘のう腫

外毛根鞘のう腫は、頭部にできることが多い腫瘍であり、見た目は粉瘤とさほど変わりません。大きな違いとしては、外毛根鞘のう腫は毛包峡部由来、粉瘤は毛包漏斗部由来であることです。触ると粉瘤より少し硬めな場合が多いとされています。腫瘍が大きくなると、一部がハゲてしまうことや髪質が変化する可能性もあります。外毛根鞘のう腫のほとんどが良性腫瘍ですが、悪性腫瘍に変異する恐れもあるため注意しましょう。

石灰化上皮腫

石灰化上皮腫は、石のように硬い腫瘍が特徴的な疾患です。顔や腕、首にできることが多く、ほとんどの方は痛みを感じません。肌の色は大きく変化しませんが、黄色っぽく見えることや黒っぽく見えることがあります。実際に触ってみると表面は凸凹しており、腫瘍と皮膚の境界がはっきりとしています。腫瘍が小さい段階では、石灰化上皮腫と粉瘤が区別しにくく、超音波検査やレントゲンで検査を行うことが一般的です。

ガングリオン

ガングリオンはゼリー状の塊が溜まった腫瘍であり、関節部分にできることが多い疾患です。大きさや硬さは様々で、無症状であることがほとんどです。しかし大きく変化すると神経を圧迫し、痛みや手足が動かしにくいと感じる人も存在しています。ガングリオンができた手や足は、よく動かすことで肥大化を促進する恐れがあります。ガングリオンは自然治癒することもありますが、自己判断による放置は危険であり、早めに専門医に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は粉瘤の症状や注意点、治療方法について解説しました。粉瘤は自然に治癒することは少なく、放置すると炎症を引き起こす危険性があります。また自己判断で潰したり放置したりすると悪化の原因に繋がるため、注意が必要です。粉瘤の治療には、手術を行うケースが多いため、信頼できる病院選びが重要と言えます。粉瘤でお悩みの方は、粉瘤専門医である当院にお任せください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。