2025.06.14

ほくろがかゆいのは危険?考えられる原因と治療の必要性を解説

「ほくろがかゆくて気になる」「ほくろがかゆいのは何かの病気?」
このような不安を感じたことはありませんか。

ほくろのかゆみは、一時的なものから深刻な疾患のサインまで、さまざまな原因が考えられます。生活習慣や環境が関係していることも多く、日々のケアで予防できることもあります。

この記事では、ほくろのかゆみから考えられる原因や疾患、見逃してはならない症状、日常生活でできる対策について解説します。自己判断による処置は思わぬリスクを招くこともありますので、正しい知識を身につけて正しく対処しましょう。

 

ほくろがかゆいときに考えられる原因

ほくろがかゆいときに考えられる原因は、以下のとおりです。

  • ・物理的な刺激や乾燥による一時的なかゆみ
  • ・アレルギーや皮膚炎などの皮膚トラブル
  • ・皮膚がんの初期症状の可能性

それぞれ詳しく見てみましょう。

物理的な刺激や乾燥による一時的なかゆみ

ほくろがかゆくなる原因としてまず考えられるのは、物理的な刺激や乾燥による一時的なかゆみです。

肌が乾燥しやすい冬場や、衣服やマスクなどがよく触れる部位は摩擦が起きやすくなり、ほくろ周辺が刺激されることによってかゆみを引き起こしやすくなります。特に背中や顔など、衣類や髪の毛がよくこすれやすい部位に注意が必要です。

刺激や乾燥によるかゆみは、深刻な問題に発展することはほとんどありません。保湿ケアで改善されることが多く、数日でおさまるケースが多く見られます。

アレルギーや皮膚炎などの皮膚トラブル

アレルギーや皮膚炎、虫刺されなどの皮膚トラブルが原因でほくろの周辺に炎症が生じ、かゆみを感じることがあります。ほくろそのものに問題があるのではなく、周辺の皮膚の炎症によって引き起こされるものです。

ただし、炎症が長引くと、ほくろの見た目にも変化が生じることがあります。症状が改善しない場合は、専門医の診察が必要です。

皮膚がんの初期症状の可能性

最も注意すべきなのが、皮膚がんの初期症状として現れるかゆみです。特に、長年変化のなかったほくろが急にかゆくなったり、形や色が変わったりした場合は悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性を疑う必要があります。

皮膚がんは、早期発見と早期治療が非常に重要です。気になる変化がある場合は、自己判断で様子を見るのではなく、すぐに専門医の診断を受けましょう。

 

皮膚がんの可能性があるほくろの特徴

皮膚がんの可能性があるほくろには、以下の特徴が見られます。

項目 詳細
Asymmetry(左右非対称) ほくろの形が左右対称でいびつになっている
Border(境界が不明瞭) 周囲がぼやけていたり、ギザギザしている
Color(色が不均一) 黒・茶色・赤・青など、複数の色が混在している
Diameter(直径が6mm以上) 大きさが明らかに拡大している
Evolution(進行性の変化) 短期間でかゆみ・出欠・色・形などの変化が見られる

上記の症状は、英語の頭文字を取って「ABCDEルール」と呼ばれ、医療現場でも皮膚がんを見分ける際の重要なチェックポイントとして広く使われています。これらの兆候が一つでも当てはまる場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

 

「ほくろ」がかゆい場合に考えられる主な疾患

「ほくろ」がかゆい場合に考えられる主な疾患は、以下のとおりです。

  • ・脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)
  • ・悪性黒色腫(メラノーマ)
  • ・基底細胞がん

悪性のほくろの場合は、早期発見と早期治療が重要です。それぞれの症状を詳しく見てみましょう。

脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)

脂漏性角化症は、加齢に伴いできやすくなる良性腫瘍です。表面がザラザラしていたり、かさぶたのような見た目になったります。茶色から黒色まで色の濃さはさまざまです。

見た目がほくろに似ているため間違われやすい症状ですが、かゆみを伴うことがあります。基本的には良性ですが、見た目が気になる場合や発生部位によっては除去処置を行います。

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚がんの一種です。メラニン色素をつくる細胞が「がん化」することで発生します。皮膚がんの中でも悪性度が高いため、早期に除去する必要があります。

ほくろのような見た目から始まり、急速に拡大したり、色や形が変化したりします。かゆみや出血を伴うことも少なくありません。

メラノーマはリンパや血液を通じて全身に転移する可能性があるため、発見が遅れると命に関わることがあります。早期の段階で適切な処置を行うことで予後が改善されるので、違和感がある場合はすぐに受診しましょう。

基底細胞がん

基底細胞がんは、高齢者に多く見られる皮膚がんの一種です。紫外線の影響によって、顔や首にできることが多くあります。

見た目は小さな赤黒いイボのようなもので、かゆみを伴うことがあります。ほくろとの見分けが難しいため、専門医の診察を受けることが大切です。

メラノーマよりも進行は遅く、転移のリスクも低いものの、放置すると周囲の組織を破壊する恐れがあるため早期の診断と治療が必要です。

 

ほくろのかゆみを抑える方法

日常生活で行えるかゆみ対策として、以下のようなものが挙げられます。

保湿ケアを徹底する

乾燥が原因でかゆみが発生している場合は、肌のうるおいを保つことが大切です。保湿クリームやローションなどを使用して、優しくケアしましょう。特にお風呂上がりや就寝前など、肌が乾燥しやすいタイミングでの保湿が効果的です。

保湿剤は、アルコールや香料などの刺激成分が含まれているものは極力避け、敏感肌用や低刺激性の製品を選びましょう。継続的な保湿ケアによって、皮膚のバリア機能が整います。

衣類との摩擦を減らす

ほくろに繰り返し刺激を与えるとかゆみや炎症の原因になるため、衣類との摩擦を減らすよう心がけることも大切です。タイトな服や、チクチクするウールなどの素材を避け、やわらかく通気性のよい素材を選ぶとよいでしょう。

また、下着やインナーの縫い目がほくろに当たらないように工夫することも有効です。衣類との摩擦は見落とされがちな要因の一つなので、定期的に衣類の素材やサイズを見直し、皮膚へのストレスを最小限に抑えるよう心がけましょう。

紫外線対策を行う

日常的に紫外線対策を行うことで、ほくろのかゆみ予防につながります。紫外線は肌にダメージを与えかゆみを誘発するだけでなく、皮膚がんのリスクも高めます。

外出時は、季節や天候にかかわらず、日焼け止めを使用する習慣を身につけましょう。SPFやPAの数値にも注目し、シーンに応じて適切な強さを選んでください。顔や首、腕など露出の多い部分だけでなく、耳や首の後ろ、手の甲も忘れずにケアすることが大切です。

帽子や日傘、サングラスなども併用して、紫外線をできるだけ避ける生活習慣を意識しましょう。

かかない・触らない

かゆみを感じると、つい引っ掻いたり触ったりしてしまいがちですが、かえって症状を悪化させる原因になります。かくことで皮膚が傷ついたり、炎症を引き起こしたりする可能性があります。

どうしても我慢できない場合は、保冷剤や冷たいタオルでほくろ周辺を軽く冷やすことで、かゆみを一時的に和らげられます。かゆみが続く場合は、医師の相談のうえでかゆみ止めなどの外用薬を使用するのも一つの方法です。

 

かゆいほくろを自分で除去するリスク

インターネットやSNS上では、「市販薬でほくろを取る」「自分で除去する」などの情報も散見されますが、自分で処置することはおすすめできません。

不適切な処置によって感染症を引き起こしたり、傷跡が残ったりするリスクがあるためです。また、悪性だった場合、病変の診断ができず発見が遅れるリスクもあります。

除去を検討している場合は、必ず専門医に相談のうえ、適切な処置を受けるようにしましょう。

 

少しでも気になる場合は当院へご相談ください

「ほくろがかゆい」という症状は、乾燥や摩擦といった軽微な原因から、皮膚がんなどの深刻な疾患まで多岐にわたります。特に、かゆみと同時に色・形の変化、出血や拡大が見られる場合は悪性の可能性があるため注意が必要です。

自己判断による処置や放置はリスクを伴うため、気になる症状がある場合は医師に相談することが重要です。日常生活での予防ケアも忘れず、異変に気づいたらすぐに対応しましょう。かゆみを侮らず、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

他にも多数の症例を解説しています。

2025.06.14

顔にほくろが多いのはなぜ?原因や治療方法、予防策を解説

「昔より顔にほくろが増えたかもしれない」と感じたことはないでしょうか。
ほくろは誰にでもあるものですが、数が多かったり急に増えたりすると気になりますよね。
特に、顔のほくろは見た目の印象に影響するため、ほくろの除去を検討する方も少なくありません。

ほくろには、種類や状態に応じた適切な治療方法があります。もし自分で処置を行うと感染症や傷跡が残るリスクが伴います。

この記事では、顔のほくろが増える原因や治療法、予防策について解説します。ほくろを安全に除去したい方や、増やさないためのケアを知りたい方はぜひ参考にしてください。

 

顔のほくろが増える主な原因

顔のほくろが増える主な原因は、以下のとおりです。

  • ・紫外線によるメラニンの蓄積
  • ・遺伝による体質的な影響
  • ・ホルモンバランスの乱れ

それぞれ詳しく見てみましょう。

紫外線によるメラニンの蓄積

顔のほくろが増える、最も一般的な原因が紫外線です。紫外線を浴びると、肌はダメージを守るためにメラニン色素を生成します。本来、メラニンは肌表面にとどまり、時間とともにターンオーバー(肌の生まれ変わり)によって排出されます。

しかし、過度な紫外線を浴びたりターンオーバーが乱れたりすると、メラニンが肌に蓄積し、ほくろとして定着するのです。結果として新しいほくろが形成されたり、すでにあるほくろが濃くなったりします。

特に顔は一年中紫外線にさらされやすいため、日焼け対策を行わずに外出する習慣がある方は、知らず知らずのうちにほくろが増えることがあります。

遺伝による体質的な影響

遺伝も、顔のほくろの数に影響を与える要因です。両親や祖父母にほくろが多い方がいる場合、皮膚のメラニンの生成量や分布など、性質が似ていると体質的にほくろができやすくなります。

遺伝が原因の場合は紫外線対策を徹底しても完全に防ぐのは難しいですが、日常的なケアである程度の予防は可能です。

ホルモンバランスの乱れ

ホルモンバランスの乱れによってメラニンの生成量が増加し、ほくろが増える場合もあります。特に女性の場合、妊娠や出産、更年期などホルモンの変動が大きい時期にほくろが増えるケースがあります。

また、ストレス・睡眠不足・食生活の乱れなど、生活習慣によってもホルモンバランスが乱れやすくなります。

 

顔のほくろの治療方法

顔にできたほくろを除去したい場合、皮膚科や形成外科、美容皮膚科で以下のような方法で治療可能です。

  • ・レーザー治療
  • ・外科的切除
  • ・電気メス(電気焼灼)
  • ・くり抜き(パンチ切除)

適切な治療方法は、ほくろの大きさや箇所、症状によって変わります。希望する方法がある場合は、医師に相談しましょう。

レーザー治療

レーザー治療は、炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザーなどを使用し、ほくろのメラニン色素に反応させて除去する方法です。切開する必要がないため、傷跡が残りにくく、ダウンタイムも短いことがメリットです。

ただし、盛り上がったほくろや深い根のあるほくろなどには適用できない場合があります。

外科的切除

外科的切除は、メスを用いてほくろを切り取る治療方法です。基本的に、縫合が必要になります。再発のリスクが低く、病理検査にも出せるため、悪性の疑いがあるほくろの場合に適しています。

大きなほくろや根が深いものなど、他の治療方法では除去が難しいケースにも対応可能です。

電気メス(電気焼灼)

電気メスは、高周波の電気で熱エネルギーを与え、ほくろを焼き切る方法です。治療時の出血が少なく、短時間で処置が完了します。手術中の止血効果も高いため、出血しやすい部位のほくろ除去にも適しています。

ただし、深いほくろや悪性の疑いがあるものには適していません。短時間・低踏襲で治療したい方に適した選択肢の一つですが、ほくろの状態によっては別の治療方法が推奨されることもあります。

くり抜き法(パンチ切除)

くり抜き法は、直径数mmの円筒形のメス(パンチ)を使用して、ほくろを丸くくり抜く治療方法です。皮膚の表面だけでなく、真皮層(深い部分)まで除去できるため、再発リスクが低くなります。

切除後は、縫合せずに自然に傷がふさがるまで待つケースが多いですが、サイズや場所によっては縫合が行われることもあります。

くり抜いた部分がくぼむことや、色素沈着が残る可能性もあるため、術後のケアや紫外線対策が重要です。

 

ほくろと皮膚がんの見分け方

ほくろの中には、悪性(皮膚がん)の可能性もあるため、以下のような特徴がある場合は早めに医療機関を受診しよう。

項目 詳細
Asymmetry(左右非対称) ほくろの形が左右対称ではない
Border(境界が不明瞭) 周囲がぼやけていたり、ギザギザしている
Color(色が不均一) 黒・茶色・赤・青など、複数の色が混在している
Diameter(直径が6mm以上) 大きさが拡大している
Evolution(進行性の変化) 短期間でかゆみ・出欠・色・形などの変化が見られる

「急激に変化した」「以前と比べると明らかに異なる」と感じた場合は、自己判断で放置せず医師の診断を受けましょう。

 

顔のほくろを増やさないための予防方法

新たなほくろができないようにするためには、以下のような日々のスキンケアや生活習慣の見直しが重要です。

予防方法 詳細
紫外線対策の徹底 ・外出前には日焼け止めを使用する
・状況にもよるが「SPF30以上」「PA++以上」がおすすめ
顔への直射日光を物理的に遮断 帽子・日傘・サングラスなどを使用して、顔への直射日光を防ぐ
生活習慣の見直し 十分な睡眠・バランスの取れた食事・ストレス管理など、ホルモンバランスを安定させるよう心がける

ほくろを除去するのは手間がかかりますが、日頃のケアで増加を抑えることはできます。毎日の小さな習慣が、肌へのダメージを減らし、ほくろの予防につながるでしょう。

 

ほくろを除去する際の注意点

ほくろを除去する際の注意点は、以下のとおりです。

  • ・自己判断で除去しない
  • ・保険適用か自由診療か確認する
  • ・施術後はアフターケアを行う

それぞれ詳しく見てみましょう。

自己判断で除去しない

市販のほくろ除去クリームや、自分で無理やり取る行為は避けましょう。傷跡や感染症の原因になるだけでなく、悪性(皮膚がん)の可能性を見逃すリスクもあるためです。

悪性かどうかは、ほくろの見た目だけでは判断が難しいため専門医の診断が必要です。安全かつ確実に除去するためにも、自己判断ではなく必ず医療機関に相談しましょう。

保険適用か自由診療か確認する

ほくろを除去する際は、保険適用か自由診療か確認しましょう。基本的に、美容目的でのほくろ除去は自由診療扱いとなり、全額自己負担となるケースが一般的です。

一方、悪性の疑いがある場合や、医師が医学的に除去が必要と判断した場合は保険適用となります。

医師の診断結果によって保険適用の可否が変わるので、まずは正確な診断を受けましょう。治療内容や方法、費用は医療機関によって異なるため、カウンセリング時に確認しておくと安心です。

施術後はアフターケアを行う

ほくろを除去した後の肌はデリケートな状態になっているため、アフターケアをしっかり行うことが重要です。適切なアフターケアを行うことで治療効果を高め、傷跡を最小限に抑えられます。

日焼けを避け、医師に指示に従って軟膏の使用やガーゼ交換などの適切なアフターケアを行いましょう。治療方法にもよりますが、術後1週間~1ヶ月程度のケアが必要です。

適切なケアを続けることで、炎症や色素沈着などを抑え、きれいな仕上がりを目指せます。どんなに小さな施術でも、アフターケアを怠らないようにしましょう。

 

ほくろが気になる場合は当院へご相談ください

顔にほくろが多くなる原因は、紫外線や遺伝、ホルモンバランスの乱れなどがあり、誰にでも起こり得るものです。気になるほくろがある場合は自己判断せず、専門医に相談することが大切です。診断結果によって、レーザーや外科的処置で治療できます。

また、紫外線対策や生活習慣の見直しを日常的に心がけることで、新たなほくろの発生を防げます。自己判断せずに、医師によるカウンセリングを受け、正しい知識と方法で対処しましょう。顔のほくろが増えたとお悩みの方は、当院へご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

他にも多数の症例を解説しています。

2025.05.14

ほくろ除去|治療の流れや綺麗になおる術後の正しいアフターケアを解説

顔や体にあるほくろが気になっており、きれいに取り除きたいと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、「どの治療方法を選べばよいのか分からない」「傷跡は残らない?」など、治療に対して不安を抱えている方も少なくないでしょう。

この記事では、レーザー治療・切除手術・焼灼手術の治療法の違いや施術の流れ、アフターケアまで分かりやすく解説します。さらに、悪性のほくろの見分け方やよくある質問についても紹介します。安心して治療に臨むために、ぜひ参考にしてください。

 

ほくろ除去治療とは?

ほくろ除去治療とは、皮膚上にできた「ほくろ(色素性母斑)」を取り除く施術のことです。

そもそもほくろは、以下のような要因で発生します。

原因 詳細
メラニン色素の増加 メラノサイト(色素細胞)が増殖することで発生する
遺伝的要因 家族にほくろが多い人がいる場合、できやすい傾向がある
紫外線(UV) 紫外線によるダメージがメラノサイトを刺激し、ほくろの発生を促す可能性がある
ホルモンの影響 思春期や妊娠などでホルモンバランスが変化すると、ほくろが増えることがある
加齢 年齢を重ねると皮膚の細胞に変化が起き、ほくろが発生することがある

ほくろは、「見た目が気になる」など美容上の理由で除去する場合と、悪性腫瘍などの可能性を考慮して除去する場合があります。

目的によって、治療方法や保険の適用範囲が異なります。美容目的の場合は自由診療、悪性腫瘍などで治療が目的の場合は保険適用されるケースが一般的です。

ほくろ治療の種類

ほくろの治療は、大きく分けると以下の3つの方法があります。

・レーザー治療
・切除術
・焼灼手術

ほくろの除去術とは何か、それぞれの治療内容や違いを詳しく解説します。

レーザー治療

レーザー治療は、炭酸ガスレーザーやYAGレーザーなどを用いて、ほくろの細胞を蒸散・破壊する方法です。小さいほくろの治療に適しています。切らずに除去できるため、傷跡が小さく済むことがメリットです。

局所麻酔を行いレーザーを照射しますが、施術は数分程度で完了します。術後のダウンタイムも短い傾向にあります。

切除手術

メスを使ってほくろを切除し、皮膚を縫い合わせる方法です。5mm以上の大きめのほくろや、悪性の疑いがある場合に適応されます。

病理検査も同時に行えるため、医学的な管理が必要なケースに適しています。術後は抜糸する必要があるため、通院が必要です。

焼灼手術

電気メスや高周波機器などを使用して、ほくろを焼き取る方法です。出血が少なく、処置が短時間で済むことがメリットです。

ただし、深く削りすぎると周りの組織を傷つけてしまい、傷跡が目立ちやすくなります。そのため、医師の技術が重視される治療方法です。

それぞれの治療方法の違い

それぞれの治療方法の違いは、以下のとおりです。

治療法 除去方法 適応サイズ 特徴 治療期間
切除法 メスで切る 中~大 ・再発しにくい
・病理検査も可能
約1~2週間
レーザー 光で焼灼・蒸散 ・傷跡が少ない
・美容目的
数日~1週間
焼灼手術 電気で焼灼 小~中 ・傷跡が少ない
・医師の技術が重要
約1週間

ほくろの大きさや症状によって適切な治療方法があるため、必ず医師と相談の上治療を決めるようにしましょう。

治療の流れ

ほくろの治療の流れは、以下のとおりです。

・診察、カウンセリング
・施術
・術後のケア

それぞれ詳しく見てみましょう。

STEP1:診察・カウンセリング

まずは、診察とカウンセリングを行います。所要時間は、20分程度です。ダーモスコピーという特殊カメラでほくろを確認し、良性か悪性かを判断します。

良性の場合は、すぐに施術できるケースがほとんどです。悪性の場合は、後日改めて切除・検査を行います。症状によっては、大学病院を紹介するケースもあります。

STEP2:施術

施術をする際は、局所麻酔を使用します。レーザー治療なら数分程度、切除手術や焼灼手術の場合は10~30分程度です。麻酔を使用するため、施術中の痛みはほとんどありません。

STEP3:術後のケア

施術後は、肌色の保護テープを3日~1週間程度貼る必要があります。保護テープは、細菌感染の予防と乾燥防止に役立ちます。個人差がありますが、完全に治るまでは1週間程度必要です。

 

治療後のケアの仕方

治療後、あとが残らないケアの仕方を紹介します。

①紫外線対策をしっかりする

術後の肌は非常にデリケートな状態になっているため、紫外線対策をしっかり行いましょう。日焼けをすると、色素沈着を引き起こす可能性があるためです。

色素沈着を防ぐために、日焼け止めや帽子などのアイテムでUV対策を行ってください。日焼け止めは、敏感肌用の低刺激のものがおすすめです。

②かさぶたを無理に剥がさない

施術した箇所がかさぶたになる可能性がありますが、無理に剝がさないようにしましょう。かさぶたは、自然に剥がれるまで待つことが重要です。無理にはがすと、色素沈着や傷跡が残る原因になります。

③擦ったり、摩擦などの刺激を与えない

患部を強く洗ったり擦ったりして、摩擦などの刺激を与えないようにしましょう。治療後は、肌バリアの機能が低下しており非常に敏感になっています。敏感肌でない場合でも、入浴やスキンケアをする際は、患部を優しく扱いましょう。

 

そもそもほくろとは

ほくろとは、皮膚の中にあるメラニン色素を作る細胞が集まってできた皮膚腫瘍のことです。大きく分けると、良性と悪性があり、悪性の場合は取り除かなければなりません。

良性のほくろで、日常生活に支障がなく見た目が気にならない場合は、無理に治療する必要はありません。

ただし悪性の場合は、早急に治療する必要があります。
悪性のほくろは、早期発見と適切な治療が重要です。

良性・悪性のほくろの代表例は、以下のとおりです。

【良性】ミーシャー母斑
【良性】ウンナ母斑
【良性】クラーク母斑
【良性】スピッツ母斑
【悪性】悪性黒色腫(メラノーマ)
【悪性】基底細胞癌

それぞれの症状を見てみましょう。

【良性】ミーシャー母斑

  • 色:黒色・茶色
  • 形:平坦
  • 大きさ:通常1cm程度
  • 好発部位:顔・首・背中・胸など

【良性】ウンナ母斑

  • 色:褐色・赤色
  • 形:でこぼこした形
  • 大きさ:直径1cm程度
  • 好発部位:顔・首・上腕・太ももなど

【良性】クラーク母斑

  • 色:茶色・黒色
  • 形:平坦
  • 大きさ:直径1cm以下
  • 好発部位:手のひら、足の裏などを含めた全身

【良性】スピッツ母斑

  • 色:黒褐色・赤褐色・淡褐色
  • 形:ドーム状に盛り上がることが多い
  • 大きさ:6mm以下
  • 好発部位:顔や四肢を含めた全身

【悪性】悪性黒色腫(メラノーマ)

  • 色:黒や深紅色など、均一ではない
  • 形:左右非対称でギザギザしている
  • 大きさ:直径6mm以上
  • 好発部位:手足の爪や足の裏など

【悪性】基底細胞癌

  • 色:肌色・黒色
  • 形:小さな盛り上がり
  • 大きさ:数mm~数cm(徐々に拡大)
  • 好発部位:顔面(鼻や耳の後ろに好発する)

 

悪性のほくろとその見分け方

悪性のほくろの判断基準として、ABCDE基準があります。以下のような異変がないかチェックしましょう。

  • A:Asymmetry — ほくろの形が左右非対称
  • B:Border irregularity — 皮膚とほくろの境界線が不明瞭
  • C:Color variegation — ほくろの濃淡が不均一でまだら
  • D:Diameter — ほくろの大きさが6mm以上
  • E:Evolution — 急速に増大する、形状や色が変化する

 

上記のような特徴が見られる場合は、皮膚科で「ダーモスコピー検査」を受けましょう。
ダーモスコピー検査は、皮膚科専門医のみが行えるもので、良性・悪性の判断に役立ちます。当院ではダーモスコピー検査で良性か、悪性かのチェックを行っております。気になった方はお気軽にご相談ください。

 

よくある質問

ほくろは一回で除去できますか?

ほくろの色味の深さや状態によっては、2~3回程度施術が必要になる場合があります。特に深く根のあるほくろは、一度にすべてを取り切ると傷跡が目立ちやすくなる可能性があります。そのため、段階的に治療するケースも珍しくありません。

自力で取ってもいいでしょうか?

自分で無理に除去すると、感染症や深い傷跡、色素沈着が残るリスクがあります。医療機関で適切な処置を受けることをおすすめします。

傷跡は残りますか?

治療方法や個人の体質によって異なりますが、施術後しばらく傷跡が赤くなります。多くは3ヶ月程度で落ち着きますが、肌になじむまでは半年以上かかる場合もあります。

特に直径5mm以上のほくろや皮膚がよく動く箇所の治療をした場合、目立たなくなるまで時間がかかる傾向にあります。術後は処方された軟膏を塗り、患部が乾燥しないようにしましょう。傷跡が赤いうちは紫外線予防をすることで、色素沈着が抑えられます。

ダウンタイム中のメイク・入浴は?

患部を避ければ、当日から洗顔・入浴・メイクが可能です。患部を擦ると、ダウンタイムが長くなり色素沈着が残る可能性も高くなるため、強い摩擦を与えないよう注意してください。

保険適用になるケースは?

悪性を疑われ、病理検査を行う場合は保険適用になることがあります。一方、良性と診断され美容目的で治療する場合は自由診療です。保険適用となるかどうかは医師の判断によって変わるため、詳しくは診察時に相談してください。

ほくろの除去は当院にご相談ください

ほくろの診療で何より大切なことは患者様からお伺いする症状や状況です。そのため、当院ではじっくりと患者様からお話をお伺いし、そのうえで綺麗な仕上がりになるよう患者様の症状や状況に合わせ、適切な治療法をご提案します。

少しでもほくろの除去について気になっている方はお気軽にご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

他にも多数の症例を解説しています。

2025.05.14

レーザーでほくろ除去|他の治療法との違いや保険適用の条件も解説

「気になるほくろをきれいに取り除きたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

ほくろを除去する方法はいくつかありますが、傷跡が目立ちにくく、短時間で治療できるのが「レーザー治療」です

今回は、レーザー治療の原理やメリット、他の治療法との違いについて解説します。保険適用の条件や治療の流れ、よくある質問にも解説しますので、レーザー治療を検討している方はぜひ参考にしてください。

 

ほくろのレーザー治療とは

レーザー治療では、特定の波長の光を照射することで、皮膚の一部を破壊・除去することができます。皮膚科や美容皮膚科で多く用いられ、主に以下のような症状に高い効果を発揮します。

・ほくろ
・イボ
・シミ
・あざ
・血管腫

レーザーは切らずに治療できるため、美容目的での利用が広がっています。

ほくろを除去する方法はいくつかありますが、傷跡が目立ちにくく、短時間で治療できるのが「レーザー治療」です

 

治療の原理

レーザー治療は、光のエネルギーを利用して、対象となる組織を破壊する方法です。照射されるレーザー光は、色素や水分に吸収されやすい特性を持っています。

治療の目的に応じて、波長が選ばれます。例えば、ほくろ除去の場合はメラニン色素に反応するレーザーを使用し、色素細胞のみをピンポイントで破壊します。

皮膚の他の部分へのダメージが少ないため、回復も比較的早いのがレーザー治療の特徴です。

 

メリット

レーザー治療のメリットは、以下のとおりです。

・傷跡が小さく済む
・施術時間が短い
・出血が少ない
・ダウンタイムが短い

レーザー治療は、術後の傷がほとんど目立ちません。切開しないため、施術時間や回復時間が短くなります。他の治療方法に比べて、日常生活への影響が少ない治療です。

デメリット

レーザー治療のデメリットは、以下のとおりです。

・再発する可能性がある
・保険が適用されない
・施術対象に制限がある

視認できない深部の細胞が取り切れないと、再発するリスクがあります。また、サイズが大きいものや悪性の疑いがある症状には対応できません。

またほくろの治療で保険が適用されるのは、基本的にメスを使用する治療のみです。そのため、レーザー治療は保険適用外となります。

 

他の治療との違い

レーザー治療と、他の治療法の違いは以下のとおりです。

切除法(皮膚切除)

切除法は、メスを使用してほくろを切除する治療方法です。切開した箇所の縫合を行うため、術後は抜糸が必要になります。

ほくろが5mm以上、もしくは悪性の可能性がある場合に適応される方法です。切除法は、病理検査も同時に行えます。

ほくろを確実に取り切れるため、他の治療方法と比較すると再発のリスクがほとんどありません。回復までには、1~2週間程度の時間を要します。

レーザー治療

レーザー治療は、ほくろにレーザーを照射し、色素や組織を焼灼・蒸散して除去する治療方法です。2mm以下の小さなほくろや、シミ、イボなどに適応されます。

治療後は、赤みやかさぶたが数日~1週間程度残る可能性がありますが、他の治療方法と比較するとダウンタイムが短いことが特徴です。

レーザー治療は切開しないため、施術後の傷はほとんど目立ちません。そのため、美容目的で行うケースが多くあります。ただし、確実に取り切れないと再発する可能性があります。

高周波焼灼術

高周波焼灼術は、高周波電流の熱を利用してほくろを削り取り、細胞を破壊する治療方法です。外科手術では、止血のために使用される電気メスの治療器です。

再発の可能性も少ない治療方法ですが、深く削りすぎると正常な組織まで傷つけ、傷跡が残りやすくなります。そのため、深さをmm単位でコントロールできる医師の技術が求められます。

 

治療の流れ

レーザー治療の流れは、以下のとおりです。

・診察、カウンセリング
・施術
・術後のケア

それぞれの流れを詳しく解説します。

STEP1:診察・カウンセリング

まず、医師による診察とカウンセリングが行われます。具体的には、以下の項目を確認します。

・ほくろの状態
・レーザー治療ができるかどうか
・希望する治療方法ぼヒアリング
・治療内容と費用の説明

所要時間は、15~30分程度です。場合によっては、そのまま施術できるケースもあります。

STEP2:施術

施術は、以下の手順で行われます。

・局所麻酔
・レーザー照射
・治療後の措置

対象となるほくろの周囲に局所麻酔を行います。チクッとした痛みはありますが、麻酔後は痛みを感じることなく治療を受けられます。

レーザーを照射する時間は数分程度です。最後に止血と消毒を行い、保護テープを貼って終了です。

STEP3:術後のケア

術後すぐに、肌色のテープで傷口を保護します。テープは患部の保護や乾燥を防ぐ役割があり、3日~1週間ほど貼り続けることが推奨されています。

顔のほくろの除去の場合、施術当日は洗顔は避けましょう。メイクは傷口がふさがってから行うことが推奨されています。3~7日後が目安となりますが、傷の回復具合によって異なるため、詳しくは医師に相談しましょう。

 

ダウンタイム

レーザー照射後のダウンタイムは、個人差があります。たとえ小さな処置でも肌にダメージが加わるため、ダウンタイム(回復期間)が必要です。

具体的には、以下のような症状が見られます。

症状 回復期間
赤み・腫れ ・治療直後に赤みや軽い腫れが出る場合がある
・数日~1週間程度で落ち着く
かさぶた ・レーザーを照射してから2~3日後に形成される
・形成後は自然に剥がれ落ちるまで待つ(1週間~10日程度)
色素沈着 ・かさぶたが取れた後、一時的に色素沈着することがある
・個人差があるが数週間~数ヵ月以内に薄くなり目立たなくなる

ダウンタイム中は、患部を擦ったり触ったりしないように注意しましょう。外出時は日焼け対策を徹底することが大切です。

必要に応じて、医師に処方された保湿剤や軟膏を使って回復をサポートしましょう。

よくある質問

 

ここでは、ほくろ治療に関するよくある質問を紹介します。

治療したほくろが再発することはありますか?

レーザー治療の場合は、再発の恐れがあります。治療してから数年後に、ほくろが点状に出てくることはありますが、治療前の状態になることは滅多にありません。

レーザー治療は主に美容目的で行うものなので、再発を避けたい方はメスで除去する方が確実です。

傷跡が残りませんか?

ほくろの位置や深さによって、細かい凹凸や傷跡が残ります。とはいえ、白っぽく薄い傷跡なので、ほとんど目立ちません。目立つ傷跡になることは稀です。

ただし、ほくろの種類や部位、患者様の体質によって傷跡が目立つ可能性もあります。レーザー治療で予想される傷跡については、診察の際に詳しくお伝えします。

麻酔をしないと治療できませんか?

レーザーで皮膚を削るため、麻酔なしでは治療できません。麻酔は、ほくろ部分のみに行います。チクッとした痛みを感じる場合がありますが、激しい痛みを伴うことはありません。

ただし、小さいほくろや症状によっては、麻酔なしで治療をすることもあります。

ほくろの治療は当院にご相談ください

ほくろの診療で何より大切なことは患者様からお伺いする症状や状況です。

そのため、当院ではじっくりと患者様からお話をお伺いし、そのうえで綺麗な仕上がりになるよう患者様の症状や状況に合わせ、適切な治療法をご提案します。

少しでもほくろの除去について気になっている方はお気軽にご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

他にも多数の症例を解説しています。

2024.09.19

皮膚がんとは?原因や種類・見分け方から治療法まで解説!

「最近ホクロが大きくなってきた」
「以前はなかったシミが広がってきた」

上記の症状で、自分が皮膚がんではないかと、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。他の疾患と症状が似ていることから、見分けがつきにくいのが皮膚がんです。

本記事では、皮膚がんの種類や見分け方を解説しています。ぜひお役立てください。

 

皮膚がんとは

皮膚がんとは、皮膚の細胞が傷ついて変異することで、細胞が無秩序かつ無制限に増殖する状態のことです。

増殖にともなって、周辺の正常な皮膚組織を破壊していきます。皮膚がんは、皮膚に症状が出るため、臓器にできるがんより見た目で発見しやすいといえるでしょう。ただ、やっかいなのは、痛みなどの自覚症状がないため、ついつい放置してしまうことです。

皮膚がんの初期症状は小さなホクロや湿疹、できものと似ています。一般の軟膏を塗っても全然治らない、急激に大きくなるなどで、がんとわかる場合があります。

皮膚がんは放置していると、他の箇所に転移することがあるため注意が必要です。最初に発症した患部より離れた箇所に転移してしまうこともあり、内臓に転移した場合、最終的に死にいたるケースがあります。

皮膚がんの主な原因

皮膚がんの原因はさまざまですが、主に紫外線の影響によるものが大きいとされています。他には、衣服による皮膚への摩擦などの慢性的な刺激や、ヒトパピローマウイルスなどの皮膚のウイルス感染によるものです。

ヒトパピローマウイルスは、主に性交渉によって感染するウイルスです。

また、火傷や外傷などの過去の傷跡から発生するケースや、皮膚がんではない皮膚疾患が変異し、がんになることがあります。

他には、放射線による影響やヒ素などの化学物質による影響、遺伝的に皮膚がんの発生率が高くなる色素性乾皮症による場合です。わきの下に多く存在するアポクリン汗腺の細胞ががん化する場合もあります。

このように皮膚がんの原因は、いろいろなケースが考えられます。

皮膚がんの主な種類

皮膚がんの主な種類は以下のとおりです。

  •  ・基底細胞がん
  •  ・悪性黒色腫
  •  ・有棘細胞がん
  •  ・ボーエン病
  •  ・パジェット病
  •  ・血管肉腫

 

それぞれの特徴を解説していきます。

基底細胞がん(きていさいぼうがん)

特徴 内容
肌の色など見た目 ・黒色か黒褐色
・平面であるが、盛り上がっている場合もある
・潰瘍化することがある
主な原因 ・紫外線
・放射線
好発部位 ・上口唇部
・外鼻部
・頬部
・下眼瞼部
好発年齢 70代以上
自覚症状 ほとんどなし

基底細胞がんは、表皮の一番下にある基底細胞から発症するがんで、皮膚がんの中では最も多いとされています。転移することは少ないですが、再発しやすい特徴があります。

好発年齢は70代以上ですが、40〜60代にも多い疾患です。

悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)

特徴 内容
肌の色など見た目 ホクロと似ているが、以下の違いがある。
・形がいびつ
・境目が明確でない
・色がまばら
主な原因 明確になっていないが、以下が原因といわれている
・紫外線
・加齢
好発部位 ・手のひら
・足の裏
・爪
・陰部
・口腔部
・鼻腔部
好発年齢 60〜70代
自覚症状 ほとんどなし

悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラノサイトと呼ばれるメラミン色素を作る細胞が、がんになったものです。日本での発症は、10万人に1〜2人程度と少なめです。

症状が早く進むため、治療しても転移するなど再発するケースがあります。発症年齢は幅広く、若い年代においても発症します。

有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)

特徴 内容
肌の色など見た目 ・赤みを帯びている
・わずかに盛り上がる
・潰瘍化してじゅくじゅくする
主な原因 ・紫外線
・皮膚摩擦
・やけどの跡
・放射線
好発部位 ・顔
・首
好発年齢 70歳以上
自覚症状 ・ほとんどなし
・まれに臭気を発する

有棘細胞がんは、表皮に存在する有棘細胞が、がんになったものです。転移していなければ、切除によって治療でき、再発することもほとんどないでしょう。

潰瘍化してじゅくじゅくするため、湿疹と勘違いする人も少なくありません。

ボーエン病

特徴 内容
肌の色など見た目 ・円形もしくは楕円形
・赤色もしくは茶色
・患部の境界は明確
・かさぶたができることはある
・患部が盛り上がることがある
主な原因 ・紫外線
・ヒトパピローマウイルス
・ヒ素
好発部位 ・体幹部
・四肢
・陰部
好発年齢 60歳以上
自覚症状 ほとんどなし

ボーエン病は、有棘細胞がんと同じく、表皮の奥にある有棘層で発生するがんですが、表皮にとどまった状態を指しています。進行は遅く、真皮に届いていなければ転移しません。

パジェット病

特徴 内容
肌の色など見た目 ・湿疹のようにみえる
・赤色(他に、茶色や白色)
・進行するとしこり、潰瘍化
主な原因 明確にはなっていないが、以下が考えられる
・皮膚への刺激
・遺伝
・女性ホルモンの影響
好発部位 乳房外パジェット病
・陰部
・肛門の周辺
・脇の下
乳房パジェット病
・乳房
好発年齢 ・乳房外パジェット病は70〜80代
・乳房パジェット病は特になし
自覚症状 ・ほとんどなし
・かゆみを感じることがある

パジェット病は、アポクリン腺と呼ばれる、汗器官に関する細胞が、がんになったものです。転移していなければ、表皮の切除で治療できます。

血管肉腫(けっかんにくしゅ)

特徴 内容
肌の色など見た目 ・初期においては内出血やあざのように見える
・進行すると次第に潰瘍になる場合や、出血をともなうことがある
主な原因 明確になっていないが、以下が考えられる
・外傷
・放射線
・紫外線
好発部位 ・頭部
・顔
好発年齢 特になし、高齢者に多い傾向
自覚症状 ・ほとんどなし
・進行すると痛みを感じることがある

血管肉腫は、血管の内側にある細胞が、がんになったものです。発症するのは少数ですが、進行が早いため注意が必要です。

臓器など含め全身にでき、発症全体のうち半数は皮膚での発症です。

皮膚がんと間違えやすい他の疾患

皮膚がんは特に初期のうちは、ほくろや湿疹などと区別がつきにくいことがあります。ホクロや湿疹など、他の疾患に間違えやすいがんは、以下のとおりです。

間違えやすい症状の種類 がんの種類
ホクロと間違えやすい ・悪性黒色腫(メラノーマ)
・基底細胞がん
湿疹と間違えやすい ・ボーエン病
・パジェット病
・有棘細胞がん
内出血やあざと間違えやすい 血管肉腫

症状により、イボやシミに見える場合もあります。

皮膚がんは、目で確認できるため、他のがんより見つけやすいです。しかし、他の疾患と思い込み放置することで進行し、臓器などに転移してしまうケースがあります。

皮膚がんセルフチェック

皮膚がんのセルフチェック方法を解説します。当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。

  • ほくろのような状態の場合
    •  ・形が左右対称でない
    •  ・患部の境界がぼやけている
    •  ・色が均等でなくまばらである
    •  ・表面が凸凹している
    •  ・潰瘍化している
    •  ・患部が盛り上がってきた
    •  ・急に大きくなってきた

     

  • 湿疹のような状態の場合
    •  ・やけど跡や傷跡に湿疹ができた
    •  ・赤い斑点状もしくは一部白っぽく色が抜けた状態である
    •  ・湿疹用の塗り薬を塗っても2週間以上経っても治らない
    •  ・だんだん範囲が広がってきた
    •  ・表面がかさかさで固い
    •  ・あざや内出血のような状態がいつまでも治らない
    •  ・悪臭がある

     

    がん以外の疾患でも、上記症状に当てはまることはあります。しかし、がんの可能性もあるため、該当する項目があった場合は、一度診察を受けることをおすすめします。

    皮膚がんを放置するとどうなる?

    皮膚がんを放置すると進行し、転移するおそれがあります。皮膚がんも他のがんと同じように、進行によってステージ1〜4があります。

    ステージ1〜4における分類は以下のとおりです。

    段階 状態 治療法 5年以内生存率(参考値)
    ステージ1 ・皮膚に止まっている状態
    ・大きさ2cm以下
    ・手術による切除 95〜100%
    ステージ2 ・転移なし
    ・大きさは2cm以上
    ・手術による切除
    ・場合により放射線療法
    70〜80%
    ステージ3 ・リンパ節に転移がある
    ・大きさは4cm以上もしくは深部
    ・手術による切除
    ・放射線治療
    ・場合により化学療法
    50〜60%
    ステージ4 ・臓器に転移、患部より遠い箇所にも転移 ・手術による切除
    ・放射線治療
    ・化学療法
    ・免疫療法
    10%前後

    生存率は、あくまで一つの参考としてください。症状やがんの種類により生存率は異なります。

    治療法における化学療法とは、主に抗がん剤治療です。内服と点滴があります。

    免疫療法とは、患者から取り出した免疫細胞を増殖させ、再度体に戻すことで免疫力を高める方法です。放射線療法は、放射線を照射し、がん細胞を死滅させる治療法です。

    少しでも不安を感じたら早めに診察を

    がんは進行するに従い、対処が難しくなります。皮膚から内臓へ転移した場合、最終的に死に至るおそれがある疾患です。少しでも不安を感じたなら、早めに診察を受けたほうが良いでしょう。

    皮膚がんの治療は、皮膚科で行うのが一般的ですが、他の選択肢として形成外科もあります。形成外科では、見た目や機能面などの、がん手術後の再建手術もしています。

    当院では、形成外科と皮膚科の専門医による、きれいな仕上がりの治療が可能です。皮膚がんは、顔など目立つ箇所にできることも多いため、症状に不安があるときは、遠慮なく相談してください。

    院長紹介

    日本形成外科学会 専門医 古林 玄

    東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

    私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

    がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

    この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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2024.07.24

皮膚腫瘍の種類 予防と日常のケアの重要性

皮膚腫瘍の基本知識

皮膚腫瘍とは何か

皮膚腫瘍は、皮膚の細胞が異常に増殖することで生じる病変です。皮膚のあらゆる部位に発生する可能性があり、その形状や大きさ、色調はさまざまです。

皮膚腫瘍は、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されます。

  • 表皮系腫瘍
  • 真皮系腫瘍
  • 付属器系腫瘍

これらの腫瘍は、皮膚のどの層や構造から発生したかによって分類されます。例えば、表皮系腫瘍は皮膚の最も外側の層である表皮から発生し、真皮系腫瘍は皮膚の中間層である真皮から発生します。

皮膚腫瘍の中には、良性のものと悪性のものがあります。良性腫瘍は通常、周囲の組織に浸潤したり転移したりすることはありませんが、悪性腫瘍(皮膚がん)は周囲の組織に浸潤し、さらに他の臓器に転移する可能性があります。

皮膚腫瘍の発生原因はさまざまですが、主な要因として以下が挙げられます。

  • 紫外線への過度の曝露
  • 遺伝的要因
  • 免疫機能の低下
  • 化学物質への曝露
  • 慢性的な炎症や傷

皮膚腫瘍は、早期発見と適切な治療が重要です。特に悪性腫瘍の場合、早期に発見して治療を開始することで、予後が大きく改善する可能性があります。

そのため、定期的な自己チェックや皮膚科での検診を行い、皮膚に異常な変化を感じた場合は速やかに医療機関を受診することが推奨されます。

良性腫瘍と悪性腫瘍の違い

皮膚腫瘍には、良性と悪性の2種類があります。これらは見た目だけでは判断が難しいため、専門医による診断が重要です。ここでは、良性腫瘍と悪性腫瘍の主な違いについて解説します。

まず、成長の速さに違いがあります。良性腫瘍はゆっくりと成長し、ある程度の大きさで止まることが多いです。一方、悪性腫瘍は急速に成長し、短期間で大きくなる傾向があります。

次に、周囲への広がり方が異なります。良性腫瘍は周囲の組織を押しのけるように成長しますが、悪性腫瘍は周囲の組織に浸潤し、破壊しながら広がっていきます。

形状にも特徴があります。良性腫瘍は比較的形が整っていることが多いですが、悪性腫瘍は不規則な形状を示すことが多いです。

色調も重要な違いの一つです。良性腫瘍は均一な色調であることが多いのに対し、悪性腫瘍では複数の色が混在していたり、色むらがあったりすることがあります。

痛みや出血の有無も見分けるポイントです。良性腫瘍では通常、痛みや出血はありませんが、悪性腫瘍では痛みを伴ったり、容易に出血したりすることがあります。

最後に、転移の有無が大きな違いです。良性腫瘍は転移しませんが、悪性腫瘍は他の臓器に転移する可能性があります。

少しでも気になる変化があれば、早めに専門医を受診することが大切です。

発生頻度と年齢別の特徴

皮膚腫瘍は、比較的頻度の高い腫瘍の一つです。2019年の統計によると、日本では年間約25,000例の新規皮膚腫瘍が診断されています。これは人口10万人あたり20例程度の発生率に相当します。

性別で見ると、男性が12,815例、女性が12,432例とほぼ同程度の発生数となっています。人口10万人あたりの罹患率では、男性が20.9例、女性が19.2例と、わずかに男性の方が高い傾向にあります。

年齢別の特徴を見ると、皮膚腫瘍は高齢になるほど発生リスクが高まる傾向があります。特に70歳以上の年齢層で急激に罹患率が上昇します。具体的には以下のような傾向が見られます。

  • 50歳未満:比較的低い罹患率
  • 50〜69歳:徐々に罹患率が上昇
  • 70歳以上:急激な罹患率の上昇

例えば、80〜84歳の年齢層では、人口10万人あたりの罹患率が200を超えており、若年層と比べて10倍以上の発生リスクがあることがわかります。

この年齢による発生リスクの違いは、長年の紫外線暴露や加齢に伴う免疫機能の低下などが影響していると考えられています。そのため、若い頃からの日光対策や定期的な皮膚チェックが重要となります。

代表的な皮膚腫瘍の種類

表皮系腫瘍(基底細胞癌、扁平上皮癌など)

表皮系腫瘍は、皮膚の最外層である表皮から発生する腫瘍のことを指します。代表的なものとして、基底細胞癌と扁平上皮癌があります。これらは皮膚がんの中でも比較的頻度が高く、早期発見と適切な治療が重要です。

基底細胞癌は、表皮の最下層にある基底細胞から発生する悪性腫瘍です。以下のような特徴があります。

  • 好発部位:顔面(特に鼻や頬)、頭部、首筋など日光暴露部位
  • 外観:真珠様の光沢を持つ隆起性病変や潰瘍を伴うことも
  • 性質:転移はまれですが、局所破壊性が強い

一方、扁平上皮癌は表皮のケラチノサイトから発生し、以下のような特徴を持ちます。

  • 好発部位:顔面、耳介、手背など慢性的な日光暴露部位
  • 外観:鱗屑を伴う紅斑や潰瘍を形成することも
  • 性質:転移の可能性があり、進行すると生命に関わる

これらの腫瘍は、長年の紫外線暴露や慢性的な炎症、免疫抑制状態などが発生リスクを高めます。早期発見のためには、定期的な自己チェックと皮膚科専門医による診察が重要です。

治療法としては、外科的切除が第一選択となりますが、腫瘍の大きさや部位、患者さんの全身状態などに応じて、放射線療法や光線力学療法などが選択されることもあります。

皮膚がんの予防には、日常的な紫外線対策が欠かせません。日焼け止めの使用や帽子の着用、日中の外出を控えるなどの対策を心がけましょう。また、気になる皮膚の変化があれば、早めに専門医を受診することをおすすめします。

真皮系腫瘍(メラノーマ、脂肪腫など)

真皮系腫瘍は、皮膚の真皮層から発生する腫瘍の総称です。この種類の腫瘍には、悪性のメラノーマや良性の脂肪腫などが含まれます。

メラノーマは、メラニン細胞から発生する悪性腫瘍で、皮膚がんの中でも特に注意が必要です。日本人には比較的まれですが、近年増加傾向にあります。特徴として以下が挙げられます。

  • 色調の変化(黒色や茶色、時に赤や青など)
  • 形の非対称性
  • 境界線の不規則さ
  • 大きさの変化(6mm以上に拡大)

早期発見が重要で、上記の特徴がある場合は速やかに皮膚科専門医の診察を受けることをおすすめします。

一方、脂肪腫は良性の腫瘍で、皮下脂肪組織から発生します。特徴は以下の通りです。

  • 柔らかい触感
  • 可動性がある
  • 痛みを伴わないことが多い
  • ゆっくりと成長する

脂肪腫は通常悪性化することはありませんが、美容上の問題や大きくなることによる不快感がある場合は、外科的に切除することができます。

その他の真皮系腫瘍として、血管腫や神経線維腫なども挙げられます。これらの腫瘍は、それぞれ血管や神経組織から発生し、良性のものが多いですが、まれに悪性化することもあります。

真皮系腫瘍の診断には、視診や触診に加えて、ダーモスコピー検査や皮膚生検が有用です。治療法は腫瘍の種類や悪性度によって異なりますが、外科的切除が基本となることが多いです。

付属器系腫瘍(汗腺腫瘍、毛包腫瘍など)

皮膚には様々な付属器が存在し、それらから発生する腫瘍を付属器系腫瘍と呼びます。代表的なものには汗腺腫瘍と毛包腫瘍があります。

汗腺腫瘍には、エクリン汗腺由来とアポクリン汗腺由来のものがあります。エクリン汗腺腫瘍の代表例としては、エクリン汗孔腫があります。これは主に手掌や足底に発生する良性腫瘍で、小さな半透明のドーム状隆起として現れます。一方、アポクリン汗腺由来の腫瘍には、乳房外パジェット病があります。これは主に高齢者の外陰部や肛門周囲に発生し、湿疹様の症状を呈します。

毛包腫瘍には、毛包上皮由来のものと毛包間質由来のものがあります。前者の例として毛包腫があり、顔面や頭部に好発する良性腫瘍です。後者には毛包性線維腫があり、主に顔面に発生する良性腫瘍です。

これらの付属器系腫瘍の多くは良性ですが、まれに悪性化することがあります。例えば、汗腺がんや毛包がんなどが挙げられます。これらは非常にまれで、診断や治療に専門的な知識が必要となります。

付属器系腫瘍の治療は、良性の場合は経過観察や外科的切除が主となります。悪性の場合は、腫瘍の大きさや浸潤の程度に応じて、広範囲切除やリンパ節郭清が必要となることがあります。また、進行例では放射線療法や化学療法が検討されますが、希少がんであるため標準的な治療法が確立されていない場合もあります。

早期発見・早期治療が重要であるため、皮膚の異常を感じたら速やかに皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。

皮膚腫瘍の予防と日常のケア

日光対策の重要性

皮膚腫瘍の予防において、日光対策は極めて重要です。太陽光に含まれる紫外線は、皮膚に深刻なダメージを与え、皮膚がんのリスクを高める主な要因となります。特に幼少期からの対策が重要で、子供の頃の過度の日光曝露は、将来の皮膚がん発症リスクを大きく増加させます。

効果的な日光対策には、以下のような方法があります。

日焼け止めの使用
  • SPF30以上の製品を選ぶ
  • 外出20分前に塗布
  • 2時間おきに塗り直す
  • 水泳後やタオルで体を拭いた後も再塗布
適切な服装
  • 帽子の着用で顔や首を保護
  • 長袖シャツや長ズボンで肌の露出を減らす
  • UVカット機能付きの衣類を選ぶ
日光の強い時間帯を避ける
  • 10時〜14時頃は特に注意
  • 日陰を利用する
  • 屋内で過ごす時間を増やす
  • サンベッドの使用を避ける
  • 人工的な紫外線も危険
  • 皮膚がんリスクを高める

これらの対策を日常的に実践することで、皮膚へのダメージを最小限に抑えることができます。また、定期的な自己チェックも重要です。肌の変化に気づいたら、すぐに専門医に相談しましょう。

日光対策は、皮膚の健康を守るだけでなく、早期老化の予防にも効果があります。美しく健康な肌を保つためにも、日々の日光対策を習慣化することが大切です。

定期的な自己チェックの方法

皮膚腫瘍の早期発見には、定期的な自己チェックが非常に重要です。月に1回程度、全身の皮膚を丁寧に観察する習慣をつけましょう。以下に効果的な自己チェックの方法をご紹介します。

明るい場所で全身を確認

十分な明るさのある場所で、全身の皮膚を観察します。特に日光の当たりやすい部位は注意深くチェックしましょう。

鏡を活用した観察

大きな鏡を使って、正面だけでなく背中や側面も確認します。手鏡を併用すると、より細かな部分まで観察できます。

体の部位別チェックポイント
  • 顔:額、鼻、頬、耳の周り
  • 頭皮:髪の分け目や生え際
  • 首周り:前面、側面、後ろ
  • 上半身:胸、腹部、背中、わきの下
  • 腕:上腕、前腕、手の甲と手のひら
  • 下半身:お尻、太もも、ふくらはぎ
  • 足:足の甲、足裏、指の間
触診によるチェック

皮膚の変化を目で見るだけでなく、指で軽く触れて硬さや凹凸を確認します。特にリンパ節のある部位(わきの下や太ももの付け根など)は注意深く触診しましょう。

記録をつける

気になる部位は写真を撮るなどして記録し、経過を追えるようにします。変化が見られた場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

定期的な自己チェックを習慣化することで、皮膚の変化に早く気づくことができます。少しでも気になる点があれば、躊躇せずに医療機関を受診することが大切です。

生活習慣の改善

皮膚がんの予防や再発防止のために、日々の生活習慣を見直すことが大切です。以下に、皮膚の健康を維持するための重要なポイントをご紹介します。

紫外線対策の徹底

外線は皮膚にダメージを与える要因の一つです。外出時は以下の対策を心がけましょう。

  • 日焼け止めを適切に使用する(SPF30以上、PA+++以上を推奨)
  • 帽子や日傘を活用し、直射日光を避ける
  • 長袖や長ズボンを着用し、肌の露出を減らす
バランスの取れた食事

抗酸化作用のある食品を積極的に摂取しましょう。

  • ビタミンC:柑橘類、キウイ、ブロッコリーなど
  • ベータカロテン:にんじん、かぼちゃ、ほうれん草など
  • リコピン:トマト、スイカ、ピンクグレープフルーツなど
適度な運動

適度な運動は免疫力を高め、皮膚の健康維持に役立ちます。

  • ウォーキングや軽いジョギングを週3回程度
  • ストレッチや軽い筋トレを毎日10分程度
十分な睡眠とストレス管理

質の良い睡眠とストレス軽減は、皮膚の回復と健康維持に不可欠です。

  • 7-8時間の睡眠を心がける
  • 瞑想やヨガなどのリラックス法を取り入れる
定期的な自己チェックと検診

早期発見・早期治療のために、自己チェックと定期検診を習慣づけましょう。

  • 毎月1回の自己チェック
  • 年1回以上の皮膚科検診

これらの生活習慣の改善を継続することで、皮膚の健康維持に寄与する可能性があります。

まとめ:早期発見・早期治療の重要性

皮膚腫瘍、特に皮膚がんにおいては、早期発見・早期治療が非常に重要です。皮膚は外から見える臓器であるため、自分で異変に気づきやすいという特徴があります。しかし、一見して良性に見える皮膚の変化が、実は悪性腫瘍である可能性もあります。

例えば、以下のような症状が長期間続く場合は要注意です。

  • 治りにくい「いんきんたむし」のような症状
  • なかなか消えない「内出血」のような跡
  • 改善しない「アトピー性皮膚炎」様の湿疹

これらの症状は、それぞれ以下のような悪性腫瘍の可能性があります。

  • 乳房外パジェット病
  • 皮膚血管肉腫
  • 菌状息肉症

これらの皮膚がんは、早期発見と治療が推奨されます。一方で、発見が遅れると、リンパ節や内臓への転移リスクが高まり、生命に関わる危険性も出てきます。

皮膚の変化に気づいたら、以下の対応を心がけましょう。

  • 自己判断せず、速やかに皮膚科を受診する
  • 症状が1ヶ月以上改善しない場合は再度受診する
  • 定期的に全身の皮膚をチェックする習慣をつける

また、皮膚がんの予防として、日々の紫外線対策や生活習慣の改善も重要です。早期発見・早期治療は、皮膚がんと向き合う上で最も効果的な方法です。自分の身体に関心を持ち、些細な変化も見逃さない意識を持つことが大切です。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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2023.09.14

皮膚の腫瘍をチェック!ほくろの種類と注意したい変化・皮膚の健康管理

皮膚の表面に見られるほくろは、多くの人にとっては日常的な存在です。
しかし、ほくろは単なる小さな皮膚のマークでなく、時に健康に関する大切な情報を教えてくれることもあります。

こちらでは、ほくろの種類と注意したい変化やサインについて、またほくろがある皮膚の健康管理について解説します。

ほくろの種類と注意したい変化・サイン

ほくろの主な種類

Miescher(ミーシャー)母斑(Miescher nevus)

皮膚に現れる一種の良性のほくろで、通常は皮膚の表面にある直径1センチ程度の小さな丸い斑点です。
黒色または茶色をしており、皮膚の表面に平坦に存在します。
単一の斑点として現れますが、場合によっては複数の小さな斑点としても現れることがあります。
顔や首、胸、背中などの体の様々な部位に現れます。

Unna(ウンナ)母斑(Unna nevus)

でこぼこした形が特徴的な良性ほくろの一種で、比較的一般的です。
皮膚の表面に現れ、色は褐色または黒色で、直径が1センチ前後の小さなほくろです。
特に顔や首の周りに現れることが多く、上腕や太ももにも見られます。柔らかくふくらんでいるのが特徴です。

Clark(クラーク)母斑(Clark nevus)

皮膚の表面に存在する一般的な良性ほくろで、茶色または黒色をしており、直径は1センチ以下であることが多く、色が均一、または中心が濃く外側に向かって徐々に薄くなるのが特徴です。
手のひらや足の裏を含め、全身に見られます。

Spitz(スピッツ)母斑(Spitz nevus)

子供や若者に多く見られ、60歳以上の高齢者では稀です。
早期のメラノーマとの判別が困難な場合があり、以前は若年性メラノーマとも言われていました。
顔や四肢をはじめ全身どこにでもでき、色は黒褐色や赤褐色、淡褐色など様々です。
通常良性ですが、急に大きくなるなど変化がある場合は、メラノーマと見分けるためにクリニックで診断・生検を行うことが大切です。

皮膚の悪性腫瘍「メラノーマ」について

メラノーマは皮膚がんの一種で、悪性黒色腫と言われます。
ほくろのように見えますが、良性の一般的なほくろとは異なり、非常に不規則な形状、異常な色、不均一な境界線を持ち、急速に変化することがあります。
メラノーマは早期発見・適切な治療が重要です。

【メラノーマの自己チェック方法】

メラノーマは自己チェックや予防策を通じて、早期に発見が可能です。
メラノーマの早期発見につながる自己チェックの方法を簡単に紹介します。

ABCDEルール

このルールは下記の頭文字を表しています。

  • Asymmetry(非対称性)
  • Border(境界)
  • Color(色)
  • Diameter(直径)
  • Evolution(変化)

自己チェック時にこれらの要素を確認しましょう。
形が対称でなくいびつ、境界が不規則で輪郭がぼけている、色の濃淡が不均一、直径が6mm以上、急に変化(拡大)している場合は注意が必要です。

全身チェック

手鏡を使って全身を慎重にチェックし、特に日光にさらされる部位やほくろの多い部分に注意を払いましょう。

ほくろと皮膚腫瘍の関連性

ほくろがある場所や変化には注意が必要です。
悪性ほくろであるメラノーマは、ほくろから発生することがあり、早期発見が重要です。
急激な変化、非対称性、不均一な色、直径が6mm以上のほくろは、病院で診察を受けるべき兆候です。

注意したいほくろの変化

ほくろは時間の経過とともに変化することがあります。
変化に気をつけることは、皮膚の健康を保つために極めて重要です。
以下はほくろの変化に注意すべきサインです。

確認項目 注意したい変化
サイズ ほくろが急激に大きくなる場合・直径が6mm以上になる場合
形状 ほくろの形状が不規則に変わる場合・特に凹凸や境界線の乱れが見られる場合
ほくろが異常な色(特に黒や深紅色)を呈する場合・色が均一でない場合
境界線 ほくろの境界線が不均一でぼんやりとした場合・特にほくろの周囲に色素の広がりが見られる場合
痛みやかゆみ ほくろが痛む、かゆい、出血する場合

ほくろの変化に気付いた場合、専門医の診断が不可欠です。
早期の診断と治療は、悪性ほくろや皮膚がんのリスクを軽減するために極めて重要です。

ほくろがある皮膚の健康管理について

ほくろがある皮膚の健康管理は、早期発見と予防を強化し、皮膚がんなど悪性腫瘍のリスクを低減するのに役立ちます。
自己チェックと専門医のアドバイスを組み合わせ、皮膚の健康を守りましょう。

定期的なほくろの自己チェック

自分自身で定期的なほくろの自己チェックを行いましょう。
ほくろの変化や異常を見つけるのに役立ちます。
注意すべき変化には、ほくろの形状、色、大きさ、境界の不規則性、かゆみ、出血、痛みなどが含まれます。

日光からの保護

ほくろは紫外線からのダメージを受けやすいため、日焼けから皮膚を保護することが重要です。
帽子、肌の露出が少ない衣服、日焼け止めなどで紫外線対策をしましょう。

物理的な刺激を減らす

洗顔やスキンケア、メイクなど、皮膚やほくろを強くこすったり引っ張ったり刺激を与えると、メラニン色素が多く分泌されるため、刺激を与えないようにやさしく丁寧にお手入れすることが大切です。

食事と健康的な生活習慣

バランスの取れた食事、十分な水分摂取、適度な運動など、健康的な生活習慣を維持しましょう。
これはほくろの有無にかかわらず、健やかな肌の基本です。

家族歴の確認

家族にほくろが多い方や皮膚がんの方がいる場合、遺伝的な要因が関与している可能性があるため、確認しておくことをおすすめします。

医師の診察

不安定なほくろ、変化があるほくろ、または新しく現れたほくろがある場合、医師に相談しましょう。
診察を行い、必要に応じて生検を行うことがあります。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2019.07.02

ほくろの診察/治療について専門医が徹底解説

ほくろについて

色や形、膨らみの有無など見た目が様々なほくろですが、稀に悪性のものが含まれるため注意が必要です。特に「急にできた」「大きくなった」「色や形が変わっている」場合は、皮膚がんの可能性を疑います。こういった特徴がある場合は、お早めにご相談ください。もちろん見た目が気になる方も一度受診してみることをおすすめします。

こんな症状はありませんか?

  • 急にシミやほくろができた
  • シミやほくろのサイズが急に大きくなった
  • シミやほくろの色や形が変わった
  • ほくろの色が変だったり濃い色をしている
  • ほくろの形状が丸くなく歪な形をしている
  • ほくろと皮膚の境目がにじんでいて色が染み出している

これらは皮膚がんに多く見られる特徴です。気付いたら、なるべく早めに受診してください。

ほくろの診療

ほくろの診療で何より大切なことは患者様からお伺いする症状や状況です。そのため、当院ではじっくりと患者様からお話をお伺いするようにしています。問診後に検査を行います。ほくろが悪性であるという疑いが強い、リスクが高いと判断した場合には、手術で切除し病理検査を行うことで診断が確定します。ほくろが悪性だった場合には、健康保険が適用されます。

ほくろの治療

ほくろの治療では綺麗な仕上がりを心がけています。そのため、患者様の症状や状況に合わせた適切な治療法をご提案します。 ほくろは、そのほとんどが皮膚の深い部分にあるメラニン色素でできています。盛り上がったほくろを含め、ほとんどのケースではレーザー治療が有効です。
ただし、レーザー治療は、数ヶ月おきに複数回受ける必要があるため、時間がかかります。さらにほくろが悪性だった場合はレーザーは有効ではありません。 
重要なのは、客観的な情報だけでなく、患者様のご希望をしっかり伺った上で、最適な治療を行うことだと当院では考えています。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。