繰り返す痛いおできができる化膿性汗腺炎に悩まされていませんか?
化膿性汗腺炎はお尻、脇など、人に見せるのが恥ずかしい場所にできることもあり、病院に行くことをためらってしまう方が多くいらっしゃいます。しかし放置をすればするほど悪化し、生活に支障をきたし、また治療もより難しくなっていきます。
この記事では、化膿性汗腺炎ができる原因と正しい治療法を解説します。
病気について正しく理解し、悪化させないように早めに対処しましょう。
化膿性汗腺炎とは
どんな病気?
毛が生えてくる部分である毛包が、なんらかの理由で慢性的に塞がり、炎症が起こることで、痛みを伴う皮下への膿の蓄積が生じる病気です。
近年日本では食の欧米化、また衣類の変化に伴い急速に増えてきています。
しかし、まだ日本ではこの病気に対する理解が進んでおらず、適切な治療を受けている患者様が少ない状況です。
症状の出やすい部位
化膿性汗腺炎は、首、脇の下、乳房の周り、足の付け根、鼠径部、肛門の周りなどに発症することが多いです。人に見せるのが恥ずかしい場所にできることが多いため、受診が遅れ、悪化してしまうこともあります。
症状を発症する年齢、男女の違い
思春期以降の男女に発症することがほとんどであり、特に日本では20〜40代が最も発症しやすいと言われています。女性は閉経後に発症することが珍しいため、女性ホルモンとの関係が疑われています。一方男性は、化膿性汗腺炎が老後まで続くことも有ります。
また、男性の方が重症化しやすいとも言われています。
皮膚の診察の仕方
特定の仕方としては2つあります。腫瘍の位置と、治癒と再発を繰り返しているかどうかで判断する方法と、深い腫瘍から膿のサンプルを採取して、検査室で細菌を特定する方法の2通りです。化膿性汗腺炎の腫瘍は他の皮膚腫瘍と似ており、慣れていないと医師でも診断がはっきりしないことがありますので、 自分で判断するのは難しいと考えられます。
そのため、少しでも気になった場合は早めに病院で受診し、医師に相談することをおすすめします。
化膿性汗腺炎の考えられる4つの原因
化膿性汗腺炎の正確な原因は 不明
実は化膿性汗腺炎の詳細な原因は、いまだ解明されておらずわかっていません。
しかし、なんらかの要因で毛穴がつまり、炎症を引き起こすことが原因であることはわかっています。また、衛生状態の悪さや、デオドラント剤やパウダーを使用したり、わき毛を剃ったりすることは関係ないと考えられています。
正確な原因は不明ですが、これまでの調査により 考えられる原因は4つあります。
ここではその4つの原因に関して解説をしていきます。
喫煙
タバコに含まれるニコチンが、毛孔閉塞を引き起こすのではないかと考えられています。また、化膿性汗腺炎を発症した患者様の内、喫煙者と禁煙者の割合が2:1であることから喫煙は化膿性汗腺炎の原因として大きく関係があると考えられています。
肥満
肥満は肌の擦れによる刺激を引き起こすこと、化膿性汗腺炎を悪化・慢性化させる成分(TNFα)を産み出すこと、また、汗による蒸れを引き起こすことが考えられます。これらは化膿性汗腺炎を引き起こす要因になっているのではないかと考えられています。
遺伝
詳しい機構は未だ解明されてはいませんが、化膿性汗腺炎の患者様の内、 30~40%の方が遺伝的な要因があったと報告されています。
食事
乳製品の一部、経口避妊薬、不妊治療で使われる薬、および避妊薬などが化膿性汗腺炎の原因である毛穴のつまりを引き起こす物質(アンドロゲン)を含んでおり、化膿性汗腺炎を引き起こすのではないかと考えられています。
以上の原因を踏まえると、かかりやすい方の特徴としては、トラック運転手、またデスクワークなどの長時間座ることが多い人、また、喫煙者と肥満者といった特徴があげられます。
化膿性汗腺炎の症状
化膿性汗腺炎は放置すると悪化し炎症が広範囲へと広がり、生活に支障をきたすようになります。各段階でどういった症状がみられるか解説します。
悪化の4段階
1.毛穴が詰まり、しこりやおできのようなものでき、時間が立つと大きくなり、赤く腫れる( 結節)
2.おできに膿がたまり( 膿腫)、さらに膿がたまり毛を包む袋がやぶれ、ぷよぷよした状態になる( 膿瘍)
3.膿が広がり、周囲の組織が反応し炎症を生じる。
4.おできが複数あると、隣通しの毛を包む袋が破れ、貫通し、皮膚の下で蜂の巣のようなトンネルができる( 瘻孔)。さらに炎症を拡大し、腫瘍の再発を繰り返すことで皮膚が厚くなり傷跡が残る( 瘢痕)。またこれを繰り返すことで慢性化していく。
このように、症状が悪化すればするほど、慢性化や傷跡が残る可能性が大きくなります。
日常生活に及ぼす支障
初期の状態では、痛みを伴うおできがいくつかできる程度ですが、
悪化すると以下のように生活に支障をきたします。
- ・擦れると患部が痛み、思うように動くことができない
- ・長時間座っているのが苦痛であり、会議や遠方への移動が辛い
- ・外出することに対して消極的になる
- ・膿によって服が汚れる
- ・臭いが気になる
このように悪化すると様々な状況で支障をきたし、生活に悪影響を及ぼすため、手遅れになる前に、早めに受診し治療することをおすすめします。
当院では、できものを専門に治療を行っておりますので、少しでも気になった場合は是非ご相談ください。
化膿性汗腺炎の治療方法
重症度により、治療法は異なってきますが、投薬治療による内科的治療と手術による外科的処置の2つに分かれます。
それぞれの治療の特徴を解説します。
外科的処置
おできのできている 患部全体を切除、または、 患部を切開して膿を出します。
炎症部位が広範囲に及んでいる場合、切除する部分が大きくなるため、皮膚を切り移動する、または皮膚移植をする場合もあります。手術で切除する際に取り残しがある場合は再発する可能性もあるため、しっかりと切除することで、より抜本的な改善を見込めます。
内科的治療
患部の状態によっては、外科的処置を行うことができない場合があります。
また、外科的処置をしても症状が改善しない場合もあります。
そのような場合に、内科的治療として飲み薬や塗り薬、注射薬などの薬を使用することがあります。それぞれの重症度により、使用する薬が異なってくるため、早めに病院に受診することをおすすめします。
当院ではできものを専門に治療しておりますので、患者様にあった治療を行っております。少しでも気になった場合は一度ご相談ください。
化膿性汗腺炎に対するセルフケア
普段の生活でできる6つの対策方法
禁煙
たばこに含まれる成分は化膿性汗腺炎を発症させる原因と考えられています。禁煙によって他の病気も予防できるため、一度喫煙習慣を見直してみてください。
減量
肥満は化膿性汗腺炎を悪化させるTNFαという物質を産み出すだけでなく、皮膚にかかる圧力を増やし、膿の破裂を引き起こし、化膿性汗腺炎を悪化させます。
服装
肌への刺激を少なくするために、ゆったりサイズの綿素材の肌着と洋服をおすすめします。ピッタリとした服は患部を刺激し、悪化させる要因にもなるので、気をつけましょう。
使用するガーゼ
使用するガーゼは症状の状況によって最適なものが異なり、誤った種類のものを使用するとむしろ悪化させることもあるので、医師から指定されたものを使用するようにしてください。
カミソリの使用
カミソリは刺激が多いため、使用は控え、電気シェーバーやハサミで短くカットするなど気をつけるようにしましょう。
清潔な習慣
化膿性汗腺炎は不衛生が原因の病気ではありませんが、二次感染を防ぐために清潔に保つことが必要です。シャワーや入浴で清潔を保つようにしましょう。また、香料や他の刺激物が少ないボディーソープで優しく洗うようにしましょう。
化膿性汗腺炎以外の可能性も?
化膿性汗腺炎とよくにた2つの病気
化膿性汗腺炎と似ている病気として粉瘤や毛嚢炎などがあります。
それぞれの違いを解説します。
粉瘤
粉瘤は皮膚の下に袋状の組織ができ、そこに皮脂や角質といった老廃物が溜まった良性の腫瘍です。化膿性汗腺炎と同様、症状が進行すると膿がでてくる場合もあります。
見分け方としては、 患部に小さな穴があいているかを確認することで見分けることができます。
毛嚢炎
毛根を包む毛穴の奥の部分が炎症し赤みを帯びたり、膿をもったりといった症状を発症します。化膿性汗腺炎と症状がよく似ていますが、 発生する場所と原因が異なります。
毛嚢炎は、首の後ろや太もも、陰部付近でできやすいです。原因としては、細菌性の炎症のため、皮膚を清潔に保つことで予防、対処に繋がります。
まとめ
化膿性汗腺炎の原因は正確には分かっていません。
化膿性汗腺炎の原因は正確には分かっていません。 しかし、考えられる可能性として、喫煙、肥満、遺伝、食事の4つの原因があります。 また、化膿性汗腺炎に似た病気もいくつかあり、はっきりと区別することは難しいため、症状に気づいた場合は、悪化し手遅れになる前に早めに病院で受診し、治療することをおすすめします。当院では、できものを専門に治療を行っております。各患者様一人ひとりにあった治療法を行っておりますので、少しでも症状が気になった場合は是非ご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。